子どもの「判断力」は、今後の人生で活躍するために必要不可欠なスキルです。特に情報過多の現代において、どの情報が正確で、どの情報が誤りなのかを見極め、判断する力は、子どもだけでなく大人にも求められます。
しかし、親の過度な介入やサポートが、この判断力を阻害する可能性もあるのです。この記事では、判断力がどうして重要なのか、その判断力を育むためには親がどう関わるべきなのかについて、詳しく解説します。
変化の激しい現代社会における「判断力」の重要性
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変化の激しい現代社会において、子どもたちに必要なのは、ただ情報を集めるだけでなく、その情報をしっかりと分析し、評価し、適用する「判断力」です。
これからは、前例のない中で仕事を進めていくことも求められる時代です。例えば、AIの進化により、これまで人間が行っていた計算業務やデータ入力、デザイン制作などのほとんどが代替されるといったことが今後起きるでしょう。
その際に「自分はこれからどのようなスキルを身につけるべきか?」「AIをどのように活用するべきか?」「働く業界・会社を変えるべきか?」といった判断に迫られることになります。
そのような状況下において、多くの情報の中から「こっちの選択を取るべきだ」と勇気をもって判断する力がより重要となってきます。
このように、判断力は子どもたちが大人になった際に役立つ大切な力です。子どもたちがこの複雑な社会でしっかりと生き抜くためには欠かせない能力と言えるでしょう。
参考:
Academic Critical Thinking, Research Literacy And Undergraduate History
経団連「「次期教育振興基本計画」策定に向けた提言 -主体的な学びを通じ、未来を切り拓くことができる多様な人材の育成に向けて – 」
判断力の土台は「自己認識」や「自己信頼」から成り立っている
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自己認識について
オクラホマ州大学の研究によると、「自己認識」と「自己信頼」が判断力の土台となっており、これらが高い人は一般的に良い判断ができる傾向にあります。
自己認識とは、自分が何が得意で、何が苦手かを明確にわかっていることです。
例えば、自分が得意なもの不得意なものを把握していると、誰に何を任せて自分は何を担当するべきかを正確に判断することができます。
仕事においてもなんでも自分でやってしまう人が周りにいるかと思います。そのような方は自分が全部できると思っていますが、周りから見ると不得意な領域は明らかであり、「誰かに任せればもっと早く片付けられるのに」と思うこともあるかもしれません。このように自分の能力や適正を正確に把握していないと、適切な判断ができないことにつながります。
自己信頼について
ワークス研究所の調査レポートによると、自己信頼とは、「現在の自分、将来の自分に対して自信や希望を持っていること」と定義されています。また、自己信頼は、「自分自身への信頼」だけでなく、他者から信頼されているといった「良好な人間関係」の要素や、「未来への希望」といった要素から成り立っているとされています。
例えば、ある子どもが周囲からの推薦によって、運動会でリレーのアンカーを任された時、「自分ならできる」と信じる気持ちが自己信頼です。この自己信頼は、友達からの応援(良好な人間関係)や、絶対に運動会のリレーで優勝する!(未来への希望)から成り立っています。
この「自己認識」「自己信頼」の二つが高いと、仕事で難しい問題に直面した時でも、自分の強みを理解し「この部分は自分が得意だから大丈夫」と自信を持ち、逆に弱い部分は「ここは注意しないといけない」としっかり考慮します。その結果、全体としてより良い判断をすることにつながるのです。
参考:
親の過度な介入は、子どもの判断力の低下につながる
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研究によると、親が子どもに対して過度に介入する「ヘリコプターペアレント」のスタイルは、子どもの判断力に悪影響を与えることが多いとされています。
このような親は子どもの代わりに問題を解決してしまう傾向があり、子どもが問題解決する機会を奪ってしまいます。
