子どもたちにとって、論理的思考は日々の生活に役立つ不可欠なスキルであり、さまざまな活動を通じて伸ばすことができると言われています。
しかし、論理的思考を身につけることで、どのような効果が得られるのか、また具体的にどのようにすれば子どもたちの論理的思考を鍛えることができるのか、よくわからないと感じておられるの方もいらっしゃるでしょう。
そこでこの記事では、論理的思考とは何か、なぜ子どもたちにとって論理的思考が重要なのか、また論理的思考はいつ頃から発達するのか、そしてどのように鍛えることができるのかについて、解説します。
論理的思考とは
論理的思考とは、物事を体系的に把握し、矛盾や抜け漏れ、飛躍がないように考えるスキルのことです。
例えば、家で枯れている観葉植物をみた際に、「なぜ枯れるのだろう?」とまず考えますよね。そこから「水を与えるのをたまに忘れる」、「日当たりが悪いところに置いていた」、「土の養分が少ないかもしれない」といった細かい要因に分けて考えます。
そこから水をやったり、場所を変えたり、土を入れ替えたりして検証して、問題の根源となる原因を追求します。
このように「なぜ」を繰り返し考えながら、問題解決するために必要なスキルが論理的思考です。
論理的思考が子どもたちにとって大切な理由
後に説明しますが、論理的思考の重要性が高まっており、政府は子どもの論理的思考力を伸ばすためにプログラミング授業を導入し始めています。
以下では、論理的思考力を鍛えることでどのようなメリットが得られるのかについて解説します。
問題解決能力が高まる
先述したように論理的思考を身につけることで、問題を理解し、最善の解決策を導くことが可能になります。
文部科学省は、この問題解決能力を「自分で課題を見つけ、解決策を考え、主体的に判断し、問題を解決する資質や能力」としています。
またこの問題解決能力は、子どもたち個人にとっての問題を解決するための能力ではなく、子どもたちが大人になった時に生じる人間関係の問題や仕事で直面する課題を解決する能力にもつながります。
参考:
文部科学省「今、求められる力を高める総合的な学習の時間の展開」
イノベーションを起こす力につながる
論理的思考力は、イノベーションにも必要な力です。
イノベーションは、それまで誰も思いつかなかったようなことを思いつく、発想力が必要だと考えられがちです。
哲学者であり、論理学者でもある、東京大学名誉教授野矢茂樹先生によると、イノベーションを起こすような発想に至るプロセスでは、いきなり新しいことを思いついているわけではないとされています。
まずは論理的思考で小さな結論を着実に積み重ねていく、そのような強固な思考の土台があってこそ、飛躍したアイデアが思い浮かんでいるのです。つまり論理的な思考が、革新的な発想の基盤となっているとも言えます。
参考:
野村證券株式会社「天才になれなかった人がイノベーションを起こすために鍛えるべき能力」
コミュニケーションの能力が向上する
先ほど紹介した野矢教授によるとコミュニケーション能力は、論理的思考が基盤となっているとされています。
自分の考えや意見を伝える際に、ただ結論だけを説明するだけではなく、「なぜその結論に至ったか」を他人にわかるように伝えることで、初めて理解を得られるようになります。
しかし、理路整然としない説明の場合、相手から理解を得られなかったり、仕事においては協力してもらえない可能性があります。
論理的に話して理解してもらうことは仕事においても非常に重要なスキルになります。
テクノロジーが浸透した時代に重宝される
経団連はSociety 5.0に求められる能力と資質のなかに論理的思考を上げています。Society5.0とはIoT(Internet of Things)やAI、ロボットなどを活用し、日本国内の社会課題の解決を目指す未来計画のようなものです。テクノロジーを活用するためには論理的思考が必要とされており、そこで文部科学省は、プログラミング授業を導入しました。プログラミングを通じて、論理的思考や問題解決能力を養うことができると考えられています。
論理的思考は、テクノロジーの活用が当たり前になった時代に、必要となる道具のひとつであると言っても過言ではないでしょう。
参考:
いつ頃から子どもの論理的思考は発達するのか
では、子どもの論理的思考はいつ頃から発達するのでしょうか。
スイスの心理学者ピアジェの認知発達段階説によると、子どもたちが大人と同じような論理的思考ができるようになるのは12歳以降であるとされています。
この年代になると、抽象的な概念を理解するようになり、仮説をたてて論理的に推論することが可能になります。私たちが数学を中学生になってから勉強するのは、この理論から見ても理にかなっているのでしょう。
