子どもの成長を見守る中で「協調性」は一つの大切なキーワードです。協調性とは、他人同士が協力し合い目標に向かう力や態度のことであり、子どもの人生においても非常に重要なスキルです。この記事では、協調性が子どもの学校の成績、人間関係、さらには将来のキャリアにどう影響するのか、子どもの協調性を育むために、親ができることは何かを解説します。
子どもにとって協調性はなぜ重要か?
協調性は子どもの人生において非常に大きな影響を与えます。経団連の調査によると、新卒社員の選考にあたって特に重視した点において、3番目に「協調性」が挙げられています。
社会に出ると、1人でできる仕事はほとんどなく、多くの仕事がチームで行われます。さらに、一緒に働く人たちが、自分とは違った考え方や価値観を持っているというのもよくあることです。
子どもが小さい頃から協調性を学ぶことで、将来、多人数での仕事でも、自分の意見を主張するだけでなく、周りの意見も受け入れながら柔軟に対応できるようになります。
また、仕事で大きな目標を達成するためには、メンバーの協調性が大きく影響します。一人一人が優秀でも、チームとして協調性がなければ、大きな成果を作ることは難しいでしょう。子どもが協調性を身につけることで、将来的にはチーム内でのコミュニケーションがスムーズになり、大きな目標達成にも貢献できるようになるでしょう。
このように、採用活動を行う企業の多くが、選考で新卒社員の協調性を厳しくチェックしているのは、協調性がチームでの働きやすさやプロジェクトの成功に直接的な影響を与えるためです。子どもが将来、社会で活躍できるようになるためにも、子どものうちから協調性を育むトレーニングをしておくことがとても重要になります。
参考:
一般社団法人 日本経済団体連合会「採用と大学改革への期待に関するアンケート結果」
協調性が子どもの生活に与えるポジティブな影響
協調性は学習や人間関係、さらには家庭や学校での居心地にもポジティブな影響を与えます。以下では、具体的な例を交えてさらに詳しく解説します。
学びの機会を増やし、良好な人間関係の構築にもプラスの効果をもたらす
ローマ大学の研究によれば、協調性、助け合い、分かち合い、共感などが、学習面や人間関係の構築においても、プラスの効果をもたらすとされています。
普段から互いに協力関係にある友人を持っていることで、例えば、勉強に困っているときにでも、どのように解くべきかを教え合うことができます。
私たちの学生時代を思い返すと、テスト期間中に友達から勉強を教えてもらったり、時に教えたこともあったのではないでしょうか。勉強もまた一人で学習するよりも集団で助け合いながら勉強する方が効率的なこともあるため、学習面においてもプラスの影響があると考えられます。
逆に、目の前で困っている子がいても、放っておいたり、冷たい態度をとったりすることで、学びの機会を失う上に、友達と仲良くなる機会も失ってしまいます。
友達から受け入れられるようになり、社会性も身につく
学校でも、協調性がある子どもはクラスメートや先生との良好な関係を築きやすく、その結果、子ども自身が学校生活をより楽しく、有意義に感じることができます。さらに、協調性があると、友達と深い友人関係を築くこともできます。
読者の皆様の周りにいる仲の良い友人の中には、困った時に協力してもらったり、普段何気ない気遣いがある方が多いのではないでしょうか。協調性がある人は周りからも受け入れられやすく、結果として充実した人生を送れるようになります。
参考:
子どもの協調性が低い原因は?
