子どもの思考力

子どものフレームワーク思考を鍛えるための方法とは

「AIなどが当たり前になるこれからの時代、どのようなスキルが求められるのか」と悩む方も多くいらっしゃいます。このような時代において、新しいアイディアを生み出したり、複雑な課題を解決する能力がより重宝されるようになり、その一つに「フレームワーク思考」が挙げられます。

今回の記事では、子どもが社会人になり、仕事などでも役に立つフレームワーク思考について解説します。

フレームワーク思考とは

著書「地頭力を鍛える」によると、フレームワーク思考とは「全体から考える」思考方法のことです。より具体的に説明すると、課題の全体像を捉えて、それぞれの要素や課題に分解していく力のことを指し、いわば全体把握力(ビッグピクチャーシンキング)や分解力とも言えます。

この考え方は、子どもの学習にも活かせます。例えば、勉強という大きなテーマを、国語・算数・理科・社会といった教科に分け、さらに国語なら語彙力・漢字・読解力・文章力といった要素に分解していきます。このように整理することで、何を学ぶべきかが明確になり、学習計画も立てやすくなるでしょう。

例えば、友だちとのトラブルが発生したとき、その課題の全体像を捉えることで問題を解決しやすくなります。「友人は何に怒っているのか」「なぜトラブルが起こったのか」「どの部分が問題だったのか」を考えることで、友だちとの関係をよりスムーズに修復する手助けとなります。

また著書によれば、フレームワーク思考は新しいアイディアを生み出す際にも役立つと考えられています。

なぜ今フレームワーク思考が求められているのか

これからの変化の激しい時代において、ビジネスの環境における新陳代謝のサイクルがより早くなっています。過去に主流だったビジネスは時代とともに古いものに変わり、新しい事業が次々と生まれています。またAIなどの新しいテクノロジーの台頭により、常に新しい事業を作り続ける必要があります。

しかし、パーソル総合研究所の調査によれば、新規事業に取り組む企業の課題感として、「新規事業開発人材の確保」が挙げられます。日本の労働市場において、新しいアイディアを生み出す人材はこれからより重宝されると考えられます。

また多くの事業を世の中に生み出しているリクルート社では重要視するスキルの中に「見立てる」が含まれており、以下のように定義しています。

見立てるとは

  • 構造で捉え俯瞰して見るカ:本当に解くべき問題は何かを事実をもとに多角的に体系立てて考えるカ
  • 分析的に捉え問題を特定する力:現状を定量的に分析し、問題の原因を特定する力

参考:リクルート「働く環境を知る人事制度・仕組み」

これは先ほど説明した「全体を捉えて分解する」、フレームワーク思考に近しいスキル要素であり、社会に出るとより求められるようになります。

参考:企業の新規事業開発における組織・人材要因に関する調査

子どもがフレームワーク思考を鍛えることのメリットとは

先ほど紹介した著書によれば、フレームワーク思考には以下のようなメリットがあります。

思考の癖なく考えることができる

フレームワークを用いて考えることのメリットは「思考の癖」を取り払うことです。人は物事を考えるときに、過去の経験や今持っている知識から思考する癖がついています。

例えば、AくんとBくんが「休み時間に体育館の入り口で集合しよう」と約束しました。しかし、体育館には東側と西側に入り口があり、Aくんは東側の入り口に行き、Bくんは西側の入り口に行ってしまい、なかなか会えませんでした。これは二人とも「体育館の入り口といったらあそこしかない」と無意識に思い込み、集合してしまったためです。

フレームワーク思考を使って考えると、まず「体育館の全体像」を把握し、「入り口が複数あること」を考慮します。そして、「どの入り口に集合するか」を具体的に決めることで、混乱を避けることができます。

常に物事の全体を地図のようにイメージするフレームワーク思考があれば、このような事態も避けることができるでしょう。

適切なコミュニケーションに役立つ

上記のように、思考の癖や思い込みを持ったまま、コミュニケーションをとると、会話の中で誤解が生まれる可能性があります。他者と的確に意思疎通を図るためにも、相手と同じ視点を持つことが大事になります。

例えば、子どもが友達に算数の問題の解き方を教えるとき、自分だけがわかる説明の仕方だと、友達は理解できないかもしれません。

フレームワーク思考があれば「どこで友達がつまずいているのか」を理解し、そのポイントを細かく分解することができます。例えば子どもが図を使ったり、ゆっくり順番に説明することで、友達がつまずいている部分を解決しやすくなり、よりわかりやすく教えることができるでしょう。

