子どもの自己肯定感

子どもが嘘をつく心理とは?その対処法についても解説

子どもを持つ親の中には、「子どもが頻繁に嘘をつくので困っている」「このまま嘘をつく人に育ってしまったらどうしよう」と悩む方は少なくありません。

しかし、親として重要なのは、なぜ子どもが嘘をつくのかを理解し、正直さを育むサポートをすることです。この記事では、子どもが嘘をつく理由とその心理的背景、また、嘘をつく子どもに対して親がどうサポートすればよいかを解説します。

子どもが嘘をつく理由とは?

頻繁に嘘をつく子どもに対して、「なぜ嘘をつくんだろう」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか?

自分を守りたい、気を引きたい、期待に応えたいなど、子どもが嘘をつく理由には様々な背景があります。以下では、主な理由とその詳細を解説します。

大人に叱られるのを避けようとしている

子どもは、親や学校の先生から叱られるのを避けようとして嘘をつくことがあります。例えば、宿題を忘れたとき、先生に叱られるのが怖くて、「ちゃんとやったけど、宿題のプリントを無くしてしまった」と嘘をついたとします。

この場合、子どもは正直に「宿題を忘れた」と話すことで叱られることと、嘘をついてその場をしのぐことを比較し判断しています。

特に、先生から厳しい対応をされると予測すると、子どもは嘘をついてしまうことが多くなると考えられます。

友達など周囲の注意を引きたい

子どもは「注目を集めたい」という欲求から嘘をつくことがあります。例えば、「自分は有名人の〇〇に会ったことがある」など、実際には起こっていない興味深い出来事について話すことで、友達など周囲の人の注意を引こうとするのです。

これは、子どもが自分を特別な存在として認識してほしい、または単に周囲との関わりを求めていることによって、そのような行動をとる傾向があるとされています。

自尊心を守りたい、期待に応えたい

子どもは自分の自尊心を守るため、または他人(特に親や学校の先生など)の期待に応えるために嘘をつくことがあります。例えば、自分の成果を誇張したり、実際には受賞していないのに、受賞したと偽ることで、自分をより良く見せようとします。この行動は、「自分をもっと良く見せたい」、または「周りからもっと褒められたい」という欲求から生じます。

ストレスや不安、恐れの感情を抱えている

子どもたちは、ストレスや不安、恐れといった感情が強い時に、嘘をつくことがあります。例えば、テストで悪い点数を取ってしまい、親にがっかりされるのが怖くて、本当の点数を言わずに嘘をつくことがあります。また、友達にからかわれたり、いじめられたりした時、本当は傷ついて居ても、自分の本当の気持ちを隠して、「大丈夫だよ」と嘘をつくこともあります。このような嘘は、子どもが内心で感じているストレスや不安などを表しています。

参考:

Talwar V, Murphy SM, Lee K. White lie-telling in children for politeness purposes. International Journal of Behavioral Development. Published online January 2007:1-11. doi:10.1177/0165025406073530

Talwar V, Lee K, Bala N, Lindsay RCL. Children’s conceptual knowledge of lying and its relation to their actual behaviors: Implications for court competence examinations. Law and Human Behavior. Published online 2002:395-415. doi:10.1023/a:1016379104959

Talwar V, Arruda C, Yachison S. The effects of punishment and appeals for honesty on children’s truth-telling behavior. Journal of Experimental Child Psychology. Published online February 2015:209-217. doi:10.1016/j.jecp.2014.09.011  

子どもはどのような環境下で嘘をついてしまうのか?

「嘘をつくのはいけないことだ」と子どもにいくら教えても治らない。そのように悩む方は、家庭や身近な環境に改善ポイントがあるかもしれません。以下では、子どもが嘘をつく傾向がある環境の特徴を詳しく解説します。

厳しいルールがある環境

厳しいルールがある家庭や学校では、子どもたちは間違いを犯すことがとても怖いと感じるようになり、結果、自分を守るために嘘をついてしまうようになる傾向があります。

例えば、宿題を忘れたり、部屋の片付けを怠ったりしたときに、大人から厳しい叱責を受けることがあると、子どもは失敗を認めるよりも、それを隠そうとします。

このような状況では、「宿題をしたけど、家に忘れた」「部屋は片付けたけど、また散らかった」といったような嘘をついて、厳しい反応を避けようとするようになってしまいます。

