子どもに対して、「習い事でも勉強でも、とにかくやる気を出さない」、「継続力がなく、何事もやってはやめての繰り返し」、「ずっとゴロゴロしたりゲームをしたりで、もっと他の活動にも打ち込んで欲しい」などと悩む方も多いのではないでしょうか。本記事では、子どもがやる気を出さない原因は何なのか、そして子どもをやる気にさせるにはどうしたらいいのかについて詳しく解説していきます。
社会に出ると主体的かつ意欲的に取り組むことが求められている
自らやる気を起こして、物事に積極的に取り組んでいく主体性は、変化の著しい現代社会において非常に重要です。経団連が実施した調査でも、8割以上の企業が新卒社員に「主体性」を求めていることがわかっており、他人からやる気を促されるよりも、自らモチベーションを高めて活動できる人材が、企業では求められているといえます。
社会に出たとして、先輩社員が後輩社員のことを一から十まで手厚くフォローするのは、現実的に難しいことが多いです。また、仕事の進め方ややることが明確に決まっていないということもしばしばです。そんな状況のもとでも、主体性を持って行動できる人は、その場の状況を的確に判断し、適切な行動を取ることができると考えられます。
参考:経団連「採用と大学改革への期待に関するアンケート結果」
あらゆる物事に対してやる気のない子どもの特徴
一言に“やる気がない”と言っても、その特徴は子どもによってさまざまです。親としては、この一人一人違う特徴をしっかりと理解することが、適切なサポートの第一歩となります。以下では、やる気のない子どもの特徴としてよく見られる代表的な例を3つご紹介します。
興味のないことは頑張れない
やる気のない子どもたちに親や先生がいくら声をかけたとしても、興味のあることでないと、モチベーションが上がらず頑張ることができません。例えば、「体育の授業は好きだから熱心に取り組めるけど、算数は嫌いだから授業が憂鬱で集中できない」など、私たちが子どもの頃にも似たような経験があるはずです。
とにかく諦めが早い
やる気のない子どもは、行動する過程で困難やわからないことなどが立ちはだかった途端、すぐに諦めてしまうことが多い傾向にあります。例えば、算数の宿題を始めたとしても、やる気のない子どもはすぐに「わからない」と言って、勉強するのをやめてしまいます。
やる気を出したとしても、短期的で長続きしない
やる気のない子どもの場合、やる気を出したとしても一時的なものであり、長続きしないことが多いです。例えば、ピアノを習っている友達を見て、「私もやりたい!」とピアノを習い始めたにも関わらず、数回通ったところで興味がなくなってしまい、練習しなくなってしまうことがあります。
子どもがやる気を出さない原因とは?
子どもがやる気を出さないのはなぜでしょうか。その理由をなかなか見つけられず悩んでいる方も多いと思います。実際、子どもがやる気を出さない原因は、家庭内の環境や外部の環境など、さまざま要因から影響を受けるため、一概に特定できるものではありません。今回はよくある原因に絞って、3つご紹介します。
そもそも子どもがやりたいことではないため
子どもがやる気を出さない原因の一つとして、それが子ども自身が選んだものでない、つまり「やりたくないことをやらせている」場合が考えられます。
自己決定理論によれば、人が何かにやる気を出すためには、その行動が自分自身で選んだものであることが重要です。この理論は「自分でどれだけ物事を決定したのか」が、その後の動機づけに影響すると説明しています。そのため、例えば、親が子どもを思ってさせていることでも、子どもが自分の意思で選択したことでない場合は、やる気の継続が難しい可能性が高くなります。
目標が不明確であったり、目標設定を誤っているため
目標がはっきりしていないと、子どもは、どの方向に向かって努力するべきかなど、達成までに必要な道筋を考えられず、やる気が出せない原因の一つとなってしまいます。また、高すぎる目標・低すぎる目標設定についても、子どものやる気を削ぎかねないため注意が必要です。適切なゴール設定については後に解説します。
「自分にはできない」と思い込んでいるため
子どもがやる気を出さない場合、自己効力感の低さが関係している場合があります。オーストラリアのディーキン大学心理学部の研究によると、自己効力感が高い人は、自分が目標を達成できるという信念を持っており、そのために必要な努力を惜しまない傾向があります。一方、自己効力感が低い人は、目標達成に対する信念が弱く、物事へ取り組む意欲も低下する傾向があるといわれています。
子どもがあらゆる活動にやる気を持って取り組むために、親としてできることとは?
