子どもの思考力

子どもが失敗を恐れる原因とは?親の適切なサポートも紹介

今は挑戦が推奨される時代ですが、挑戦には必ずと言っていいほど失敗が伴うものです。しかし、失敗が怖くて新しいことに一歩を踏み出せないお子さんも多いのではないでしょうか。

失敗を恐れず果敢に挑戦できるようになるためには、「失敗を許容する環境」がとても重要です。この記事では、子どもがなぜ失敗を恐れてしまうのか、そしてそれを乗り越えるために、親ができることは何かを解説します。

挑戦が推奨される時代に失敗への寛容は必要

日本は昔から「失敗は恥ずかしいこと」と捉えられ、保守的な選択をすることが多い傾向にありました。しかし、変化の激しい現代社会においては、失敗を避けて安全な選択ばかりをしていると、逆に活躍できる場が減ってしまうというリスクがあります。

経団連が提唱するSociety 5.0では、求める能力と素質に

  • ・リーダーシップ
  • ・失敗を恐れず果敢に挑戦する姿勢
  • ・自己肯定感
  • ・忍耐力
  • ・他者と協働する力
  • ・新しいことを学び続ける力
  • ・変化を楽しむ力

などを挙げています。これらの能力や資質は、失敗を許容し、その経験から学ぶ環境があることで育まれます。

子育てにおいても、失敗を許容することで、子どもたちは新しいことにも恐れずに挑戦することができるようになります。また失敗したとしても、「恥ずかしい」、「やっぱり自分にはできないんだ」とネガティブに捉えることなく、失敗した経験から、次どうすればうまくいくのかを学び成長していきます。

参考:
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_suishin/pdf/002_05_00.pdf

失敗を恐れる子どもの心理状況とは?

子どもたちが失敗を恐れる理由は、単に「怖いから」という表面的なものではありません。以下では、その背後にある、子どもたちの心理的な要因を解説します。

承認欲求が強く、周りからの評価を気にする傾向にある

自己評価の低さなどが原因で承認欲求が強い子どもは、他人の評価を極端に気にするため、「失敗したらどうしよう」、「うまくいかなかったらバカにされる」といった思考によって、失敗を恐れるようになり、新しいことへの挑戦を避けるようになります。

例えば、家庭内で厳しい基準を押し付けたり、過度に子どもの能力に期待したりすることで、子どもは他人からの常に高い評価を得ようとします。その結果、失敗をした場合には家庭内での評価も下がると感じ、失敗を極端に恐れるようになってしまいます。


参考:https://www.get-results.jp/media/self-esteem/strong-need-for-approval-230912/

やる前から自分にできないと思い込んでいる

やる前から自分にはできないと思い込んでいる子どもたちは、「固定思考」を持っている傾向があります。固定思考とは、自分の能力や知識は生まれつきのもので変わらないと信じる思考パターンです。このため、「努力してもどうせ無駄」と感じ、新しい挑戦や努力することを初めから諦め、失敗を極端に恐れるようになります。

さらに、固定思考を持つ子どもは、自分の能力や成功を他人と比較する傾向があり、この比較する癖は子どもの自尊心にも悪影響をもたらし、ストレスを引き起こすリスクがあります。

参考:https://www.get-results.jp/media/goal-achievement/howtomakeeffort-230513/

完璧主義の傾向が強い

完璧主義の子どもは、失敗に対してネガティブな感情を抱いている傾向があります。このような子どもたちは、例えば「全てのテストで満点を取らないといけない」などの非現実的な基準を設定し、それを達成しようとします。さらに、少しの失敗でも「全然ダメだ」などと大事に捉え、自分自身を厳しく評価します。

子どもが失敗を恐れる原因となる親の行動とは?

子どもたちが何を恐れ、どう振る舞うかは、親の態度や行動が大きく影響している場合が多くあります。以下では、親の育児スタイルが失敗を恐れる子どもの心情に、どのように影響を与えるのかを詳しく見ていきます。

親が子どもの失敗やミスを厳しく批判したり、過度な期待をしている

上記でも触れた通り、親が完璧主義であると、子どもは失敗を恐れてしまう可能性があります。これらは、親の態度が影響している場合があり、親が子どもに過度な期待をしすぎたり、失敗やミスを厳しく批判したりすると、子どもは「自分は一つの間違いも許されない」、「完璧でなければならない」という思い込みを持つようになります。

また、これにより子どもは、挑戦に対して過度なプレッシャーを感じるようになってしまい、結果的にパフォーマンスが下がるだけでなく、不安障害や抑うつ状態を引き起こしてしまう可能性もあります。

参考:https://www.get-results.jp/media/self-esteem/perfectionismofchildren-230628/ 

過干渉や過保護の育児スタイルが起因している可能性がある

過干渉や過保護の育児スタイルでは、子どもが自分の能力に自信が持てなくなり、失敗を恐れる心理状態をつくる可能性があります。

過干渉の場合、親が子どもが選択する行動までに介入することで、子どもは自分での意思決定や選択の機会を失います。これにより、自分で選択や判断をする機会が減るため、いざ自分で行動を起こそうとしたときに、「これまで自分で判断してやり遂げたことがないからうまくできるかな」と失敗に対する不安が高まります。

過保護の場合は、親が子どもをあらゆるリスクや困難から遮断しようとするため、子どもは自分で問題を解決する経験が少なくなり、失敗や困難な状況に対しても適応できないといった状況が発生してしまいます。

失敗したときの対処法がわからないため、失敗を恐れ、挑戦することに対して億劫に感じるようになります。

子どもが失敗を恐れず、あらゆることに挑戦するために親としてできることは?

