子どもの自己肯定感

エリクソンの発達段階とは?子育てに生かすためにできることについて解説

子どもの成長を考える上で、「子どもの発達段階」を知る必要があります。子どもにはそれぞれの発達段階があり、各段階によってできること、できないことが存在します。

子どもの成長にあわせて適切なサポートをするためにも、今回は「エリクソンの発達段階」について解説します。

エリクソンの発達段階とは?

エリクソンは、人が生涯を通じて経験する自己認識や心理の発達についての研究で有名な心理学者です。

エリクソンの一番知られている功績は、「エリクソンの発達段階理論」と呼ばれるもので、これは人の一生を通じて直面する様々な心理的な問題や危機を8つの段階に分けて説明しています。赤ちゃんの時から老年期に至るまで、それぞれの年齢で遭遇する特有の課題や心理状況を説明しています。

エリクソンの理論と研究は、今日でも心理学や教育学の分野で大きな影響を持ち、多くの研究者や専門家に参考にされています。

「エリクソンの発達段階」の各段階について解説

以下では、エリクソンの発達段階の8つの段階について解説します。

ステージ 1. 乳幼児期(0-18か月)(2歳までとしている場合も有り)

0歳から18ヶ月までの乳幼児期は、親との関わり方によって「信頼感」を育むとても大切な時期です。親が安心感を与え、子どもをしっかりと支えることで、子どもはこの世界を安全な場所だと感じ、他の人を信じる力を身につけることができます。

愛情や安心感を十分に受けられない場合、子どもは不安を感じやすくなり、将来他の人への不信感を抱きやすくなる可能性があります。

乳幼児期で築かれるこの信頼や安心感は、友達や他人と協力して日常生活を過ごすための土台となり、精神的な健康を維持するのにも欠かせません。

ステージ 2. 幼児期前半(18か月~3歳)

1歳半から3歳までの幼児期前半は、自分で物事を決めたり、行動したりする自立心と自主性を育む時期です。親が子どもに適度な自由を与え、必要に応じて助けることで、子どもは自信をもって新しいことに挑戦し、困難に対処する力を育てることができます。

厳しすぎるルールや過度な否定は、子どもの自由な行動や発想を抑制し、自分の行動に対して恥ずかしい思いや疑念を抱くようになり、自信をなくす原因になったり、新しいことへの恐れを生んだりすることがあります。

ステージ 3. 幼児期後半 (3~6歳)

自分から進んで行動を起こすことが増える年頃です。積木を積む、絵を描くなど、自分のアイデアで何かを作り出すことに喜びを感じ、それを通じて「できる!」という自信を育てます。

この時期には子どもが「みてみて!」とお母さんに見せた絵を「上手だね!」と認めてあげることが大切です。

しかし、親が「これはダメ、あれもダメ」と制限を多くしてしまうと、子どもは「自分で選ぶのは悪いことなのかな」と自分の欲求や行動に自信を失い、消極的になる可能性があります。

自分で選んだ遊びに夢中になれる環境を作ることが、子どもが主体的に物事に取り組む力をつけるきっかけになります。

この時期には、「自分で決めていいんだ」ということを理解しつつも、時には「これはママやパパの言うとおりにした方がいいな」と思うことも大切です。このバランスが、自ら目標を持ち、やりたいことにチャレンジする挑戦心を育むのに役立ちます。

ステージ 4. 学童期 (7歳~11歳)

学童期(7歳~11歳)は、子どもたちが自分の能力を評価し始める時期です。成功体験を通じて自己効力感を育てることは、自尊心の発達においても重要で、子どもたちは自分の能力を信じ、友達や家族と協力して目標を達成しようとします。

例えば、宿題を自分で完了したり、スポーツや習い事で良いパフォーマンスを発揮しようとします。

一方で、否定的なフィードバックや自分を表現の機会が制限されると、子どもは自分が他者より劣っていると感じ、「劣等感」に苦しむことも増えてしまいます。この劣等感は、自信の欠如や挑戦に対して消極的になることにもつながります。

またこの時期には失敗を経験することも大切で、子どもが謙虚になるきっかけにもつながります。例えば、自分の得意を知りつつも、時には足りないところを認めることで、困難に立ち向かう強さを伸ばすことができ、結果的に自己評価を高めることができます。