周りにいる説明が上手な人も、複雑な物事を絵や図でわかりやすく説明することが多いのではないでしょうか。

人に複雑な物事を分解して説明するためにフレームワーク思考を使っており、そのような方はコミュニケーション能力も高いとされています。

また全体像を捉えられる人は、話の全体像を見せることができるので、聞く側にとっても話を聞きやすいといったメリットがあります。

家庭で実践できるフレームワーク思考を鍛えるための方法

フレームワーク思考力は大きく「全体俯瞰力」と、「分解力」に分けられます。これらの要素を伸ばすために、家庭でできることについて解説します。

子どもに家庭内の課題の解決をさせてみる

全体俯瞰力を鍛えるためには子どもに対して、家族内で起きている困りごとを解決させたり、計画を立てる機会を作ることが効果的でしょう。

例えば、家族で旅行の計画を立てる時、「次の旅行、どうやって現地まで行こうか?」と考えさせてみるのもよいかもしれません。子どもは、そこで「車でいいじゃん」と答えるかもしれませんが、「車もいいけど、〇〇県だと車で行くのはちょっと難しいかも」と会話しながら、決めていくのがよいでしょう。

また実際に以下のような図に分解して、一緒に考えていくことで、子どもが「全体を捉えて課題を分解する力」と「相手と同じ視点で考える力」を習得することが期待できます。

このように家族での旅行の計画を立てる際に、子どもにも考えさせることで、直面する問題やその原因を把握しながら計画する力を伸ばすことができるでしょう。

必要な情報は何かを考えさせる

問題をより深く理解するために必要な情報を見極める能力を伸ばす必要があります。先ほどの例では「何が原因で交通手段を決められないのか」を会話の流れで教えてあげるのもよいかもしれません。

例えば「車もいいけど、遠いところまで行くとなると、運転が大変なんだよね。」と伝えると、子どもは「移動時間」が問題だと考え、「じゃあ電車は?車だと3時間だけど、電車だと1時間で行けるよ」と情報収集を始めるでしょう。「5人で行くと費用は高くならないかな?」と質問して、またその情報を収集して、徐々に悩みのボトルネックを解消させましょう。

解決策を考える

問題を特定し、情報収集がある程度進んだ際に、解決策を一緒に考えましょう。「色々調べてみると、車で行くよりも電車の方が楽になりそうだね。電車代もガソリン代とそこまで変わらないね。」と会話をしながら具体的な解決策を決めていきましょう。

この一連の流れで、全体を俯瞰して問題を捉えて、その課題のボトルネックを一つずつ解決していく作業は将来社会人になっても役立つスキルと言えます。

参考:Assessing Systems Thinking Through Complex Scenario-Based Tasks

まとめ

「問題の全体像を把握する力」やそれを「分解する力」は今後より重要になります。フレームワーク思考を習得することで、よりスムーズに問題を解決できるようになるでしょう。

またフレームワーク思考は家庭でも実践できるので、家庭のあらゆる問題を「分解」して子供と一緒に課題解決を体験してみてください。

ABOUT ME
この記事の監修者 - 井上 顕滋
31年の経営者経験を持ち、主に教育系メディア事業、人材育成企業、子どもの非認知能力強化プログラム「Five Keys」を運営する財団法人、飲食事業などを経営。 人材育成のキャリアは社員教育からスタートし、成果を上げる中で多くの経営者から問い合わせが増加し、2004年に人材育成企業「リザルトデザイン」を設立。 クライアントの業績に大きく貢献する中で、社員の成果には個人差があることを痛感し、その原因を解明するため、世界的権威である研究者および実践者から最新の心理学と脳科学および「人の心に変化を生み出す最先端技術」を徹底的に学び、実践を重ねた結果、成果とモチベーションの向上を可能にするリザルトプログラムを開発。 また上記「成果の個人差」の真因と、満足度の高い充実した人生を送れるかどうかの鍵が、幼少期(12歳まで)の「親の関わり方」と「与える教育」にあることを発見し、親への教育講座を開催。
子育てのとびら編集部
明日から実践できる子育てに役立つ情報を発信していまいります。