子どもたちが将来社会で活躍するためには、ストレスや不安に対応する能力を早い段階から身につけることが重要です。
しかし、なぜそれが必要なのでしょうか?また、そもそも子どもが情緒不安定になる原因とは何でしょうか?この記事では、これらの疑問について、海外の研究などを基に解説します。
子どもが情緒不安定になる原因とは?
ジョージ・メイソン大学、およびラ・トローブ大学の研究によると、子どもが情緒不安定になる原因としては、以下の3つが考えられます。
幼児期の感情を表現する練習が不足している
子どもが自分の感情を理解し、それを上手に表現することは、友だちとの関係や他人とのコミュニケーションにとても重要です。
しかし、幼少期にこのスキルを教えないと、子どもは自分の気持ちをうまく伝えることができなくなり、他人が何を感じているかを理解するのも難しくなります。これが、子どもが情緒不安定になる一つの原因といえます。
親との関係性や家庭環境が不安定
子どもが安心して成長するためには、安定した家庭環境と親とのしっかりした絆が大切です。子どもが不安定な環境で育った場合、子どもは自分の気持ちをコントロールするのが難しくなります。
また、親との関係が不安定だと、子どもは不安や恐怖を感じてしまうことがあります。これらもまた、子どもが情緒不安定になってしまう原因の一つです。
親が子どもの感情を正しく理解できていない
親が子どもの感情を理解し、適切に対応することは、子どもが自分の気持ちをうまく扱うためにとても重要です。
親が子どもの感情を無視したり、否定したりすると、子どもは自分の気持ちをコントロールするのが難しくなります。家庭内のストレスや感情の表現方法も、子どもが情緒不安定になる原因となりうるため、注意が必要です。
情緒不安定な子どもの特徴は?
子どもの情緒の安定性は、成長や日常生活に大きな影響を与えます。では、情緒が安定している子どもと不安定な子どもの特徴には何があるのでしょうか?
情緒が安定している子どもの特徴
情緒が安定している子どもは、自分の感情を理解し、適切に表現することができます。
彼らはストレスや困難な状況に直面したときでも、冷静さを保つことができます。また、他人の感情を理解し、適切に反応することができるため、友だちとの関係を良好に保つことができます。
さらに、感情が安定している子どもは、自分の感情をコントロールすることで、自分自身の行動を適切に調整することができます。
情緒が不安定な子どもの特徴
一方、情緒が不安定な子どもの特徴の一つに、ストレスにうまく対応できないことがあります。
カリフォルニア大学デービス校の心理学部のRoss A. Thompsonの研究によると、感情のコントロールがうまくいかないと、日常生活のストレスに対する反応が過度になる傾向があると言われています。
例えば、学校でのテストに対してプレッシャーを感じ、適切に感情をコントロールできない子どもは、過度に心配したり、パニックになったりする傾向があります。これは、学習の効率を低下させ、日常生活の質を損なう可能性があります。
さらに、感情のコントロールがうまくいかないと、他人との関係に問題が生じる可能性があります。
例えば、友人や家族との対立が生じたとき、怒りや悲しみを適切にコントロールできず、対立を悪化させる可能性があります。これは、友人や家族との関係を損ない、孤立感を引き起こす原因となってしまうため、注意が必要です。
以上のように、子どもの情緒の安定性は、その成長、学習効率、人間関係に大きな影響を与えます。だからこそ、子どもの感情の安定性を育てることは、その成長と幸せな生活にとって重要なのです。
子どもの情緒不安定な状態を改善するにはどうする?
オーストラリアのラ・トローブ大学の研究によると、子どもの情緒不安定な状態を改善するためには、日常生活の中で以下を心掛けることが大切になります。
親自身が感情をうまくコントロールし、子どもの見本となる
親が自分の感情をうまくコントロールすると、子どももそれを見て学び、自分の感情をうまくコントロールする方法を身につけます。また、親が自分の感情をうまくコントロールすることで、子どものストレスも軽減されます。
例えば、親が子どもの行動に対して怒りを感じたとしても、物理的な暴力や叫び声で対応するのではなく、冷静に話し合いや解決策を模索する姿勢を示すように心がけましょう。
また、悲しみなどの負の感情も同様です。例えば、親が人間関係の問題や人生の困難に直面した際には、感情を抑え込むのではなく、適切な方法でそれらの感情を表現し、必要なサポートを求めるように意識してみましょう。
子どもの感情を理解し、受け入れるようにする
子どもが情緒不安定にならないようにするためには、親が子どもの感情を理解し、受け入れることも大切です。
例えば、子どもが友だちとの喧嘩で悲しんでいるとき、親が「辛かったね、〇〇くんの気持ち、よくわかるよ」と言って慰めることで、子どもは自分の感情を認識し、適切に表現することができるようになります。
母性愛の不足を解消する
母性愛の不足から生まれやすい「自己否定の思い込み」は情緒不安定につながります。
母性愛とは、単に子どもに対する愛情を示すことだけではなく、子どもの感情や行動を理解し、それを受け入れる態度も含まれます。この愛情表現は、子どもが自分自身を肯定的に捉える基礎を作ることがわかっており、母性愛は特に男性に影響を与えるとされています。
Journal of Personality and Social Psychologyに掲載された研究によると、幼い頃に母親からの愛情を十分に受けていなかったと感じる男性は、愛情深い母親との関係を持っていた男性に比べ、大人になってからうつ病や不安を抱えるリスクが高まることが明らかにされました。
このように、母性愛の不足を補い、子どもの心の健康を支えることで、子どもの心の成長に大きな違いが生まれるのです。
参考:
Lawrence, J. G., & Holmes, K. R. (2012). Maternal care, attachment, and the development of depression and anxiety. Journal of Personality and Social Psychology, 102(4), 711-726.
まとめ
子どもたちが将来社会で活躍するためには、感情の適切なコントロール能力が必要不可欠です。そのためには、親が自身の感情を適切に管理し、子どもに良い手本を示すこと、また、子どもの感情を無視せず理解し、受け入れることが大切です。
子育ては、時にストレスや怒りを感じることもあるかもしれませんが、親が感情のコントロールに努めることは、きっと、子どもたちの成長の大きなサポートになるはずです。