子どもの目標達成スキル

子どものコミュニケーション能力を鍛える方法とは?

「うちの子どもは引っ込み思案で友達とも積極的に話さない」と子どものコミュニケーション能力に悩む方は多くいらっしゃいます。

「特にコミュニケーション能力がなくても大丈夫かな?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、コミュニケーション能力は人生という長い目で見ても非常に重要なスキルであるため、子どもの頃から訓練することが重要になります。

今回は、子どものコミュニケーション能力が低いと感じる原因やそれらの改善方法について解説します。

コミュニケーション能力は「意思疎通能力」

コミュニケーション能力と聞くと、多くの方は「会話」をイメージするかもしれませんが、会話はConversationで、コミュニケーション能力を示すものではありません。コミュニケーション能力はいわゆる意思疎通能力であり、会話を含め、相手の意図や感情を読み取る力や、相手が話す内容を理解する理解力が含まれます。

この子どものコミュニケーション能力について、「人の話を聞かない」、「人見知りしてしまう」、「話すのが苦手」という悩みを抱える親御さんが多くいらっしゃいます。

コミュニケーション能力は子どもの人生を豊かにするスキル

コミュニケーション能力は長い人生を豊かにするスキルといっても過言ではありません。以下では、コミュニケーション能力が子どもの人生においてなぜ重要かについて解説します。

仕事において必要不可欠のスキル

まず、コミュニケーション能力は仕事において非常に重要なスキルです。実際に経団連の調査でも、企業が求めるスキルは長年「コミュニケーション能力」が上位に入っています。仕事面において、コミュニケーション能力を必要としない仕事はなく、いかなる仕事でも必ず他者とのコミュニケーションがあって初めて成立します。

長い人生で幸福をもたらす

ハーバード大学が85年もの歳月をかけて人間が幸福に生きる最も重要な要因は「良好な人間関係」と結論づけています。この良好な人間関係をつくっていく上でコミュニケーション能力が重要であることは言うまでもありません。

このように仕事においてコミュニケーション能力が必要なことはもちろんですが、さらに長い目で見ると、人生そのものを豊かにするスキルともいえます。

参考:

経団連「2018 年度 新卒採用に関するアンケート調査結果」

CNBC “An 85-year Harvard study found the No. 1 thing that makes us happy in life: It helps us ‘live longer’”

AIの発達によりコミュニケーションの重要性が高まっている

最近ではChatGPTなどのツールが出てきて、ビジネスにおいても非常に大きなインパクトをもたらしています。あらゆるスキルがAIに取って代わることが現実味を帯びてきた時代になりましたが、それでも他者と調整する仕事などは人間だけができることだと言われています。

最終的にはそういう仕事だけが残ると考えられているので、コミュニケーション能力があるかないかだけでも、格差がより生まれる時代になるのではないでしょうか。

つまり、コミュニケーション能力を子どもの頃から鍛えると、社会でより有利な立場になっていくと考えられます。

外遊びが年々減っていることによる子どものコミュニケーション能力への影響

一方で、現代はコミュニケーション能力が育ちにくい環境になっているといえます。その原因の一つに子どもが外遊びをしなくなったことが挙げられます。政府としてもこれは課題に感じており、子どもを健やかに育てるための遊びを推進しています。

コミュニケーション能力というのは、「伝える、聞く」という単純な話ではなく、相手がどう感じているか、何を考えているかを察知する能力もコミュニケーション能力です。例えば、「さっきA君に〇〇って言っちゃったけど、A君の表情が微妙に変わったな」と雰囲気も含めて感情の変化を察する能力もコミュニケーション能力といえます。

そのような察する能力は他人との摩擦によって初めて磨かれていくものです。人間関係における摩擦というものは、必ずしも悪いものではなく、摩擦のなかで意思疎通を図っていくことで、人の感情や雰囲気を感じることができるようになります。

それらを学ぶ機会が外遊びにたくさんありますが、先述したように今の子どもは外遊びをする時間が年々減ってきており、それにつれてコミュニケーションを学ぶ機会も少なくなりました。

しかし、それ以外にも以下のような多くの環境の変化が、子どものコミュニケーション能力に影響を与えていると考えられます。

  • 少子化により兄弟が少ない家庭が多くなっている
  • 核家族化により、祖父母と暮らす家庭が減っている
  • 共働き世帯が増えて家族と過ごす時間が減っている
  • 小学校のクラスの人数が減っている
  • 放課後は習い事に行かせる親が増えて友達同士遊ばなくなっている
  • 友達と遊ぶにしても、屋内でゲームすることが増えている

このように考えると、人間関係の摩擦を体験できる機会はかなり減ってきているのではないでしょうか。このような環境の変化から、コミュニケーションが苦手な子どもが増えてしまうことは仕方がないことですが、こういう時代だからこそ、意識的にコミュニケーション能力を鍛えていく必要があります。

参考:文部科学省「子どもの体力向上のための総合的な方策について(答申)」

子どものコミュニケーション能力が低い原因とは

コミュニケーション能力が低い原因は一概に言えず、複数考えられますが、よくある原因は以下の二つが挙げられます。

  • 人に対する不安感、恐怖心
  • 国語力の問題

それぞれについて解説します。

人に対する不安感、恐怖心

まず一つ目ですが、他人からどう思われているのかをすごく気にしてしまって、積極的に交流できない子どもが多くいます。

周りの目線を気にしてしまうのは、「自己肯定感が低いから?」と思うかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。友達から馬鹿にされた経験がトラウマになり、周りの目線を気にするようになった子どももいます。