「友達と一緒におもちゃを使うことができない」「順番を守らない」「いつも1人で遊んでいる気がする」など、自分の子どもは協調性がないのではと悩んでいる方も多くいらっしゃいます。以下では、子どもの協調性が低い原因を解説します。
発達段階である可能性がある
心理学者のピアジェの研究によると、子どもが2歳から7歳の間には、認知(考える力)の発達がまだ進んでいないことが多いとされています。この時期は「前操作期」と呼ばれ、子どもは主に自分自身の視点からしか物事を考えられない傾向があります。
例えば、公園の砂場で楽しく遊んでいると、友達が滑り台で遊びたいと言ったとします。この時、前操作期である多くの子どもたちは、「自分は砂場遊びが楽しいと感じるから、あなたも楽しいはずでしょ。」と一点張りになって、友達の意見を聞くことはありません。
つまり、自分が見たことや感じたことだけが大事で、他の人がどう思っているのか、どう感じているのかを考えることが難しい時期です。それゆえ、この年齢の子どもは協調性が低いと感じられることがよくあるのです。
だからといって、その子が「わがまま」なわけではありません。年齢とともに、他人の気持ちを理解する力や協調性は自然と高まっていくので、成長を見守っていくことも大切になります。
親が権威的な態度をとっている
「親の言うことが絶対」というような権威的な態度の育児スタイルの場合、子どもは自分の意見や感情を汲み取ってもらう経験が少なくなるため、協調性も育まれにくくなってしまいます。
例えば、親が子どもに対して「今すぐこのお手伝いをやって」」と問答無用で、親の意見や決定を一方的に押し付けようとすると、子どもはそのような行動が「普通」または「正しい」と認識する可能性があります。
そのような親からは、「親の意見や選択が最も重要であり、それが常に尊重されるべきだ」という考え方になってしまうことがよくあります。さらに子どもの時の対象は「親」でも大人になって「立場が上の人」というふうに拡大解釈してしまい、過剰に服従的になるというケースもあります。
また逆に、自分の意見を優先する支配的な親の姿を真似るようになり、自分より立場が下の人や子どもに対して同じような関わりをすることもよくあります。
いずれにせよ、親の意見を子どもに一方的に押し付けてしまうと、子どもにとって悪い影響をもたらす可能性が高まります。
一方で、親が子どもの感情や考えに耳を傾け、一緒に何かを決めるような環境作りを心がければ、子どもは、他人の意見も尊重する協調性が自然と身につくことが多いとされています。親が子どもの意見や感情を大切にすることで、子ども自身も他人の意見や感情を尊重するようになり、協調性が高まります。
参考:
子どもの協調性を育むために親ができること
日々の習慣を意識的に変えていくことで、子どもの協調性を伸ばすことができます。以下では、毎日そばで子どものことを見守っている親だからこそできる、協調性を育む方法をご紹介します。
家族で助け合う雰囲気を作る
子どもはどのように行動するべきかについては親から学ぶものです。まずは家庭内で親が協調性のある行動をとっているかについて考えてみましょう。
親が親の友人などの他人とどのように交流し、問題が起きたときに友人とどのように対処するかを、子どもに見せることで、子どもたちも友人との関わり方や問題を解決する方法を学びます。
親自身が友達との関わり方を見せて子どものお手本となる
親が友達と楽しく過ごしている様子を子どもが見ると、子どもは「お父さんやお母さんが友達とどうやっていい関係を築いているのか」を学びます。例えば、親が友達に協力する、約束を守る、感謝をしっかりと伝える、謝るといった行動を見せると、子どもはそれを真似しようとします。
さらに、親が友達と問題が起きたときに、冷静に話し合って解決する様子を見せると、子どもは「問題が起きたときは、こんな風に話し合って解決するんだ」と学び、社会性を身に付けていきます。
このように、親が友達とどう接するかを子どもに見せることで、子どもは人とどうやってうまくやっていくかを学ぶため、親自身も良好な友人関係を築いておくことが大切になります。
親自身も、学校の行事や地域のイベントに積極的に参加する
親が学校の行事や地域のイベントにに参加すると、子どもはその姿を見て「お父さんやお母さんも家庭の外でもいろんなところで協力しているんだ」と感じます。子どもにとってはそれがお手本となり、子どもも家庭の外でも積極的に協力するようになると考えられます。
参考:
まとめ
協調性は子どもから大人まで、生涯にわたって重要なスキルです。特に現代社会では、個々の力だけでなく、チームでの協力がますます求められているため、子どものうちから協調性を育んでおくことがとても大切です。「我が子は協調性がない気がする・・・」と不安になることもあるかもしれませんが、子どもたちはまだ発達段階の途中です。親がしっかりと手本となり、子どもが協力する大切さを知るきっかけを作ってあげることで、子どもはこれから自然と協調性を身に付けていきますよ。