子どもの思考力

子どもの地頭のよさはどうやって伸ばす?地頭を構成する3つの思考力について解説

「地頭がよい」というのは、テストの点数や学校の成績が優秀な意味とは違い、一般的には知的な能力や思考力が優れていることを指す言葉です。

地頭の良さは、情報を素早く理解し、論理的に考える能力や問題解決能力に関連しています。子どもの将来の可能性を広げるためにも、地頭は鍛えたいものです。本記事では地頭について理解を深め、子どもの地頭を鍛えるために必要なことをお伝えします。

「地頭」とは、考えるために基本となる力

「地頭」という言葉は元々コンサルティング業界や人事業界などのビジネスの世界においてよく使われている言葉でした。最近では「あの子、地頭がいいよね」と日常の会話でも使われるようになるなど、地頭という言葉は広く認識されています。

しかし、「地頭力って具体的にどんな力?」と聞かれてもうまく説明するのが難しいのではないでしょうか。

「地頭」という言葉はなんとなく「理解が早い」「考える力がある」とざっくりとしたイメージで使われていることがほとんどのため、それが具体的に何を指すものなのかは意外と知られていません。

多くのビジネスパーソンに読まれているベストセラー「地頭を鍛える」の筆者でもあり、ビジネスコンサルタントとして多くの企業の課題解決や業務改善を担ってきた細谷氏は地頭は考えるための基本となる力と定義しており、主に以下の3つの思考力で構成されていると述べています。

これらの思考力を鍛えることで、いわば「地頭がよい」につながると考えられています。

参考:「地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」」細谷 功 

「地頭が良い」と他の「頭が良い」の違いとは

頭がよいと聞くと、以下の「頭の良さ」をイメージするかと思います。

物知り

例えば、クイズ番組などでよく見ますが、幅広い知識を持っている人で、何を聞いても答えられるような人です。このような人は記憶力が優れており、このような方に対しても「頭がいい」と感じることがよくあると思います。

機転が効く

人の感情や反応に応じて、素早く対応できる人も「機転が効いて頭がいい人だ」という印象があります。このような方はコミュニケーション能力が高く、他人の気持ちに応じて最適な対応を取れるので、優秀な営業マンに多いのではないでしょうか。

これらの「頭のよさ」は社会に出る上で、重要なスキルになりますが、特に「地頭力」というのは、上記の2つとは違い、「未知の領域の問題解決能力」という点で重要なスキルになります。

子どもの地頭を鍛えることはなぜ重要なのか?

現在では、Googleなどの検索エンジンで求める情報をすぐに獲得できるようになり、またSNSなどではインフルエンサーの考え方や意見も簡単に見聞きできるようになりました。

細谷氏の著書によれば、このような状況は「情報への過度な依存」を引き起こすリスクがあると指摘しています。

思考停止状態で情報を鵜呑みにしたり、インターネットで得た情報をそのまま「コピペ」するように自分の知識にすることにより、たちまち考える能力は退化するとされています。

そのため、考える力がない人は将来的にAIに取って代わられるリスクがあると考えられています。

しかし、地頭力を鍛えることで、情報収集しながら自分で考え、本質を見極めることができるので、変化の激しい時代においても、活躍できる人材になることが期待できます。

地頭を構成する3つの構成要素について

先ほど、地頭は仮説思考力、フレームワーク思考力、抽象化思考力の3つの思考力から構成されていると説明しました。以下では、より理解を深めるために、上記の3つの思考力の特徴について説明します。

仮説思考力=結論から考える力

仮説思考力はわかりやすくいうと、目の前で起きている状況から情報収集し、「もしかしてこうじゃないか?」と結論を先に考え、情報収集や検証を繰り返し、その仮説が正しいかを確かめる思考力です。

子どもが仮説思考力を持っている場合、以下のようなことができるようになります。

具体例

おもちゃやゲームが動かないときに、「もしかしたら電池切れかもしれない」などと原因について仮説を立て、どのように直すかを考え、自分で修理できると判断した際は適切な道具を使って試行錯誤する

フレームワーク思考力 = 全体から考える力

フレームワークはいわば大きな問題を小さな問題に小分けにして、原因となっている箇所を特定する思考力です。子どもがフレームワーク思考力を持っている場合、以下のようなことができるようになります。

具体例

「英語の文章を読めるようになりたい」と考えた子どもが、英文をすらすらと読めない原因を分解すると、英語の読解力には「文法」と「語彙力」が大きな要因になっていることがわかった。文法はある程度理解しているので、語彙力から着手し、結果として英語力が向上した。