高い目標や基準が設定された環境

目標や基準が高く、親や先生からの非現実的な要求や期待がある環境では、子どもが嘘をつくことがあります。例えば、親が「テストでいつも満点を取るべき」と期待している場合、子どもはその期待に応えられないと感じたとき、実際の点数よりも高い点数を伝えることがあります。

また、周りからの要求や圧力によって、スポーツや趣味において「常にトップでなければならない」というプレッシャーを感じた場合、子どもは実際の成績や進歩をより良く見せるために、成果を誇張することがあります。

例えば、親や先生がいつも「もっと頑張らないと」と過度にプレッシャーをかけすぎると、子どもは自分ができないことを隠して、「宿題は全部終わった」「練習はうまくいったよ」などといった嘘をつくようになってしまう恐れがあります。

このように、達成困難な高い目標や基準が設定された環境の下では、子どもは自分の能力や成果を過大に表現し、そのギャップを埋めるために嘘をつくようになってしまう可能性が高くなります。

感情的なサポートが足りなかったり、信頼関係がない環境 

感情的なサポートが足りない、または信頼関係が築かれていない家庭や学校では、子どもは自分の本当の気持ちや経験を話すのを躊躇することがあります。

例えば、子どもが悩みを打ち明けたときに、親や先生が怒るか無視をすると、子どもは次からは本当のことを話さなくなるかもしれません。このような環境では、子どもは自分の本当の気持ちを隠して、嘘をつくことを選びがちになります。

参考:

Talwar V, Lee K. A Punitive Environment Fosters Children’s Dishonesty: A Natural Experiment. Child Development. Published online October 24, 2011:1751-1758. doi:10.1111/j.1467-8624.2011.01663.x

Talwar V, Lee K, Bala N, Lindsay RCL. Children’s conceptual knowledge of lying and its relation to their actual behaviors: Implications for court competence examinations. Law and Human Behavior. Published online 2002:395-415. doi:10.1023/a:1016379104959

Talwar V, Arruda C, Yachison S. The effects of punishment and appeals for honesty on children’s truth-telling behavior. Journal of Experimental Child Psychology. Published online February 2015:209-217. doi:10.1016/j.jecp.2014.09.011

Talwar V, Murphy SM, Lee K. White lie-telling in children for politeness purposes. International Journal of Behavioral Development. Published online January 2007:1-11. doi:10.1177/0165025406073530

子どもが嘘をつかずに正直に話すようになるために、親ができるサポートとは?

親として、子どもの正直さを育むためには、子どもの感情や考えを尊重することが不可欠です。以下では、具体的にどのようなサポートが重要かを解説します。

信頼と安全を感じられる環境を整える

子どもが自分の感情や考えを安心して表現できるような環境を作るためにも、子どもの感情を大切にすることが必要です。

例えば、子どもが学校で失敗してしまったことについて話したとき、親は厳しい態度を取るのではなく、「大丈夫、みんな失敗することはあるよ」と優しく話すことで、子どもは自分の気持ちを素直に話してもいいんだと感じるようになります。

また、子どもが何か間違いを犯したときは叱ることも大事ですが、叱るだけではなく「一緒に解決する方法を考えよう」と手を差し伸べてあげることで、子どもは自分がサポートされていると感じ、嘘をつく必要がないと理解します。

ただ叱るだけではなく、何を学んだのかも重視する

先述した通り、子どもが何か間違いを犯した時は、その間違いに対してただ怒るのではなく、その経験から何を学べるかを子どもと一緒に考えてあげることが重要です。

例えば、子どもが友達にひどいことを言って悲しませてしまった場合、親は「どうしてそんなこと言っちゃったの?」と優しく尋ね、一緒に「次は友達を悲しませないように優しい言葉を使おう」といった解決策を考えたとします。

これにより、子どもは失敗を認め、それから学び、成長することができます。

他にも、子どもが学校でのテストで悪い点数を取ったとき、親が「どうして点数が低かったのかな?」と一緒に考え、勉強方法を見直すことで、子どもは次回のテストに向けて努力する意欲を持つようになります。

