子どもの思考力

子どものメタ認知能力を伸ばすためには?

社会に出るとよく「物事を客観視することが大切」などと聞きますが、これは子どもにとっても同じことが言えます。友達と良好な関係を構築したり、習い事で上達したりする際にもメタ認知能力が役立ちます。

今回は、子どもがメタ認知能力を鍛えるメリットや、伸ばすためにどのようなサポートができるかについて解説します。

メタ認知能力とは?

メタ認知って何のこと?と思う人もいるかもしれません。簡単に言うと、自分の考え方や行動を客観的に理解し、うまくコントロールすることです。

例えば、目の前で起こっている問題を解決する時に「もしかして、自分のやり方は間違っているかな?」と自分の行動や考え方を他人の目線からチェックすること、これらがメタ認知の一部です。


メタ認知が上手な人は、自分が何をどう学ぶべきかをよく知っていて、困った時にどう解決すればよいかがわかります。学校の勉強だけでなく、人間関係のトラブルが発生した時にも、このメタ認知はとても役に立ちます。

子どものメタ認知能力を伸ばすメリットとは

メタ認知能力を伸ばすことで、子どもたちの学習方法、問題解決能力、感情のコントロールなど多方面にわたるメリットがあります。以下では、それぞれのメリットについて解説します。

問題解決能力が高まる

メタ認知能力の向上は、子どもの問題解決能力において重要です。目の前の問題を解決するときには、「そもそも問題はどこにあるのかな?」「このやり方で大丈夫かな?」と考えたり、何かうまくいかないことがあった時に「どこが間違っているんだろう?」と自分で気づくことができます。

たとえば、ピアノを練習する時、ただ楽譜通りに弾くだけじゃなく、自分の演奏を聞いて「このメロディー、ちゃんと弾けてるかな?」「指の動きは正しいかな?」「先生だったらどう対応するのだろう」と考えることができます。

世の中で起こることに対する理解が深まる

メタ認知能力と物事に対する理解能力も密接に関わりがあります。

例えば、子どもが読んでいる物語の大切なポイントや、そのポイントの背景や根拠を理解する能力に直結します。

例えば子どもが「ごんぎつね」の話を読んでいても、この能力があると、ただストーリーを追うだけでなく、以下のように物語をさらに深く理解することができます。

ストーリーのポイントを見つける

「ごんぎつね」がどうしていたずらをするのかという物語の主要なポイントを理解します。

背景や根拠を理解する

ごんがいたずらをする理由や、その行動の背後にある感情を考えます。たとえば、「ごんはなぜ人間をだますのか?」「ごんは寂しいからいたずらをするのではないか?」といったことを考えるかもしれません。

物語の深い意味を考える

さらに、「ごんぎつね」の話からは、優しさや他者を理解することの難しさについての深い教訓を学ぶことができます。例えば、物語の終わりにごんが自分の善意を村人に理解されないまま命を落とす場面から「善意が必ずしも伝わらないことがある」という教訓を読み取ることができます。このような物語を通じて、子どもたちは他者を理解することや思いやりの難しさについて考えることができるでしょう。

このように、メタ認知能力があると、「ごんぎつね」の話の表面的な内容だけでなく、その深い意味や教訓を理解することができます。これは読書だけでなく、日常生活の中で様々な状況をより深く理解するのにも役立ちます。

勉強の効率性が上がる

勉強やスポーツで上達するためにも、

  • セルフモニタリング(自分の考え方や行動などを客観的に観察すること)
  • 学習習慣のセルフコントロール(問題を解決するために再度勉強・練習する必要があるか判断する)

が鍵になり、これらはメタ認知能力が重要になります。

たとえば、子どもが算数の問題を解いている場面を想像してみましょう。ここでのメタ認知能力の役割は以下のようになります。

セルフモニタリング

子どもは、自分が問題を正しく解けたかどうかを考えます。たとえば、「この計算で合っているかな?」「勉強方法は理にかなっているかな?」と自問自答しながら、自分の理解度をチェックします。

学習習慣のセルフコントロール

次に、子どもは自分の学習習慣を管理します。問題が間違っていた場合、「どこが間違っているのか」「なぜ間違えたのか」「どの部分をもう一度勉強すればいいか」などを自分自身で考え、対策を立てます。

効果的な学習方法の発見

また、メタ認知能力は効果的な学習方法を見つけ出すことにも役立ちます。たとえば、図を使って問題を解く方が理解しやすいことに気づくかもしれませんし、声に出して読んだり、友達と一緒に勉強したりする方が自分には合っていると気づくかもしれません。

このようにメタ認知を強化することで、さまざまな成績の向上に寄与していることが実証されています。

感情のコントロールができるようになる

子どもたちが友達と遊ぶ時や、学校で先生と話す時、おうちでお話をする時など、色々な場面で「メタ認知能力」を使っています。

たとえば、友達とおもちゃの取り合いでちょっと喧嘩になってしまった時も、このスキルが役立ちます。腹が立ったり泣きたくなったりするかもしれませんが、一度深呼吸をして、なぜ喧嘩になったのか、どうすれば仲良くできるか、なぜ自分は怒ってしまったのかなどを考えることができます。

そして、友達と話して解決する方法を見つけることができ、これによって、友達との関係もより良くなりますし、自分の気持ちのコントロールも上手になります。

これらの点を踏まえると、メタ認知能力を伸ばすことは、子どもたちの私生活において多くのメリットをもたらすと言えます。特に、問題解決能力、学習の効果、コミュニケーション能力、感情のコントロールなどの面で良い影響が期待できます。

参考:

Ader, E. (2019). What would you demand beyond mathematics? Teachers’ promotion of students’ self-regulated learning and metacognition. ZDM, 51, 613–624.