また、親が子どもの行動を過度に制限すると、子どもは自分の力で何かをする自信を失い、親に依存してしまう可能性が高まります。
このような状態は、子どもが社会で自立して意思決定する能力の発達を妨げることに繋がります。
さらに、親からの過度な制限やプレッシャーは、子どもの心理的ニーズを満たすことができず、結果としてその判断力や主体性が妨げられる可能性があります。
親としては、子どもの意思決定プロセスをサポートする一方で、その自主性と成長を尊重するバランスが求められます。子どもが自ら選択を行い、その結果に対する責任を持つことが、健全な判断力を育む鍵になります。
参考:
子どもの判断力を高める方法について
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以下では、子どもの判断力を高めるためにできることについて解説します。
自己効力感を高めるためにサポートする
子どもの判断力を高めるためには「自己信頼」が重要であり、自己信頼に近い考え方に「自己効力感」があります。
「自分にはできるんだ」という自分の能力や可能性を信じる感覚を自己効力感といいます。この自己効力感が高ければ自分自身の判断にも自信を持ちやすくなります。一方、自分にはできないと感じると、子どもは他人の意見を優先したり、自分の判断が間違っているかもという不安に駆られるため、まずは自己効力感を上げるというアプローチも効果的と考えられます。
以下では、アルバート・バンデューラ教授の研究をもとに、子どもの自己効力感を上げるためのポイントについて解説します。
経験を積ませる
例えば、「今日は、1人で宿題を終わらせてみて」、「服を自分で選んでみて」など、子どもが自分で目標を達成したり、選択させてみたり、小さな困難を乗り越える経験を積むことが大切です。
お手本を見つけさせる
子どもが尊敬する人物、例えばお気に入りのキャラクターや親戚、友達などをお手本として紹介することで、子どもは「私もできる!」とより感じやすくなります。
以上のように、実際の成功体験、良いお手本、ポジティブなフィードバック、そして感情と体調のケアを通じて、子どもの自己効力感を高めることができます。
子どもの自己肯定感と自己効力感の違いとは?
参考:
主体性を向上させる
さらに、子どもの判断力を高めるには、主体性も同時に育んでいくことが大切です。以下では、カーティン大学の研究をもとに、子どもの主体性を育むポイントを解説します。
選択の機会を与える
子どもにはなるべく選択の機会を与えることが重要です。
例えば、家族旅行の場所を決める際に、親が子どもに場所を決める機会を与えてみましょう。これによって、子どもは自分でも決めていいんだ、と他者から信頼されている実感や、実際に「自分で決めてもなんとかなった」という経験が自信につながります。行き先は親が決めて、行き先での遊び方を決めさせることなども有効です。
子どもの考えと気持ちを尊重する
子どもが自分の意思で選んだことに対して、しっかり褒めてあげましょう。
例えば、子どもが自分で選んだ絵本やおもちゃに対して、「いい絵本をを選んだね!」「そのおもちゃで何を作ろうか?」と子どもの意見を尊重します。
これによって、子どもは自分の行動に対して自信を持ち、主体的に判断するようになるでしょう。
努力の過程をサポートする
ただ選択させるのではなく、必要に応じてサポートしましょう。
例えば、状況に応じて質問を投げかけ、子ども自身が答えを見つけられるようサポートをしたり、子どもが自分で選んだ習い事やクラブ活動に参加することをサポートし、それに対する努力を褒めることで子どもの主体性を高めることが期待できるとされています。
安心感を与える
自分で選択することに自信がないという子には「もしうまくいかなかったとしても、それはいい経験になるから安心していいよ」と言って、心理的な安全を保つことで、子どもは自由に新しいことに挑戦できます。
親や大人がこれらのポイントに沿ってサポートを提供することで、子どもの判断力はしっかりと育まれていきます。
参考:
まとめ
子どもがこの複雑な社会で生き抜くには、判断力が必要です。親や大人のサポートは子どもの成長に大切ですが、一方で、過度な介入は「判断力」を阻害するため注意が必要です。
適度な距離で、子ども自身に考えさせる機会を作ることを心がけてみてください。また同時に、親が失敗を恐れずに子どもが自ら選択する環境を作ることで、子どもを適切にサポートしていきましょう。