子どもの思考力

なぜ子どもに思考力が重要?AI時代に思考力が求められる理由について解説

子どもたちに思考力を身につけさせることが重要だと耳にするようになりました。

2020年からスタートした小学校の新しい学習指導要領でも、変化の激しい時代において、子どもたちが生きる力を育むために、子どもたちに基礎的な知識と技能を習得させるとともに、思考力、判断力、表現力などの能力を育み、学習に取り組む態度を養うことに重点が置かれています。

しかし、「思考力を身につけさせる」と一概に言っても、なぜ思考力がこれまで以上に重要になったのかを知らない方も多いかと思います。この記事では、思考力が求められる時代背景、思考力を育むために必要なことなどについて解説します。

なぜ今後思考力が求められるのか

政府は今後「考え抜く力」の教育にフォーカスする

上記で説明したように遠くない未来、AIに取って代わられる職業が多くなると言われています。AIが得意なのは、指示通りに動いたり、数字の確認をしたり、ミスなく作業をしたり、答えがある問題を解いたりすることです。

また経産省やそのようなAI時代や人生100年時代を見越して、人生100年時代の社会人基礎力を公表しており、その中に考え抜く力が設定されています。

今の子どもたちの半分ほどが100歳以上生きるといわれています。そのような長い人生の間でテクノロジーは進歩し続け、現在当たり前であることが将来的にはそうではなくなる未来が到来します。

80%の職業がAIに影響を受ける

例えば、最近ニュースでよく見かけるChatGPTなどのAIツールの登場により、以下のような職業に影響をもたらすと考えられています。

ChatGPTの開発を行っているOpenAIとペンシルバニア大学の研究者によると、米国の全職業の80%がAIの影響を受けると発表しています。

特に影響を受ける仕事は賃金が高い傾向にあると公表しており、これまで専門職として捉えられていた業務のあり方が変わるという見立てがあります。

例えば以下のような業務が影響を受ける業務として挙げられています。

  • 数学者
  • 税務申告書作成者
  • 作家
  • ウェブデザイナー
  • 会計士
  • ジャーナリスト
  • 法務秘書
  • 通訳・翻訳など

またこの研究によれば、

  • ルーティン業務のような反復的なタスク
  • シンプルな情報収集やデータ入力

などの仕事に従事する労働者は、AIなどの技術による労働力の置き換えのリスクが高いとされています。

参考:GPTs are GPTs: An Early Look at the Labor Market Impact Potential of Large Language Models

「正確性」から「創造性」へ

このように技術の進化とともに社会から求められるスキルなども変化していきます。

例えば、これまでは情報収集やデータ入力に正確さを求められていたかもしれません。管理表の決まった場所に決まったデータを入力する業務があった場合に、ミスなく仕事を完成させる方が「優秀」とみなされていたと思います。

しかし、そのような仕事はAIがより正確に、より早く完成させてしまうため、正確に仕事ができることが必ずしも優秀さに直結しない時代が来ると考えられています。

ケンブリッジ大学の研究によると逆にAIが苦手とし、人間が得意とする能力について次のように説明しています。例えば人間は、少ない経験からも多くのことを学び、経験や得た情報から対策などを考えることができます。

また人間は経験などから未来を予測したり、計画を立てたり、対策することができます。しかし、これらの能力を完全にAIで完全自動化するのは難しいとされています。

参考:Lake, B. M., Ullman, T. D., Tenenbaum, J. B., & Gershman, S. J. (2016). Building machines that learn and think like people. Behavioral and Brain Sciences. Cambridge University Press. Published online: 24 November 2016.

思考力の中でも創造力、問題発見能力が求められる

このような時代に求められているのが、思考力であり、考え抜く力でもあります。さらに具体的にいえば、価値を生み出すための創造力や改善するための問題発見力が求められる時代になります。

総務省が実施した「人工知能(AI)の普及に求められる人材と必要な能力」に関する有識者アンケートでは、人工知能(AI)の活用が一般化する時代における重要な能力として、

  • 「チャレンジ精神や主体性、行動力、洞察力などの人間的資質」
  • 「企画発想力や創造性」

を挙げる人が多かったと発表しています。

この企画発想力はいいかえれば、課題の本質を見抜き、それを解決するための方法を発想する能力のことをいいます。また創造性は何らかの新しい価値を考えたり、生み出す力のことをさします。

時代が変わりつつあることを理解し、子どもにどのような機会を提供し、コミュニケーションを取るべきか、改めて考えるタイミングでもあります。

今テクノロジーはどれくらい進化しているのかを知るために、実際に親自身がニュースでよく耳にするChatGPTなどのツールを使ってみて、時代の変化を肌で感じることも重要かもしれません。

参考:総務省|第1部 特集 IoT・ビッグデータ・AI~ネットワークとデータが創造する新たな価値~

親のサポートで子どもの思考力は向上する

  • 「子どもの思考などは遺伝的なものではないか?」
  • 「練習次第で何とかなるものなの?」

と疑問に思う方もいるかと思いますが、子どもの思考力はサポート次第で向上することができます。例えば、スポーツや遊び、読書なども思考力によい影響を与えると考えられています。

思考力を向上させる方法があるものの、それらを効果的に実施するためには親のサポートが重要です。例えば、子どもに読書を習慣づけてほしいと思っても、「読書しなさい」というだけではなかなか定着しません。

スポーツや習い事でもそうですが、子どもが心からやりたいと思うことを把握し、その上で取り組みやすい環境を整えてあげることが重要です。

何事もスキルを向上させるためには、継続が重要になり、継続させるためには、子ども本人が「楽しい」と思って続けられるものを提供するとよいでしょう。そのために子どもの意見やニーズを傾聴することから始めましょう。

まとめ

今回は思考力がなぜ今後求められるかについて解説しました。2023年に突入し、AIの驚くべき進化に多くの人が衝撃を受けた年でもあります。

このように人間が予測できない速さで時代の当たり前は変わっていきます。それにともない求められるスキルや資質が変わる中で、常に考え抜く思考力は今後より重要性を増すでしょう。

子育てのとびらでは、そのような子どもの思考力を育てるお役立ち情報も公開しておりますので、ぜひ参考にしてみてください。

ABOUT ME
この記事の監修者 - 井上 顕滋
31年の経営者経験を持ち、主に教育系メディア事業、人材育成企業、子どもの非認知能力強化プログラム「Five Keys」を運営する財団法人、飲食事業などを経営。 人材育成のキャリアは社員教育からスタートし、成果を上げる中で多くの経営者から問い合わせが増加し、2004年に人材育成企業「リザルトデザイン」を設立。 クライアントの業績に大きく貢献する中で、社員の成果には個人差があることを痛感し、その原因を解明するため、世界的権威である研究者および実践者から最新の心理学と脳科学および「人の心に変化を生み出す最先端技術」を徹底的に学び、実践を重ねた結果、成果とモチベーションの向上を可能にするリザルトプログラムを開発。 また上記「成果の個人差」の真因と、満足度の高い充実した人生を送れるかどうかの鍵が、幼少期(12歳まで)の「親の関わり方」と「与える教育」にあることを発見し、親への教育講座を開催。
子育てのとびら編集部
明日から実践できる子育てに役立つ情報を発信していまいります。