Escolano-Pérez, E., Herrero-Nivela, M. L., & Anguera, M. T. (2019). Preschool metacognitive skill assessment in order to promote educational sensitive response from mixed-methods approach: Complementarity of data analysis. Frontiers in Psychology, 10, 1298.

子どものメタ認知能力を伸ばす方法とは?

メタ認知能力と聞くと、複雑そうな能力に聞こえますが、身近な方法で伸ばすことができます。以下ではその一例を紹介します。

子どもをグループで遊ばせること

ピアジェの構成主義理論とヴィゴツキーの社会文化理論によると、子どもたちが周囲の人や環境とどのように関わるかが、子どものメタ認知の発達に大きな影響を与えるとされています。

メタ認知能力の向上は一人で本を読んだり、問題を解決したりする個人的な活動だけでなく、友達などと一緒に活動する際の対人関係の中でも起こると説明しています。

たとえば、グループで一緒に遊ぶ時には、他の子どもたちと意見を交わし、時に協力しながら新しいことを学んでいきます。例えば、学校で何かしらの出し物を班で取り組む場合、子どもたちはそれぞれの考えを出し合い、一緒に計画を立てる必要があります。

この過程で、自分の考えを表現し、他の子どもたちの意見を理解し、最終的には一つの解決策に合意するために協力することを学びます。

また、チームスポーツやゲームをするときも、ルールを理解し、戦略を立て、チームメートと協調することで、メタ認知能力が養われます。これらの経験は、子どもたちが自分自身と他人の思考や感情を理解し、それに基づいて行動を調整する能力を発達させます。

子どもたちが自分の頭で考え、学ぶために、大人がどのように適切に関わるべきかも重要です。具体的には、

  • 大人は子どもたちに質問を投げかけて考えさせる
  • 新しい経験の機会を提供する
  • 子どもが自分で答えを見つけるのを助ける

などの方法で、子どものメタ認知の発達をサポートできます。このように大人が適切に関わることで、子どもたちは自分の考えをより深く理解し、メタ認知スキルを育てることができるのです。

五感で学ぶことを重視する

メタ認知を伸ばすためには、子どもたちが触れたり、においをかいだり、音を聞いたりすることで、物事を学ぶ機会を与えることが重要です。これは五感を使って学ぶということです。たとえば、公園で植物を触れることで、植物に触れていると「なぜこの植物は何もしなくても生きていけるのか?」といった疑問を持ち始めるかもしれません。

目の前の植物だけではなく、自然の成り立ちなどを、目に見えている以外の世界についても考えることができます。

こうした疑問は、子どもたちが観察したことについて考え、それを理解しようとするメタ認知の一環です。このプロセスを通じて、子どもたちは自分がどのように学んでいるのか、どのように情報を処理しているのかを理解することができます。

親による好奇心の刺激とメタ認知能力の養成

子どもたちは生まれつき好奇心が強く、周囲の世界について学びたいという欲求があります。

親はこの好奇心を活かすためにも、子どもが自由に探求できる環境を整えることが重要であり、これによってメタ認知能力の発達を促進できます。

親が「なぜ空は青いの?」や「植物はどうやって成長するの?」といった質問をし、子どもに考えさせてみてもよいかもしれません。こうした質問は、子どもが自分で考え、調査し、答えを見つける過程を通じて、自分の思考をより深く掘り下げることを促します。

また、子どもが疑問をすぐに調べられるように環境を整えてあげましょう。

このように、親との会話を通じて様々なトピックで話して学ぶことは、子どもの言語理解力やメタ認知能力を高めるのに役立ちます。

まとめ

子どもたちのメタ認知能力を育てることは、子どもたちが勉強や習い事を上達させる上で不可欠です。

親がメタ認知について理解し、適切にサポートすることで、子どもたちはより自立して学習するようになり、自分自身の思考と行動をより深く理解する人へと成長するでしょう。

ABOUT ME
この記事の監修者 - 井上 顕滋
31年の経営者経験を持ち、主に教育系メディア事業、人材育成企業、子どもの非認知能力強化プログラム「Five Keys」を運営する財団法人、飲食事業などを経営。 人材育成のキャリアは社員教育からスタートし、成果を上げる中で多くの経営者から問い合わせが増加し、2004年に人材育成企業「リザルトデザイン」を設立。 クライアントの業績に大きく貢献する中で、社員の成果には個人差があることを痛感し、その原因を解明するため、世界的権威である研究者および実践者から最新の心理学と脳科学および「人の心に変化を生み出す最先端技術」を徹底的に学び、実践を重ねた結果、成果とモチベーションの向上を可能にするリザルトプログラムを開発。 また上記「成果の個人差」の真因と、満足度の高い充実した人生を送れるかどうかの鍵が、幼少期(12歳まで)の「親の関わり方」と「与える教育」にあることを発見し、親への教育講座を開催。
子育てのとびら編集部
明日から実践できる子育てに役立つ情報を発信していまいります。