こうしたトラウマは思春期になるとより強く影響しはじめるため、早い段階から解決した方がよいでしょう。例えば、何か新しいことに挑戦して失敗したことを笑われたり、誰かに悪口を言われるような体験をした場合、「挑戦する勇気の無い奴らの言うことなんて気にするな」「悪口を言うやつは人間として未熟なんだよ」と受け入れる必要のないネガティブな情報を跳ね除けるマインドを持たせることが重要です。

国語力の問題

上記のようなマインド面以外に、国語力もまたコミュニケーション能力に影響を与えます。例えば、読解力が低い、聞いた話を理解できない、また自分の考えをうまく伝えられないなどが挙げられます。

子どものレベルでの「コミュニケーション能力が高い」は、誰にでも話しかけられるなどが挙げられますが、社会に出ると、より高度なコミュニケーション能力、例えば理解力や表現力も必要になります。

これらのスキルも社会人になるまでに伸ばしておくと有利だといえます。

子どものコミュニケーション能力を伸ばす方法

先述したように、外遊びなどを通じて子どもはコミュニケーション能力を獲得しますが、家庭でも実践できることはいくつかあります。

以下では、コミュニケーション能力を伸ばす方法について解説します。

子どもが知らない人と接したり、話しかけることが重要

子どもの頃から知らない人とたくさん接することが重要です。赤ちゃんのお子さんがいらっしゃる場合には、赤ちゃんの頃から知らない人に抱っこしてもらいましょう。お母さんと一緒にいて、たっぷり愛情を受け取ることは、赤ちゃんの愛着形成において非常に重要ですが、知らない人が優しい声で話しかけ、微笑みかけてくれることを経験させてあげることも、人見知りを未然に防ぐ上で重要です。

またそのほかにも、知らない人に話しかけるように促すことが効果的です。たとえば、誰かに道を聞いたり、レストランで「トイレはどこにあるか」を子どもに質問させてみましょう。

このように知らない人と接する中で、「意外と大丈夫だった」という経験が徐々に人に対する恐怖心を軽減していきます。このような経験がないまま成長すると、「人は何を考えているかわからないから怖い」というような恐怖心を持ったまま成長してしまいます。

挑戦や失敗を許容する

先述しましたが、子どもが友達と接する中で馬鹿にされて、それがトラウマになることもあるかと思います。そのトラウマを放置すると、子どもがその後、挑戦することを避けたり、積極的に人と関わることをしなくなるので、子どものうちからトラウマを払拭してあげましょう。

これには親のマインドも重要です。子どもの挑戦や失敗に対して親が肯定的な態度を示す必要があります。

子どもが失敗した時にも「失敗した人を笑う方がおかしいんだよ。失敗したのは勇気を出して挑戦した証拠だから素晴らしいことなんだよ」と勇気づけてあげることが重要です。

そうでもしないと、子どもはできることだけをやるようになったり、絶対に間違わないように行動するようになったりします。挑戦が求められる今の時代に、失敗を避ける性格になると大人になってから苦労する可能性があります。

挑戦と失敗はセットであるということを親も認識した上で、子どもをサポートしていきましょう。

国語力の低さは読み聞かせと音読で解決

一般的な話になりますが、国語力の低さはやはり読み聞かせが効果的です。子どもの頃から読み聞かせをしてもらった子どもは国語力が伸びやすい傾向にあります。

また本などを音読させてみて、読み方や意味がわからなければ、それを調べる環境を整えてあげることも重要です。黙読となると、わからない単語があっても読み飛ばしてしまいます。音読しながら、わからないところがあれば止まって、調べて、理解する、この繰り返しによって徐々に言葉の意味を理解し、語彙力を高めることで読解力も上がっていきます。

読解力が上がるから、理解力が上がり、それが表現力につながっていきます。そのため、その土台となる読み聞かせや音読をいつも親御さんにはおすすめしています。

チームスポーツもコミュニケーション能力に良い影響がある

サッカーや野球、バスケ、バレーボールなど、複数のメンバーでプレイするチームスポーツはコミュニケーション能力によい影響を与えます。

チームで一つの目標に進む中で、人間関係の摩擦は必ず起きます。時にぶつかり合ったり、励ましあったりして、その過程で、コミュニケーション能力が磨かれていきます。

もし、子どものコミュニケーション能力を習い事を通じて高めていきたいと考えていらっしゃる方は、こうしたチームスポーツもはじめてみてはいかがでしょうか。

まとめ

コミュニケーション能力は社会に出る上でも非常に重要なスキルであるものの、そのスキルが自然に育ちにくい環境になってきている現代において、意図的にコミュニケーション能力を育てることが重要です。

今回紹介した方法などを参考にしながら、子どもと一緒に実践してみてください。コミュニケーション能力を伸ばすことで、子どもの人生がより豊かになることが期待できます。

ABOUT ME
この記事の監修者 - 井上 顕滋
31年の経営者経験を持ち、主に教育系メディア事業、人材育成企業、子どもの非認知能力強化プログラム「Five Keys」を運営する財団法人、飲食事業などを経営。 人材育成のキャリアは社員教育からスタートし、成果を上げる中で多くの経営者から問い合わせが増加し、2004年に人材育成企業「リザルトデザイン」を設立。 クライアントの業績に大きく貢献する中で、社員の成果には個人差があることを痛感し、その原因を解明するため、世界的権威である研究者および実践者から最新の心理学と脳科学および「人の心に変化を生み出す最先端技術」を徹底的に学び、実践を重ねた結果、成果とモチベーションの向上を可能にするリザルトプログラムを開発。 また上記「成果の個人差」の真因と、満足度の高い充実した人生を送れるかどうかの鍵が、幼少期(12歳まで)の「親の関わり方」と「与える教育」にあることを発見し、親への教育講座を開催。
子育てのとびら編集部
明日から実践できる子育てに役立つ情報を発信していまいります。