抽象化思考力 = 単純化して考える力

抽象化思考力は、1を聞いて10を知るように、限られた知識を広い範囲で使うための思考力です。子どもが抽象化思考力を持っている場合、以下のようなことができるようになります。

具体例

サッカーでボールの真ん中を捉えて蹴れば、まっすぐにボールが飛ぶことを習った。このボールの動きは体育の授業で習う野球やバレーボールでも活かせそうだな。

このように地頭の3つの構成要素は、子どもの学習面などにメリットを与えるだけではなく、社会人になってからも重要視されるスキルです。

地頭を構成する3つの思考力を鍛えるためには

先ほど紹介した地頭を構成する3つの要素を鍛えるための方法について紹介します。

仮説思考力を育成する方法

仮説思考力を育成するためには、目の前で起きている物事に対して自分なりに考えることが重要です。これは、「おそらくこうではないだろうか」「こうしたら良くなるのではないだろうか」といった仮説を立てることを意味しており、科学的探究心とも言い換えられます。

テンプル大学の研究によれば、仮説思考力と深く相関する科学的探究心を鍛えるためには、以下の要素が重要とされています。

  • 子どもの好奇心に真剣に向き合い、興味や疑問に積極的に応える
  • 子どもに体験を通じた学びの機会を提供する
  • 子どもに自然界などで起こる不思議な現象を解明させるように促す

参考:Jirout, J., & Klahr, D. (2012). Children’s scientific curiosity: In search of an operational definition of an elusive concept. https://doi.org/10.1016/j.dr.2012.04.002

フレームワーク思考を育成する方法

フレームワーク思考に近しいものに、システム思考があります。システム思考は物事(課題)の全体像を捉え、さまざまな要素に分解したうえで、最も効果的な解決法へ向かう思考のことです。

バージニア工科大学の研究によれば、システム思考を伸ばすためには以下のポイントが重要とされています。ポイントごとに親の適切な関わり方についても解説します。

  • 子どもに家庭内の課題の解決をさせてみる
  • 必要な情報は何かを考えさせる
  • 解決策を考える

参考:Grohs, J. R., Kirk, G. R., Soledad, M. M., & Knight, D. B. (2018). Assessing systems thinking: A tool to measure complex reasoning through ill-structured problems.https://doi.org/10.1016/j.tsc.2018.03.003

抽象化思考力を育成する方法

抽象化思考力は近い言葉にアナロジー思考というものがあります。「アナロジー思考」の著者でもある細谷氏は、著書においてアナロジー思考を鍛えるためには以下のツールを使うことで抽象化思考、およびアナロジー思考を鍛えると述べています。

  • IQパズルや謎解きゲーム
  • 「すぐに役に立つ」本とは異なる内容の本を読む
  • 抽象的な本を読んで周囲の経験と結びつける

参考:Grohs, J. R., Kirk, G. R., Soledad, M. M., & Knight, D. B. (2018). Assessing systems thinking: A tool to measure complex reasoning through ill-structured problems.https://doi.org/10.1016/j.tsc.2018.03.003

まとめ

地頭のよい子どもは、仮説思考力・フレームワーク思考力・抽象化思考力が養われています。

そのためには、子どもが生来持つ知的好奇心を尊重し、刺激する体験や実験の機会を用意することが重要です。

親も積極的に関わり、子どもの思考力を引き出すサポートをすることで地頭がより鍛えられていきます。適切な関わりや環境を用意して、子どもの未来の可能性を広げていきましょう。

ABOUT ME
この記事の監修者 - 井上 顕滋
31年の経営者経験を持ち、主に教育系メディア事業、人材育成企業、子どもの非認知能力強化プログラム「Five Keys」を運営する財団法人、飲食事業などを経営。 人材育成のキャリアは社員教育からスタートし、成果を上げる中で多くの経営者から問い合わせが増加し、2004年に人材育成企業「リザルトデザイン」を設立。 クライアントの業績に大きく貢献する中で、社員の成果には個人差があることを痛感し、その原因を解明するため、世界的権威である研究者および実践者から最新の心理学と脳科学および「人の心に変化を生み出す最先端技術」を徹底的に学び、実践を重ねた結果、成果とモチベーションの向上を可能にするリザルトプログラムを開発。 また上記「成果の個人差」の真因と、満足度の高い充実した人生を送れるかどうかの鍵が、幼少期(12歳まで)の「親の関わり方」と「与える教育」にあることを発見し、親への教育講座を開催。
子育てのとびら編集部
明日から実践できる子育てに役立つ情報を発信していまいります。