子どもにやる気を出させるのは一つの課題ですが、そのやる気を継続させるとなると、さらに手強いと感じる方も多いでしょう。そもそもやる気がない子どもに、「ちゃんとやりなさい!」「やるって約束したでしょ!」などと言ってプレッシャーをかけると、さらに子どものやる気を削いでしまいます。
以下では、子どもが、モチベーションを維持しながら物事に取り組めるようになるために、親としてできるサポートを解説します。
親が活動などを押し付けず、子どもが主体的にやりたいことを選ぶのが重要
子どものやる気を引き出すために、親はやってほしいことを押し付けるのではなく、子どもが何に興味を持っているのかを知り、それに合わせてサポートすることが必要です。例えば、子どもが最近、学校で飼っているウサギに興味を持っているなと感じたら、動物園に連れて行ってあげたり、動物図鑑を買ってあげたりするのも良いかもしれません。子どもの興味を理解し、そこへアプローチしてみることが大切です。
また、親が子どもに選択肢を提供し、自分で決める機会を与えることで、子どもは自分で決めたことに責任を持ち、最後までやり遂げたり、最終的に得た結果に対して自信を持つことができると考えられます。例えば、宿題をする場合にも、「ゲームは宿題をしてからにしなさい!」と、親が勉強時間を指定するのではなく、子ども自身に勉強やゲームのタイムスケジュールを決めてもらうようにすると良いでしょう。
参考:子どもが集中しない原因を自己決定理論に基づいて解説。子どもの集中力を向上させる解決策も紹介
適切なゴール設定をすること
子どもと一緒に目標を設定する際は、例えば「◯時までに宿題を終わらせる」「来月の算数のテストは80点以上をとる」のように、達成したい目標を具体的な数値や明確な期間にして分かりやすく伝えるようにして下さい。目標を明確に把握できると、どのように頑張れば良いかが分かるので、子どもはモチベーションを維持しやすくなります。
また、高すぎる目標・低すぎる目標にならないよう、子どもの能力に適した難易度を見極めてアドバイスしてあげましょう。本人の頑張り次第で達成できる目標を定めることで、子どもたちはモチベーションを維持しながら、少しずつレベルアップしていくことができると考えられます。昨日よりひとつでもできるようになればOKというような目標を設定してあげられると、諦めずにチャレンジし続ける姿勢を身につけられるのでおすすめです。
参考:子どもの目標を設定する5つのポイント|子どもが自発的に取り組むためのポイントとは?
子どもに成功体験を積ませて、自己効力感を高める
自己効力感が低い子どもは、やる気が低下しやすい傾向にあります。世界で最も引用されている研究者の一人アルバート・バンデューラ教授の研究によると、「自分にはできない」と思い込んでいる子どもの自己効力感を高め、物事へのやる気を引き起こすためには、以下の4つのアプローチが必要とされています。
成功体験を積ませる
親は、子ども自身が目標を達成したり、小さな困難を乗り越えたりする経験を積む機会を作ってあげましょう。ただ単に成功体験を積むだけではなく、「困難に立ち向かい、乗り越える体験」がとても重要です。
お手本を見つけさせる
子どもがお手本にできるような、尊敬する人や成功している人を見つける手助けをしてあげましょう。なるべく、身近で共感しやすい人をお手本することで、その人が何かで上手く
いっている様子を見た時、「自分もやってみよう」「自分にもできるはず」と前向きな感情を持つことができるようになります。
励ましとサポートを与える
子どもにとって、親や信頼する人からの励ましは大きな力になります。特に、困難な状況にあるときや新しい挑戦をしているときに、「君ならできる」という言葉や、その努力を肯定するようなサポートが大切です。
メンタルと体調をケアする
気分がすぐれない状態が続くと、目標をすぐに諦めたり、新たな目標を設定することに対して消極的になる傾向があります。そのため、親も子どものメンタルや体調についてケアすると同時に、子どもも疲れたら休むなど、自分でケアできるようにサポートしてあげましょう。
参考:子どもが勉強しない原因は「自己効力感の低さ」勉強へのやる気を高める解決策も紹介
まとめ
子どもが親の期待に応えられない瞬間は多々ありますが、そのような時こそ親としての理解と対応が求められます。子ども一人ひとりが持つ独自の個性と性格を尊重し、その上でやる気を高める最良の手法を探ることが重要です。自分の考えや願望を子どもに強制するのではなく、子どもが自ら積極的に行動できる環境を作るように心掛けましょう。このようなアプローチにより、子どもは自己理解が深まり、独立した思考と行動の力を培うことができるようになっていくと考えられます。