子どもの自己肯定感

子どもの楽観的な性格が重要な理由は?手本となるべき親が心がけたいこと

「楽観的」と聞くと少しマイナスなイメージを持つ方もいるのではないでしょうか。実は、楽観的であるというのは、子どもの長い人生において、また社会での活躍にも影響を与えるスキルの一つです。子どもたちの人生で起こる多くの困難や挑戦に立ち向かう際には、楽観的な性格が大きな武器となります。この記事では、楽観主義がなぜ重要なのか、そしてその楽観主義を育むために親ができる具体的な方法について解説します。

なぜ楽観的な性格がこれから重視されるのか?

楽観的な性格は、現代の急速に変わる社会や、ビジネス環境で求められる適応力、逆境を前向きに捉える力の基盤となります。子どもたちが成長するにつれて、大きな困難に直面する機会は今よりどんどん増えていきます。楽観的な性格であれば、そんなストレスフルな状況の中でも、物事をポジティブに捉え、乗り越えていくことが可能になります。

逆に、楽観的でないと、小さな失敗や困難に対して打たれ弱くなり、ストレスや不安が溜まりやすくなると考えられます。こういった状況が続くと、自分に自信を失い、新しいことに挑戦する勇気が出なくなってしまいます。最悪の場合、健康にも悪影響を与え、充実した人生を送れなくなる可能性があります。

楽観的な性格というのは、決して生まれつきのものだけではありません。周囲の関わり方によって、伸ばすこともできます。

参考:Harvard Business Review “What Leading with Optimism Really Looks Like”

悪い楽観主義と良い楽観主義の違いとは?

楽観主義には良い面と悪い面があります。良い楽観主義は、逆境や厳しい状況下でも常に前向きに取り組むマインドや姿勢を指しますが、一方で悪い楽観主義は、怠惰やわがままにつながる可能性があります。ここでは、その両者の違いについて紹介します。

悪い楽観主義

悪い楽観主義には、以下のような特徴があります。

  • 頑張らない
  • 指示に従わない
  • 学校に行かない
  • やることをやらない

このような態度は、いわばわがままな状態であり、子どもの成長や発達にとって好ましくありません。悪い楽観主義は子どもが責任感を持たず、物事に真剣に取り組まなくなる可能性があります。

良い楽観主義

一方良い楽観主義は、逆境や厳しい状況下でも常に前向きに取り組むマインドや姿勢を指します。良い楽観主義を持つ子どもは、以下のような特徴があります。

  • 何度も新しいことに挑戦する
  • 失敗を恐れず、失敗から学ぶ姿勢を持つ
  • 問題解決に積極的に取り組む
  • ストレスに対して適切に対処できる

これらの特徴は、子どもの健全な成長と発達に大きく影響します。良い楽観主義を持つ子どもは、人生の様々な局面で直面する困難や挑戦に対して、柔軟かつ前向きに対応することができるのです。

楽観的な子どもの特徴とは

楽観的な性格は、子どもにどのような良い影響を与えるのでしょうか。以下では、楽観的な子どもの特徴について詳しく解説します。

自己肯定感が高く、自分に自信を持っている

サラゴサ大学によれば、楽観的な子どもは、自己肯定感が高く、自分の能力やスキルに自信を持っているとされているため、新しい挑戦や困難な状況にも前向きに取り組むことができます。

例えば、算数のテストで良い点数が取れなかったとしても、「次はもっとできるはずだ!」と前向きに捉えて、継続して努力することができ、結果として、成績にも良い影響を与えます。

楽観的な性格ゆえのこの自信は、次回の挑戦において良い結果を出す確率を高めます。そしてそれが成功体験につながり、さらに自信を育む良いサイクルを作り出します。

新しい環境を怖がることなく前向きに捉える力があるため、適応力が高い

楽観的な子どもは、新しい場所や新しい人がいる環境など、一般的にストレスを感じやすい状況や変化に対して怖がるのではなく、それを「楽しい経験になるかもしれない」と考えます。例えば、新しい学期でクラス替えがあり、周りが知らない子だらけの状況になった場合でも、「新しいクラスになったおかげで、新しい友達もたくさんできる」と前向きに考えることができるのが、楽観的な子どもの大きな特徴です。

このように楽観的に考える力を持っていることで、子どもは新しい環境にすぐに慣れたり、新しい友達を作ることもでき、子どもにとって大きな自信となります。

友達から好かれるようになり、よい友好関係を築くことができる

楽観的な子どもは、ポジティブなエネルギーをたくさん持っており、たとえ何か問題が起こったとしても、何事も前向きに捉え、友達と楽しく遊ぶことが上手です。例えば、友達と外で遊んでいて突然雨が降ってきたとしても、楽観的な子供は「雨が降ってきたけど、家でやりたかったゲームができるね!」と前向きに考えるので、友達もそのポジティブな考えに引っ張られて、一緒に楽しく遊ぶことができます。

こういった楽観的な考え方ができる子どもは、友達からも好かれるので、素敵な友好関係をたくさん築くことができます。

参考:

Usán, P., Salavera, C., & Quílez-Robres, A. (2022). Self-Efficacy, Optimism, and Academic Performance as Psychoeducational Variables: Mediation Approach in Students. Children (Basel, Switzerland), 9(3), 420.

