子どもの思考力

好奇心が高い子どもを育てるためには?

子どもには、好きなことに一生懸命になってほしいと思う親は多いものの、「子どもがあまり新しいことに関心を持たない」と、子どもの好奇心が弱いことに悩む方もいらっしゃるかと思います。

今回は、子どもの好奇心はどのようにして伸ばすことができるのかについて、心理学の観点から解説します。

好奇心はこれからの時代にも重要になる

「好奇心」は日頃よく使う言葉ですが、簡単にいえば、何かに興味を持ち、「もっと知りたいな」と思う心理状況のことを指します。この好奇心がこれからの時代に、より重要になります。

CCRという教育課程の再設計を推進する国際的な団体によると、「21世紀に生き抜くために必要なスキル」を以下の3つのカテゴリーに分けて考えています。

  • 頭で考えるスキル(認知スキル):「物事を深く考える力」や「問題を解決する力」、さらに「新しいものを生み出す力」など
  • 人と関わるスキル(社会的スキル):「人と話す力」や「チームで働く力」、「リーダーシップ」など
  • 体をうまく使うスキル(運動技能):「体の動きをコントロールする力」や「空間を理解する力」など

上記で挙げた中に、頭で考えるスキルや人と話すスキルなどが含まれていますが、それらは「もっと知りたい」という好奇心が土台になります。

では、好奇心は後からでも伸ばすことができるのかと思う方もいらっしゃるでしょう。

バージニア大学の研究によると、子どもたちは生まれつき好奇心を持っていると言われています。しかし、子どもに対する関わり方によって、その好奇心は大きく変わることもあります。

例えば、子どもたちが未知のものに挑戦するとき、それを快く受け入れてあげることで好奇心を育てることができます。またその逆のことをしてしまうと、好奇心の成長を妨げる可能性があります。

以下では具体的にどのような行動が子どもの好奇心を妨げるのかについて解説します。

参考:

Psychomotor Skills for the 21st Century: What should students learn?
人材像WG参考資料集

子どもの好奇心の成長を阻害する要因

子どもの好奇心の成長は、他人の行動によって阻まれることがあります。今回は好奇心を阻む可能性がある原因を3つ紹介します。

「他人から否定されるかも」という恐怖心

バージニア大学の研究によると、子どもが「自分や他人から否定されるかも」と、チャレンジすることを怖がると、好奇心の成長が妨げられる可能性があると言われています。

例えば子どもたちは、新しいことを始めるとき、「うまくできなかったらみんなに笑われるかも」、「親に叱られるかも」という恐怖心があると、子どもは新しいことにチャレンジするのを躊躇ってしまいます。

親として大切なのは、子どもが自分自身を信じて新しいことにチャレンジできる環境を作ることです。

たとえば、子どもが何かに挑戦して失敗したときも、「大丈夫、失敗は成功のもとだよ」と励ましてあげることです。また、「他人が何と言おうと、挑戦することは素晴らしいことだよ」と伝えることも大切です。

これにより、子どもは「自分がどうしようと、周りの人々は自分を否定しない」という安心感を持つことができ、好奇心を育むことができます。

疑問を解決するための情報にアクセスできない

子どもたちが新しいことに疑問を持ったときに、疑問を解消するための情報にアクセスできない場合、好奇心を阻む可能性があります。

例えば、子どもが「なんで空は青いの?」と聞いたとき、その答えを教えられない、または調べられない場合、子どもが「さらに知りたい」という好奇心を満たせない状況が生まれてしまいます。

つまり、「なんで?」「どうして?」という子どもの質問に答えられる情報が常にあることが重要です。

「外発的動機付け」で好奇心を育てようとする

「自分から進んで学びたい」という気持ちを「内発的動機付け」と言いますが、この気持ちを育てるのには、子どもへの関わり方が大切になります。

カリフォルニア州大学の研究によると、外発動機付け、例えば「ご褒美をあげる」「罰を与える」といった方法は実は逆効果だということがわかっています。

ご褒美で釣ることによって、逆に子どもが「自分から学びたい」という気持ちを抑えてしまうからです。子どもの好奇心を育てるためには、子どもが自分から進んで学びたいと思えるような環境を作ることが大切です。

参考:

Supporting Early Scientific Thinking Through Curiosity

Continuity of Academic Intrinsic Motivation From Childhood Through Late Adolescence: A Longitudinal Study

