子どもの目標達成スキル

子どもの「やさしさ」を伸ばすポイントとは | 今の時代、なぜ優しさが必要?

やさしい子どもに育って欲しいと願う気持ちはほとんどの親が持っている想いでもありますが、「他人にやさしくしなさい」と子どもに言っても変わるものではありません。

やさしさは良好な人間関係を構築し、社会に貢献するために必要不可欠な要素です。この記事では、親が取り組むべきやさしさの育成方法や、やさしい子どもを育てることがもたらすメリット、具体的な親の行動、そして叱り方について紹介します。

チームワークが重要である時代に求められる「やさしさ」

「人生100年時代」や「第四次産業革命」の下で経産省が発表している社会人基礎力はより重要になっています。社会人基礎力の中に定義されている「チームで働く力」があり、具体的に以下の能力を定義しています。

協業力、ネットワーキング行動、多様な人たちとの繋がり、パートナー力、相手との壁を越えて多様性を活かす対話力、人間関係資本、関係構築能力、異文化集団に飛び込み(混
沌、未知、異文化を受け入れ)信頼を勝ち得る(周囲を巻き込む)力

人生100年時代の社会人基礎力について

これらの能力を養うためには、その基礎となる「やさしさ」を育む必要があります。やさしさを育み、相手を尊重する習慣を身につけることで、社会人になっても他者と協力できる人へ成長することが期待できます。

 「やさしさ」は人間関係における潤滑油

カリフォルニア州立大学の研究によれば、親切な行為をする学生は同級生からの受容性が高まることがわかりました。これは他人から好意的に受け入れられ、人間関係が円滑に進み、人々とのコミュニケーションがより良好になることを示唆しています。

また同級生からの受容性が高まることにより、いじめのリスクを減らすことがわかっており、やさしさを持って他人と接することで、多くのメリットを享受することができます。

このようなやさしさは社会人になってからも重要です。先ほど紹介した多様な人たちとの繋がり、パートナー力、相手との壁を越えて多様性を活かす対話力、人間関係資本、関係構築能力、信頼を勝ち得る力などを習得するためには相手を想うやさしさが求められます。

参考:Kindness counts: prompting prosocial behavior in preadolescents boosts peer acceptance and well-being

正しい「やさしさ」とは

やさしい子どもは、相手の気持ちを考えて、思いやりを示します。例えば、友達や家族の悩みや困ったことを聞いてあげたり、手伝ってあげたりする姿勢が見られます。また、自分自身に対する思いやりも持っており、自分の気持ちや感情を上手にコントロールすることが出来ます。

一方で、間違ったやさしさを教えてしまうと、子どもたちが苦しい思いをするリスクもあります。例えば自分を犠牲にし、他者を優先することは正しいやさしさとはいえず、場合によっては自分を傷つけることもあります。

本当のやさしさとは、自己犠牲することなく、時に自分の意見や主張を共有しながらも、他者の意見や気持ちを汲み取ることにあります。まずは本当のやさしさについて考えたのちに、子どもに教えることも重要です。

まずは親の言動を見直すことが重要

子どもの性格は周りの環境が大きく影響しています。特に、家庭内での親の言動や行動は子どもの将来の性格形成に大きな影響を与えるとされています。

例えばやさしさのない上司のもとで育った部下が同じような対応を新人にするのと同じで、子どもは親の行動をよく観察しています。

どのような行動に注意し、また子どもと接するときはどのようなポイントを意識するべきかについて見ていきましょう。

叱り方に注意

アメリカのピッツバーグ大学の研究によると、厳しい言葉によるしつけは、思春期の子どもの行動や感情の発達に劇的な影響を与え、問題行為が増加する傾向にあることがわかっています。

子育てにおいて、子どもの行動に対して叱ることも必要ですが、その叱り方にも注意が必要です。ただ「やさしくしなさい」と言っても、子どもの行動を改めることはできません。

例えば、子どもがゲームのコントローラーを取り合っていたとしましょう。

その場合、叱るときは、相手の気持ちを理解するように促すことが大切です。

「お互いに楽しめるように、交互に使ってね」と言うように相手の気持ちを考えるように促します。一方的に叱りつけるのではなく、相手の立場に立って考えることが、子どもにやさしさを教えることにつながります。

また、叱るときには相手を否定するような言葉遣いは避け、行動を否定するようにしましょう。

例えば、「君は悪い子だ」と言うのではなく、「その行動は良くない」と言うようにします。相手を否定するような言葉遣いは、自分自身に自信を持つことができなくなり、やさしさを失ってしまう原因にもなります。

叱るときには、子どもの気持ちを理解し、子どもを否定するような言葉遣いを避け、落ち着いたトーンで話しかけることが大切です。子どもにやさしさを教えるためには、叱ることも必要ですが、その叱り方にも注意して実践していきましょう。

参考:Longitudinal Links between Fathers’ and Mothers’ Harsh Verbal Discipline and Adolescents’ Conduct Problems and Depressive Symptoms

親が率先して思いやりのある行動を

先ほど紹介した研究によると、親が子どもに対して共感的で支援的な態度を持つことが、子どものやさしさを育てる可能性があることを示しています。

やさしい子の親には、共通している3つの特徴があります。

  1. 他人が話をしているときに真剣に耳を傾け共感できる
  2. 他人に対して協力的である
  3. 他人に対して思いやりがある

子どもが所属する小さな社会は「家族」です。その小さな社会から子どもは多くのことを学びます。いわば、子どものお手本は両親であり、両親が上記のような行動をとることで子どもも同じように行動し、結果として思いやりのあるやさしい子どもに育ちます。

親自身もストレスや疲れを感じるとき、時に厳しく言ってしまったり、ネガティブな言動をとることがあるかもしれませんが、子どもの前ではなるべく上記のポイントを意識しながら接することが大切です。

参考 : Prosocial Behavior in Infancy: The Role of Socialization

まとめ

子どものやさしさは親から学びます。その資産は大人になっても消えません。そして、親がやさしく接することで子どももそれに影響を受け、やさしい行動ができるやさしい子どもになります。

つまり、子どものやさしさの形成には、まず親が見本を示すことが重要です。しかし、見本を示したうえで子どもが駄目な行動をしていたら、話し方にも気を付けつつ叱りましょう。

そして、親のやさしさと叱り方も子どもの将来に大きな影響を与えるため、親は子どもの人格形成のために積極的に努力する必要があります。

ABOUT ME
この記事の監修者 - 井上 顕滋
31年の経営者経験を持ち、主に教育系メディア事業、人材育成企業、子どもの非認知能力強化プログラム「Five Keys」を運営する財団法人、飲食事業などを経営。 人材育成のキャリアは社員教育からスタートし、成果を上げる中で多くの経営者から問い合わせが増加し、2004年に人材育成企業「リザルトデザイン」を設立。 クライアントの業績に大きく貢献する中で、社員の成果には個人差があることを痛感し、その原因を解明するため、世界的権威である研究者および実践者から最新の心理学と脳科学および「人の心に変化を生み出す最先端技術」を徹底的に学び、実践を重ねた結果、成果とモチベーションの向上を可能にするリザルトプログラムを開発。 また上記「成果の個人差」の真因と、満足度の高い充実した人生を送れるかどうかの鍵が、幼少期(12歳まで)の「親の関わり方」と「与える教育」にあることを発見し、親への教育講座を開催。
子育てのとびら編集部
明日から実践できる子育てに役立つ情報を発信していまいります。