ステージ 5 青年期(12~18歳)  

青年期に入ると、子どもたちは「私は何者か?」「どんな大人になりたいのか?」そして「自分が果たすべき役割は何か」を見つけようとします。エリクソンはこの時期を「アイデンティティーの危機」と名付けました。

この時期、子どもたちは自分の好きなことや大切にしたいことを見つけようとします。そして、その答えから「これが私だ!」と思える自分だけの個性を作り上げていくのです。

子どもたちは、この時期に「自分らしさ」を見つけるために、いろいろなことに挑戦します。たとえば、新しい趣味を始めたり、友達との関係を深めたりすることで、自分が何を大切にする人間なのかを理解していきます。

親として子どもがこの重要な時期に自己探求を行えるように支援することが大切です。それによって、子どもは自立心と自制心を育て、確かな自己意識を持つようになるでしょう。

もし親が「こうあるべきだ」と自分の考えを子どもに強く押し付けてしまうと、子どもは自分の本当の姿を見失い、反抗してしまうことがあります。

そうなると、子どもは自分自身を見つける大切な時期の途中で、間違った方向に進んでしまうかもしれません。親が子どもの主体性を尊重し、自由に探求させる環境を整えることが重要です。

ステージ6 成人前期(約18歳〜40歳)

成人前期、つまりおおよそ18歳から40歳の期間に、人は他人と深い関係を築くことを求めます。しかし、これは自分自身のアイデンティティを保ちながら、他人とのつながりを強めるという困難を伴います。

この時期を上手く乗り越えると、人は互いに支え合い、信頼関係を築くことができます。これらの関係は、人生の大切な部分となるでしょう。

この段階では、他人との人間関係に真剣に取り組むことが求められます。例えば、約束を守る、嫌味を言わない、相手をリスペクトするなど、友達との良好な関係構築には欠かせない行動を常に意識するべきでしょう。

一方で、友達と親密になることを避けたり、人間関係に対して恐怖心や不信感を持つことは、孤独感や孤立感を引き起こす原因となりえます。

ステージ7 成人中期(約40歳〜65歳)

多くの大人は、40歳から65歳の間に自分たちの役割や仕事、家族や社会への影響について深く考える「心理社会的危機」という段階に移ります。

この年代の大人は、自らの生活を通じて「何か意味あるものを残したい」と考えるようになります。

例えば、自分の知識を活かして地域社会で講演会を開くことや、社会的な問題に取り組むボランティア活動に参加することが、それらを感じる行動の一つです。

それに対し、自分が何も成し遂げていないと感じると、停滞感に陥ることがあります。

この時期をうまく乗り越えると、他人への気遣いや支援の精神が育ち、自分の行動が社会に良い影響を与えていると感じることで達成感に繋がります。しかし、役割を見出せない場合は、孤立感や生活に対して喜びが失われてしまうこともあるのです。

ステージ8 成人後期 (65歳から臨終まで)

65歳を迎えると、人はしばしば自分の過去を振り返り、人生の成果に基づいて心の中で満足感や達成感を味わうか、もしくは悔いや後悔に苛まれるかのどちらかを感じることが多いです。

自分の人生を振り返って満足し、過去の出来事に深い意味と一貫性を見出し、それを心から受け入れることができる状態、これが「自我の統合」です

これにより、人は人生の終わりに向けて穏やかな安心感を得られるのです。

逆に、過去の選択や未完の目標に対して心残りに感じている人は、「絶望」を感じることがあります。この絶望は人生に対する満たされない感覚や、人生の終わりへの不安や恐れを引き起こすことがあります。

心理学者のエリクソンは、自己の人生をそのままの姿で受け入れることが、自我の統合に至る道だと述べています。

またエリクソンによれば、自我の統合と絶望は必ずしもすべての人が経験するわけではないとされています。

エリクソンの発達心理学の注意点

「エリクソンの理論が自分の子どもに当てはまるのか」と疑問に思うかもしれません。

エリクソンの考え方は、子どもだけでなく大人の成長にも目を向けていて、大人になっても新しいことを学び、変わることができるという考え方を提示しています。

ただし、エリクソンの理論には、なぜ子どもたちが今回説明した特定の段階を経験するのか、その詳しい理由は説明されていません。

また、この理論は国の文化によっては必ずしも当てはまるとは限りません。そのため、エリクソンの理論を参考にするときには、子どもの個性や育っている文化にも目を向けることが重要です。

子どもが一人ひとりが違うように、理論をそのまま全ての子どもに当てはめるのではなく、その子のペースと特性に合わせて応用することが大切です。

エリクソンの発達心理学を子育てに活かすためには?