子どもの好奇心を伸ばすために親ができるサポート

親としてどうすれば子どもたちの好奇心を育てることができるか、それについて解説します。

親自身が好奇心を持つ

先ほど紹介したバージニア大学の研究によれば、親自身が好奇心を示すことが、子どもの好奇心の育成に大切と指摘されています。

たとえば、親が新しいレシピに挑戦したり、庭に新しい花を植えてみたり、新しい趣味に取り組んだりする様子を、子どもに見せることが大切です。

また、子どもが何か新しいことに挑戦する際には、親自身が一緒になってその挑戦をサポートすることも大切です。

もし子どもが初めて自転車の練習に挑戦している場合、すぐに乗れなくても大丈夫だと励ましたり、挑戦している勇気を称えてあげてください。そうすることで、新しい経験に対する子どもの不安を和らげることができます。

子どもが疑問を解決できる状況を作る

子どもが好奇心を持つためには、必要な情報にアクセスできることも重要です。たとえば、子どもが興味を持った分野についての本を提供したり、質問に答えたりすることで、子どもの好奇心を満たすことができます。

例えば、もし子どもが恐竜について興味を持っている場合、図書館から恐竜についての本を借りてくるか、インターネットで関連する情報を探すように促しましょう。恐竜の図鑑を見せたり、化石の写真を探したりすることで、子どもの興味を深め、学びを広げることができます。

また、子どもからの質問に対しては、自分が知らないことも正直に伝え、一緒に答えを探す時間を作りましょう。何か新しいことに遭遇したときに、自発的に親から質問したり、情報を探す習慣を身につけることができます。

内発的動機付けを意識する

カリフォルニア州大学の研究によると、

  • 子どもが自分で問題を解決すること
  • 興味を持った分野を調査すること
  • 親が子どもの成長や進歩を褒めること

これら全てが子どもの好奇心を育てるのに役立つということがわかっています。

先ほども説明しましたが、子どもが何かに興味を持ったら、図書館に行ったり、インターネットで情報を探したりすることで、子どもの学びの好奇心を刺激することができます。

子どもが学んだことや成長したことを見逃さないことも大切です。新しいことを覚えたら、その努力を見て、「よくできたね」や「一生懸命に頑張っているね」という言葉で成長を称賛しましょう。これにより、子どもは自分の進歩を認識し、さらに探求心を育むことができます。

最後に、子どもが自分自身でアイデアを出し、それを実現することも大切です。子どもが自分で考え、行動することを通じて、子ども自身の好奇心や探求心を養うことができます。

たとえば、子どもが自分で作りたいと思った工作のアイデアがあれば、材料を一緒に準備し、作る過程を見守りましょう。自分の思いついたことを形にする経験は、子どもの創造性と好奇心を育むのに大いに役立ちます。

参考

Supporting Early Scientific Thinking Through Curiosity

Continuity of Academic Intrinsic Motivation From Childhood Through Late Adolescence: A Longitudinal Study

A Curious Mind

まとめ

親として子どもの好奇心を育てるためには、自身が好奇心を持つこと、子どもの挑戦をサポートすること、必要な情報やリソースを提供すること、そして子どもの自発的な学びを促すことが重要と言えます。

今回の記事が子どもの好奇心に悩んでいる方のお役に立てれば幸いです。

ABOUT ME
この記事の監修者 - 井上 顕滋
31年の経営者経験を持ち、主に教育系メディア事業、人材育成企業、子どもの非認知能力強化プログラム「Five Keys」を運営する財団法人、飲食事業などを経営。 人材育成のキャリアは社員教育からスタートし、成果を上げる中で多くの経営者から問い合わせが増加し、2004年に人材育成企業「リザルトデザイン」を設立。 クライアントの業績に大きく貢献する中で、社員の成果には個人差があることを痛感し、その原因を解明するため、世界的権威である研究者および実践者から最新の心理学と脳科学および「人の心に変化を生み出す最先端技術」を徹底的に学び、実践を重ねた結果、成果とモチベーションの向上を可能にするリザルトプログラムを開発。 また上記「成果の個人差」の真因と、満足度の高い充実した人生を送れるかどうかの鍵が、幼少期(12歳まで)の「親の関わり方」と「与える教育」にあることを発見し、親への教育講座を開催。
子育てのとびら編集部
明日から実践できる子育てに役立つ情報を発信していまいります。