子どもが失敗を恐れず様々なことに挑戦できるようになるためには、親の関わり方がとても重要です。以下では、失敗を「成長と学びの機会」に変える育児のコツと、子どもが自らの力で困難を乗り越えられるようにするための手法を詳しく解説します。

親自身が失敗に対して肯定的な態度を示すことが重要である

親自身が失敗に対して肯定的な態度を示すことは、子どもが失敗を恐れずにあらゆることに挑戦するために非常に重要です。失敗は成長の一部であり、それを理解し受け入れる文化を家庭内で作ることが、子どもの自信を育む基盤となります。

そうすることで、子どもも失敗を恐れず、より積極的に新しいことに挑戦する勇気を持つようになります。これは、子どもが社会で成功するために必要な「リスクを取る勇気」や「問題解決能力」を高める大きなステップとなります。

子どもに挑戦や自立を促す子育てが大事

子どもが失敗を恐れず、挑戦する力を育むためには、子どもにあらゆる挑戦をさせ、自立を促すことが有効です。例えば、今日何を着るかを毎日子ども自身に考えてもらったり、子どもが友達と喧嘩してしまった時に、「どうしたら仲直りできると思う?」と問いかけ、自分自身で仲直りする方法を考えてもらうなど、挑戦や自立を促す機会を増やすようにしましょう。

これにより、子どもは「自分だけでも問題を解決できるんだ」と自信を持つようになり、失敗を恐れず様々なことに挑戦できるようになります。また、困難な状況に遭遇したときでも、自分で解決策を見つけ出し、行動に移す力が身につくと考えられます。

結果ではなく、努力の過程をサポートすることも重要である

親が結果より子どもの努力の過程に焦点を当てることで、子どもは失敗を恐れずに、積極的に新しい挑戦ができるようになります。例えば、子どもがテストで低い点数を取った場合に、点数ではなく「どうやって勉強したのか」に注目し、その努力を称賛することで、子どもは次回に向けての自信とモチベーションを保ちます。

他にも、例えば、子どもが自転車の練習をしていても、なかなか乗れるようにならなかった場合、親は「難しいなと感じるのはどこ?」と尋ね、子どもが「バランスが取れない」と答えたら、「じゃあ、どうやったらバランスが取れるか一緒に考えてみようか」と過程をサポートするようにし、「いつも左に傾いて転けちゃうから、次はそこを意識してみようか」と失敗から学べることを一緒に考えてあげるようにます。そうすることで、子どもは失敗を成長の機会と捉え、自転車の練習にも失敗を恐れず前向きに取り組むことができるようになると考えられます。

親からの世代間連鎖の可能性

親自身が子どもの頃から失敗を恐れて生きてきた場合は、上記のような取り組み自体が難しいと言えます。この場合はコアビリーフセラピストに依頼をして親自身が持っている幼少期の心の傷を癒す必要があります。

そうすれば失敗に対する恐怖が大幅に軽減され、子どもの挑戦を見守る余裕が生まれるはずです。

まとめ

今は、新しいことに挑戦することが評価される時代です。挑戦にはもちろん失敗がつきものですが、それが怖いからと言って挑戦から逃げることは、子どもたちの成長を大きく制限してしまいます。今回、記事の中でも触れたように、子どもが失敗を恐れる理由は様々です。承認欲求、固定思考、完璧主義、そして親の過度な期待や過干渉など、多くの要因が子どもの心に影響を与えています。

しかし、親としてできることはたくさんあります。失敗を「学びの機会」として受け入れ、子どもに自立と自信を育む環境を提供すること。そして何より、努力の過程を称賛し、一緒に失敗から学び成長をサポートすることが、子どもが失敗を恐れず、様々なことに挑戦する勇気を育むのです。

ABOUT ME
この記事の監修者 - 井上 顕滋
31年の経営者経験を持ち、主に教育系メディア事業、人材育成企業、子どもの非認知能力強化プログラム「Five Keys」を運営する財団法人、飲食事業などを経営。 人材育成のキャリアは社員教育からスタートし、成果を上げる中で多くの経営者から問い合わせが増加し、2004年に人材育成企業「リザルトデザイン」を設立。 クライアントの業績に大きく貢献する中で、社員の成果には個人差があることを痛感し、その原因を解明するため、世界的権威である研究者および実践者から最新の心理学と脳科学および「人の心に変化を生み出す最先端技術」を徹底的に学び、実践を重ねた結果、成果とモチベーションの向上を可能にするリザルトプログラムを開発。 また上記「成果の個人差」の真因と、満足度の高い充実した人生を送れるかどうかの鍵が、幼少期(12歳まで)の「親の関わり方」と「与える教育」にあることを発見し、親への教育講座を開催。
子育てのとびら編集部
明日から実践できる子育てに役立つ情報を発信していまいります。