このように、結果ではなく学びに重点を当て子どもとコミュニケーションをとるようにすれば、子ども自身も行動の結果を理解し、将来的により良い選択ができるように成長していくと考えられます。

子どもの言葉に耳を傾け、小さな成功や正直な行動を褒めるようにする

子どもが何かを話すとき、親は耳を傾けて丁寧に話を聞くようにしましょう。例えば、子どもが学校での出来事を話しているとき、親はスマホを見ながら、家事をしながら、テレビを見ながら、ではなく、「今日友達と遊んで楽しかった?お話もっと聞かせてよ」と興味を示しながら話を聞くようにして下さい。親がしっかり話を聞いてくれていることで、子どもは自分が大切にされていると感じます。

また、子どもが正直に行動したり、何かをやり遂げた時には、小さなことであったとしても「よくできたね!」「えらいね!」と褒めてあげるようにすることも大切です。子どもは正直であることや自分の行動が評価されると、尊重されると感じ、嘘をつく必要がないと理解するようになります。

親が一貫して正直である姿を子どもに見せる

生活の中で、親が正直であることの大切さを子どもに伝えることはとても重要です。例えば、仕事で帰りが遅くなるときに「今日は仕事が大変で帰りが遅くなるけど、早く帰れるよう頑張るから待っててね」と正直に伝えることで、子どもは日々の小さな場面で正直さの大切さを学びます。

また、親が約束を守る姿を見せることも大切です。例えば、「週末には一緒に公園に行こうね」と言ったら、本当にその約束を守ることで、子どもは言葉に責任を持つことの重要性を理解します。このように、親が日常生活で正直さを実践し、その行動を通じて子どもに正直さの重要性を示すことで、子どもは自然とその行動を見習い始めます。

さらに、家庭や学校で、大人が嘘をついているのを見ると、子どもも嘘をつくことが普通だと思うようになってしまいます。例えば、親が電話で「今忙しいから」と嘘をついているのを聞いた子どもは、自分も困ったときには嘘をついてもいいと考えるかもしれません。

このように、子どもは大人の行動を見て学び、嘘が許される行動だと思うようになると考えられます。

参考:

Heyman GD, Luu DH, Lee K. Parenting by lying. Journal of Moral Education. Published online August 11, 2009:353-369. doi:10.1080/03057240903101630

Hays C, Carver LJ. Follow the liar: the effects of adult lies on children’s honesty. Dev Sci. Published online March 17, 2014:977-983. doi:10.1111/desc.12171

まとめ

子どもが嘘をつく理由は多岐にわたりますが、それらは大抵、子どもが感じる恐怖、不安、期待、または注目を集めたいという欲求から生じます。親として重要なのは、子どもが嘘をつく必要がないような安心できる環境を作ることです。これには、子どもの話を真剣に聞き、感情を尊重すること、罰よりも学びを重視するアプローチを取ること、そして何よりも、親自身が正直さを実践し、その価値を子どもに示すことが重要になるでしょう。

ABOUT ME
この記事の監修者 - 井上 顕滋
31年の経営者経験を持ち、主に教育系メディア事業、人材育成企業、子どもの非認知能力強化プログラム「Five Keys」を運営する財団法人、飲食事業などを経営。 人材育成のキャリアは社員教育からスタートし、成果を上げる中で多くの経営者から問い合わせが増加し、2004年に人材育成企業「リザルトデザイン」を設立。 クライアントの業績に大きく貢献する中で、社員の成果には個人差があることを痛感し、その原因を解明するため、世界的権威である研究者および実践者から最新の心理学と脳科学および「人の心に変化を生み出す最先端技術」を徹底的に学び、実践を重ねた結果、成果とモチベーションの向上を可能にするリザルトプログラムを開発。 また上記「成果の個人差」の真因と、満足度の高い充実した人生を送れるかどうかの鍵が、幼少期(12歳まで)の「親の関わり方」と「与える教育」にあることを発見し、親への教育講座を開催。
子育てのとびら編集部
明日から実践できる子育てに役立つ情報を発信していまいります。