エリクソンの理論は若干複雑ではあるものの、子どもの成長段階を知る重要な指針です。この理論を理解し、実際に家庭で応用するためには、具体的な行動を取り入れることが重要です。

以下では、7-11歳の学童期におけるサポートについて解説します。

子どもの様子を日々観察しながらサポートする

子どもの様子を日々観察しながら、サポートすることが必要です。何かの問題につまづいているようであれば、「どの課題を乗り越えることができなかったのか」を観察し、解決するために環境づくりを行い、トライすることで、子どもが過去につまづいた課題をクリアする手助けができます。

エリクソンの発達段階に基づくと、7-11歳の子どもは「勤勉性VS劣等感」の段階にあります。この時期、子どもたちは学校や友達との関わりの中で自己効力感を育て、自分の能力に自信を持つようになります。しかし同時に、友達と比較することも増えるため、劣等感を感じることもあります。

たとえば、子どもがクラスでのグループ活動やスポーツでうまくいかないと感じる場合、親はこの困難に対して共感を示し、子どもが自分の強みを認識できるように、サポートすることが大切です。また、友達との関係でトラブルがある場合、親は子どもに冷静に対話することの重要性や、他者を理解する方法を教えることで、社会性を高めるのをサポートできます。

このように、7-11歳の子どもたちが直面する人間関係の問題に対して、親は子どもの感じている感情を理解し、適切な解決策を教えてあげることで、子どもが自己効力感を高め、健全な人間関係を築くのを助けることができます。

子どもの状況に応じて、努力の方向性を示してあげる

先述したように、7-11歳の学童期の子どもは自分の周りの子どもたちと比較をし始め、有能感や劣等感を持ちやすい傾向にあります。

競争での勝ち負け、学業での結果のみを重視するのではなく、その過程における努力を認めてあげ、個人同士の競争でなく、チームの一員として協力し合えるグループ活動を奨励することも効果的だと言われています。

例えば、小学校低学年の子どもがサッカークラブに参加している場合、ゴールを決めることだけを目標にするのではなく、メンバーとのコミュニケーションや協力して勝利することの重要性を理解させることが大切です。

また、学業においても、テストの点数が高いだけが良いわけではなく、日々の勉強方法や授業への取り組み姿勢など、過程を評価することで、子どもは自分の成長を実感できます。

このように、子供の年齢段階に応じて課題を設け、彼らがそれを乗り越えることで自信を育むことや、失敗から学びを得られるような環境を整えることが重要です。

まとめ

エリクソンの発達段階は子どもの成長には個人差があったり、育つ環境によって精神的な成長も異なるため、鵜呑みにすることは避けるべきですが、子どもの発達段階にあわせてどのようにサポートするべきかの目安になります。

「どうしてうちの子どもはできないんだろう」と焦らず、日々の行動を注意深く観察して、適切にサポートしましょう。

ABOUT ME
この記事の監修者 - 井上 顕滋
31年の経営者経験を持ち、主に教育系メディア事業、人材育成企業、子どもの非認知能力強化プログラム「Five Keys」を運営する財団法人、飲食事業などを経営。 人材育成のキャリアは社員教育からスタートし、成果を上げる中で多くの経営者から問い合わせが増加し、2004年に人材育成企業「リザルトデザイン」を設立。 クライアントの業績に大きく貢献する中で、社員の成果には個人差があることを痛感し、その原因を解明するため、世界的権威である研究者および実践者から最新の心理学と脳科学および「人の心に変化を生み出す最先端技術」を徹底的に学び、実践を重ねた結果、成果とモチベーションの向上を可能にするリザルトプログラムを開発。 また上記「成果の個人差」の真因と、満足度の高い充実した人生を送れるかどうかの鍵が、幼少期(12歳まで)の「親の関わり方」と「与える教育」にあることを発見し、親への教育講座を開催。
子育てのとびら編集部
明日から実践できる子育てに役立つ情報を発信していまいります。