子どものコミュニケーション

親子の対話を増やすには?子どもが話しやすい環境を作るために

「最近、子どもとの会話が少なくなっている」と子どもとのコミュニケーションが減ったことに悩む方も多くいらっしゃると思います。

子どもがその日の出来事や自分の思いについて話さない原因は複数考えられますが、一つは親の言動が挙げられます。

今回は、子どもが積極的に親に話さない原因や、その解決方法について解説します。

親と子どものコミュニケーションの重要性とは?

イギリスのバース大学のグレイ氏らの研究によると、親と子どもとのコミュニケーションの質が、子どもの幸福度に大きく影響するとされています。具体的には、以下のような影響があるとわかっています。

暖かくオープンな親子間のコミュニケーション

子どもが自分の気持ちを自由に表現できる、心理的安全性が確保された雰囲気の中での会話は、子どもの幸福度に良い影響を与えます。

敵対的なコミュニケーション

逆に、子どもをからかったり、攻撃的な言葉を使ったりするような会話は、子どもの幸せにマイナスの影響を及ぼします。

子どもの気持ちや行動を理解した上でのコミュニケーション

親が子どもの気持ちや行動を理解し、それに応じたコミュニケーションを取ることで、子どもは安心して自分を表現でき、親子関係がより良くなります。親が子どもの立場や考えを理解することが、スムーズな対話に繋がります。

親の性格が子どもとのコミュニケーションおよび幸福感に影響を与える

親の性格や態度が、子どもとのコミュニケーションの効果を左右します。例えば、親がポジティブで協力的な姿勢を持っていると、子どもの幸福感により良い影響を与えやすくなるとされています。

この研究は、子どもとのコミュニケーションの質が、ただ多く話すこと以上に重要であることを示しています。親として、子どもとどのように接するかが、子どもの心の健康と幸福に大きく関わってくるとされています。

参考:

Grey, E. B., Atkinson, L., Chater, A., Gahagan, A., Tran, A., & Gillison, F. B. A systematic review of the evidence on the effect of parental communication about health and health behaviours on children’s health and wellbeing.

なぜ子どもは親と会話をしないのか?

日々の忙しさのあまり、子どもとのコミュニケーションの質を見落としがちですが、親子間のコミュニケーションは子どもの健全な成長にとって非常に重要です。

以下では、西ティミショアラ大学教育学博士のパトリシア・ルシアナ・ランカン氏らの研究を参考にし、子どもが親と会話をしない原因について解説します。

言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーションの不一致

子どもに対して「大丈夫だよ」と言いながら、不満や心配そうな顔をすると、子どもは混乱してしまいます。

言葉と表情が一致していないため、子どもはどちらを信じればいいのか分かりません。そのため、言葉と同時に笑顔や穏やかな表情を心がけることが大切であるとされています。

子どもの話をよく聞いていない

子どもが学校での出来事を話しているとき、スマートフォンを見ながら「うん、うん」と返事をすることはありませんか。これは子どもにとって、自分の話が大切にされていないと感じさせる行為であると指摘しています。

スマートフォンを置いて、子どもの目を見て話を聞くことで、子どもは自分が大切にされていると感じ、もっと話をしたいという気持ちにさせることが期待できます。

子どもを傷つける、非難する言い方をしている

「どうしていつもこんなにミスをするの?」という言葉は、子どもを傷つけ、自尊心を低下させます。代わりに、「みんな間違えることがあるよ。次はどうすればいいか考えてみよう」と励ますと、子どもは自分のミスから学び、自信を持つことができます。

親にとって、子どもとのコミュニケーションには正解がなく、日々の試行錯誤しながら取り組むものですが、上記のようなポイントを意識して取り組むことで、子どもとの良好な関係を築くことが期待できます。

そもそも子供がおとなしい性格

おしゃべりな性格の親にとっては、子どもの静かな態度が不安に感じられるかもしれません。しかし、子どもの個性を理解し、それに合わせたコミュニケーションをとることが重要です。

例えば親が感じたことをはっきりと話すことができる性格でも、子どもはあまり話すことを好まない場合もあります。

子どもが口を開かないとき、無理に話をさせようとするのではなく、興味に合わせてビデオゲームをしたり、アニメを見たり、マンガを読んだりするなど、子どもとの共通点を見つけ、親子の絆を深めることが重要です。