Wang, X., Lu, X., Hu, T. et al. (2022) Optimism and friendship quality as mediators between trait emotional intelligence and life satisfaction in Chinese adolescents: A two-wave longitudinal study. Curr Psychol   

楽観的な性格の子どもを育てるために家庭でできることは?

アメリカの心理学者コーエン氏らの研究によると、子どもが楽観的な性格を育むためには、親が子どもにどのような言葉をかけ、子どもにどのような環境を与えてあげられるかが鍵になるとされています。以下では、家庭の中で、親が子どもにしてあげられる具体的な内容を解説します。

子どもにポジティブな言葉をかけることで、親自身が手本となる

日々の生活を送る中や、何か問題が起こった時、親自身が手本となってポジティブで楽観的な発言や行動を子どもに見せることで、子どもも自然と同じような考え方を身につけ、変化への適応力が育まれていきます。

例えば、朝、子どもが眠くて学校に行くことを嫌がっていたとします。ここで親は「遅刻するから早く準備しなさい!」と声をかけるのではなく、「今日の給食⚪︎⚪︎でしょ?いいな〜楽しみだね!」とポジティブな言い方に変換するようにしてみましょう。

他にも、子どもがテストの点数が悪く落ち込んでいる際には、「一回間違えたら記憶に残るし、次はもう間違えないから、すごく良い経験になったんだよ!次、同じ問題が出たら答えられるね!」と親が前向きな言葉をかけてあげることで、子どもは、間違ったことは悪いことではないと認識し、次回はもっと良い点数を取ろうと前向きになることができます。

子どもに新しいことに挑戦する機会や、ちょっと難しい課題を与える

子どもは挑戦と失敗を繰り返す中で、自然と楽観主義の感覚が培われていきます。ただし、ここで大切なことは、子どもが挑戦しようとして失敗したり、うまくできなかった時に、親が前向きな言葉を子どもにかけてあげるということです。

例えば、対象年齢よりもちょっと上のパズルを子どもにやってもらうのも良いでしょう。例えうまくできず時間がたくさんかかったとしても、どうやったらもっとスムーズに進められるのかを親が子どもと一緒になって考えたりすることで、子どもも前向きに困難に立ち向かえるようになります。

参考: 

Cowen, E. L., Wyman, P. A., Work, W. C., Kim, J. Y., Fagen, D. B., & Magnus, K. B. (1997). Follow up study of young stress-affected and stress-resilient urban children. Development and Psychopathology, 9, 565-577 

Hasan, N., & Power, T. G. (2002). Optimism and pessimism in children: A study of parenting correlates. International Journal of Behavior Development, 26, 185-191. 

Beals-Erickson, S, E. (2010) Optimism in Children Exposed to Child Maltreatment, University of Kansas  

まとめ

楽観主義は子どもたちの成長、適応能力、さらには未来の成功にも寄与する非常に重要な性格特性です。楽観的な性格を持つ子どもは、自己肯定感が高く、新しい環境や挑戦に対しても前向きに取り組むことができます。

また、そのポジティブなエネルギーは友達作りや人間関係にも影響を与え、より充実した人生を送る基盤を作ります。親として重要なのは、日常生活で子どもにポジティブな言葉をかけること、新しい挑戦を促す環境を提供すること、そして何よりも、自らが楽観主義の良い手本となる行動をすることです。

これらを心がけることで、子どもは楽観主義を自然と身につけ、困難な状況でも前向きな気持ちで乗り越える力を培うことができます。

ABOUT ME
この記事の監修者 - 井上 顕滋
31年の経営者経験を持ち、主に教育系メディア事業、人材育成企業、子どもの非認知能力強化プログラム「Five Keys」を運営する財団法人、飲食事業などを経営。 人材育成のキャリアは社員教育からスタートし、成果を上げる中で多くの経営者から問い合わせが増加し、2004年に人材育成企業「リザルトデザイン」を設立。 クライアントの業績に大きく貢献する中で、社員の成果には個人差があることを痛感し、その原因を解明するため、世界的権威である研究者および実践者から最新の心理学と脳科学および「人の心に変化を生み出す最先端技術」を徹底的に学び、実践を重ねた結果、成果とモチベーションの向上を可能にするリザルトプログラムを開発。 また上記「成果の個人差」の真因と、満足度の高い充実した人生を送れるかどうかの鍵が、幼少期(12歳まで)の「親の関わり方」と「与える教育」にあることを発見し、親への教育講座を開催。
子育てのとびら編集部
明日から実践できる子育てに役立つ情報を発信していまいります。