ただそのもう少し前の年代、つまり7歳頃以降でも、論理的思考ができることも示されています。例えば大きさの異なる2つのコップを目の前におき、片方に入っていた水をそのままもうひとつのコップに移すと、見た目の水の量は変化しているように見えます。
しかし、この年代の子どもであれば、水の量に変化はないことが理解できます。
もちろん個人差はありますし、今後この説が覆されることも起こりえますが、小学校に入学するあたりから、論理的思考は発達すると考えて良いでしょう。
参考:
https://psycnet.apa.org/record/2004-16276-000
https://psycho-psycho.com/concrete-operational-stage
http://digitalword.seesaa.net/article/88698451.html
子どもたちの論理的思考を鍛えるために家庭でできること
子どもたちの論理的思考を高めるため、すでに日本の学校ではプログラミングや、子どもたちが自分たちで課題を見つけて解決策を話し合う、アクティブラーニングが取り入れられています。
それでは、これから認知的思考を伸ばす小学校低学年あたりの子どもたちの論理的思考を鍛えるために、どのようなことが家庭でできるかについて解説します。
子どもに読書をさせる
読書が論理的思考を鍛えるために役立つことを実証した研究があります。
国立青少年教育振興機構青少年教育研究センターは、これまで何度か全国20~60代の男女を対象に、子どもの頃の読書活動と認知機能の関連について調査を行っています。
その結果、就学前から中学生時代までに読書活動が多かった人ほど、その後の論理的思考の能力が高くなっていることがわかりました。それだけでなく、社会性、自己肯定感、意欲・関心などにおいても、読書活動はプラスに働いていることもわかりました。
また興味・関心に合わせた読書経験が多い子どもほど、小学生以降の読書量が多くなっていることもわかっています。
このような調査結果からも、小学校低学年のうちに本に触れ、本を読むことの大切さが理解できます。
参考:
http://uchidoku.com/htdocs/?action=common_download_main&upload_id=991
https://www.niye.go.jp/pdf/210811.pdf
論理的思考力を高める問いかけを日常の会話に取り入れる
思考力を貯めるためには子どもとの普段の日常会話のなかに、
- 要するにどういうこと?
- 例えばどういうこと?
- 他には?
- 具体的には?
- どうすればいいと思う?
という5つの問いかけを適宜組み入れてみましょう。
このように考えを深める質問を、親からさりげなく問いかけられることを日々続けると、子どもの話す内容を要約したり、より具体的に表現したりすることに役立ちます。
はじめは親からさりげなく質問されることで考えを深めていると、それが次第に習慣となり、最終的に子どもの論理的思考を伸ばすことに役立つのです。
ただし、子どもに思考力を高める問いかけをする際、以下の3つの点に注意しましょう。
- 質問責めにしないこと
- 的外れな回答であっても子どもの答えを批判しないで受け止めるこ
- 問いに対する答えは、親が教えるのではなく、子どもなりに考えさせること
親との会話を楽しむなかで、自然と身につけるようにすることが、継続して論理的思考力を伸ばすために大切なことですので、子どもが親に話すことを避けたくなるような関わり方は避けましょう。
参考:
https://toyokeizai.net/articles/-/121770
挑戦をサポートすること
また子どもの挑戦をサポートすることは、子どもの論理的思考を鍛えることにつながります。
子どもが何歳であろうと、親の役割は、「子どもが自分で考え、行動できるようになることを助ける」ことにあります。つまり、できるだけ口を出さず、子どもが自分で決断し、失敗から学び、自分で結論を出せるようにすることです。私たち大人も、多くことを試行錯誤から学んでいます。
目的を達成するまで試行錯誤を繰り返し挑戦することが、継続して論理的に考える基盤となるわけですが、諦めない姿勢の基盤となるのは、挑戦を支援してくれる環境です。
それがどのような小さいことであったとしても、また失敗を続けたとしても、子どもたちのやりたい気持ちを支えることが、親が家庭でできることです。
まとめ
論理的思考とは何か、なぜ子どもたちにとって論理的思考が重要なのか、また論理的思考はいつ頃から発達するのか、そしてどのような活動を通して論理的思考を鍛えることができるのかについてご説明しました。
日本では、子どもたちにとって必要な能力のひとつとして、その習得を目指して学校教育のなかに積極的に取り入れられています。
学校での取り組みもうまく活かし、子どもたちの負担になりすぎないように、家庭でもできることに取り組んでみることをお勧めいたします。