また、おとなしい子どもが会話に応じる機会を見つけることも重要です。『How to Talk So Kids Will Listen & Listen So Kids Will Talk』の共著者、アデル・フェイバー氏によると、特に男の子は面と向かって座るよりも、横に座っている時の方が心を開きやすいそうです。例えば、車に乗っているときや、テーブルで一緒にご飯を食べるときなど、隣に寄り添って子どもの話に耳を傾けるべきでしょう。

参考:
Runcan, P. L., & Constantineanu, C. (2012). The role of communication in the parent-child interaction. Procedia – Social and Behavioral Sciences, 46, 904-908.

Parents “Getting Your Kid To Open Up and Talk to You”

子どもが親に話をしてくれるようになるためには?

子どもが親にその日の出来事などを話してくれるようになるためには、親子間のコミュニケーションの質を高めることが重要です。先ほど紹介した、西ティミショアラ大学のパトリシア・ルシアナ・ランカン氏らの研究をもとに、以下にその方法を具体的にご紹介します。

説教せずに話す

説教するような口調ではなく、子どもとの対話を重視しましょう。子どもがただ情報を受け取るだけではなく、会話にしっかりと参加していると感じられるようにすることが重要です。

例えば、子どもが何か間違えた時、ただ「これは間違いだよ」と伝えるだけではなく、「どうすればもっとうまくいったと思う?」と聞いてみましょう。

そうすることで、子ども自身が考える機会を持てるようになり、子どもの思考力を育てるのにも役立ちます。

子どもの言葉に注意深く耳を傾ける

子どもが話しているときは、十分な注意を払い、子どもの立場を理解しようとする姿勢を見せましょう。子どもが言ったことに対して、すぐに反応や判断をするのではなく、子どもの感情や考えを尊重しながら、会話することが重要です。

子どもが感情や気持ちを表現し、話すように促す

子どもが安心して自己表現できる環境を作りましょう。子どもの感情や考えを受け止め、あらゆる話題について話し合うことで、子どもは自分の考えや感情を自由に表現できると、安心を感じるようになります。

厳しい口調は避けつつ、必要な場面ではしっかり叱る

コミュニケーションのトーンは会話の内容と同じくらい重要です。穏やかで理解のある口調を心がけることで、子どもとのよりオープンな対話が生まれます。

ただし、時には厳しい口調で叱らなければならない場面もあります。危険な行動やルールを守らないときなど、はっきりとした態度を示すことが大切です。

親子間のコミュニケーションは、親の言動によって大きく影響を受けます。子どもが自分の気持ちを素直に話せる環境を整えることで、親子の信頼関係が深まり、子どもの心理的な成長にも良い影響を与えることができます。

まとめ

子どもが話さない原因はもちろん性格の部分もあるかもしれませんが、それ以外にも普段の子どもへの接し方によって、子どもが「お母さんと話さない方が楽だ」と思っているかもしれません。

子どもが安心して自分の意見を伝えられるように、今回紹介したポイントについて意識してみてください。

ABOUT ME
この記事の監修者 - 井上 顕滋
31年の経営者経験を持ち、主に教育系メディア事業、人材育成企業、子どもの非認知能力強化プログラム「Five Keys」を運営する財団法人、飲食事業などを経営。 人材育成のキャリアは社員教育からスタートし、成果を上げる中で多くの経営者から問い合わせが増加し、2004年に人材育成企業「リザルトデザイン」を設立。 クライアントの業績に大きく貢献する中で、社員の成果には個人差があることを痛感し、その原因を解明するため、世界的権威である研究者および実践者から最新の心理学と脳科学および「人の心に変化を生み出す最先端技術」を徹底的に学び、実践を重ねた結果、成果とモチベーションの向上を可能にするリザルトプログラムを開発。 また上記「成果の個人差」の真因と、満足度の高い充実した人生を送れるかどうかの鍵が、幼少期(12歳まで)の「親の関わり方」と「与える教育」にあることを発見し、親への教育講座を開催。
子育てのとびら編集部
明日から実践できる子育てに役立つ情報を発信していまいります。