集団行動は子どもが今後社会に出る上でも重要なスキルですが、集団行動が苦手な子どもも少なくありません。今回の記事では、集団行動が苦手な子どもたちが抱える問題の原因と、それを解決するための親のアプローチについて解説します。
子どもが集団行動を苦手と感じる理由とは

集団行動が苦手なのは、単に協調性がないからだと思われがちですが、実際には複数の要因が絡み合っている可能性があり、一概に協調性だけの問題と断定することはできません。以下では、考えられる可能性について説明します。
言語能力や自己表現能力が発達段階にあるため
トロントの児童発達研究所の臨床心理学者、アシュリー・モーガン氏によれば、子どもたちが集団行動を苦手とする理由の一つに、言語能力や自己表現能力が発達段階にあり、これが集団行動に影響を与えている可能性があることを指摘しています。
この場合は、成長するにつれて、徐々に集団に慣れていくため、子どもの様子を見ながらサポートすることが重要です。
参考:
Today’s Parent “What to do when your kid won’t participate in group activities”
大人数や新しいことへの挑戦に警戒心をいだいている
ノースカロライナ州セントジョーンズの心理学者ローナ・バーント・ピアシーによれば、未就学児の多くは、大人数や新しいことに挑戦することに警戒心を抱く傾向があるとされています。
しかしながら、子どもが成長するにつれて、家族だけではなく、学校の友達やスポーツクラブのチームメイトなど、所属するコミュニティは徐々に広がっていき、徐々に人に対する恐怖心が軽減するとされています。
もちろん、知らない人と仲良くなる前は、誰でも不安を抱くものです。「新しい友達とうまくやれるかな」と不安に感じながらも、その環境下で生活していくことで「新しい友達となんとか仲良くなった」という成功体験を積み重ね、徐々にそうした不安を払拭していくと考えられます。
参考:
Today’s Parent “How to help kids who won’t join in”
他人への評価を気にしすぎている、または他人からの評価が低いと感じている
他人への評価を気にしすぎている、または他人からの評価が低いと感じていることも、子どもたちが集団に参加しようとしない一つの要因として考えられます。
また、これに加えて、集団を避けているとそれが癖となり、余計に集団からの評価を恐れるようになる可能性も示唆されています。
参考:
自己効力感が低いことにより、悪循環が起きているため
上記のような周りからの評価に対する不安の原因の一つに、自己効力感が深く関連していると考えられています。
自己効力感というのは、自分が何かを始める際にうまくできると信じる力(自信)のことです。
この自己効力感が低いと、人は緊張や不安を感じやすく、特に人前で話すのが怖くなることもあります。逆に自己効力感が高まると、自分に自信を持つことができ、不安を感じず、人と話すことができるようになります。
参考:
上記で、集団行動が苦手になる要因を挙げてきましたが、そもそも子どもは集団行動が苦手なのかを考えることも重要です。中には、集団に苦手意識があるわけではなく、単に1人で遊ぶことが好きな子どももいます。その可能性も踏まえた上で、まずは親がしっかりと子どもの様子を観察することが大切です。
子どもが集団行動に慣れるために親としてできることとは?

「みんなと遊びたいけど勇気が出ない」と感じる子どもの多くは、「恥ずかしさ」や「恐怖心」を抱いていると考えられます。
以下では、そのような子どもたちが、集団行動に慣れるために、親ができることを解説していきます。
子どもが集団に参加したがらない原因をまずは明確にする
子どもが集団行動に参加したがらない原因は様々です。先述したように人前で緊張してしまう、自信がない、または人に興味がないなど、理由を明確にすることが重要です。
子どもに友達と遊ぶ機会を作る
友達と遊ぶ機会をつくることは、子どもの社会性を磨く上で非常に効果的です。子どもが友達と良い関係を築き、集団にも馴染めるように様々な方法でサポートすることが大切です。
例えば、子どもが学校や近所で気になる友達がいれば、遊びの約束をするようにサポートしてみてください。
最初は公園で短時間遊ぶといった簡単なものから始めると良いでしょう。また、友達と遊ぶ中で、葛藤やトラブルも発生するでしょう。そのようなときには、解決の糸口を子ども自身で見つけられるようサポートしてください。
親が積極的に遊びの場を提供し、その中で起きる葛藤も含めてサポートをすることで、子どもは他者と一緒に行動するスキルを高めることが期待できます。
地域のイベントに参加する
地域の祭りやイベントなどに参加することで、子どもは新しい友達を作ったり、違う世代の知らない人と話す機会を得られます。
普段学校などで関わらない近隣住民との交流を通じて、知らない人にも徐々に慣れていくことで、人に対して恐怖心を感じず、過ごせるようになることが期待できます。
親が子どもに介入しすぎない
子どもの代わりに親が問題を解決するなど、過度に介入すると、それが逆効果になる可能性があります。
子どもが自分で問題を解決する能力を育むためにも、親は適度な距離を保つ必要があります。その一方で、必要なときには適切なアドバイスやサポートを提供することも重要です。
参考:
まとめ
集団行動は、社会に出るために必ずしも必要というわけではありませんが、「集団行動ができない」という状態と「集団行動は好きじゃない」という状態は違います。
「できない」状態は子ども本人が将来困る可能性が高まってしまうので対策をしてあげておいた方が無難です。
その上で、親の役割は子どもの感情を理解し、親身になって寄り添い、サポートすることであり、そうすることで、子どもは集団行動での自信とスキルを育むことができるでしょう。