子どもの自己肯定感

子どもの主体性の伸ばし方。主体性が求められる時代に親ができるサポートについて解説

「今の時代は主体性」が求められると、よく耳にするものの、子どもの主体性をどう伸ばすべきかについて悩んでいる方も多いかと思います。

主体性は塾や習い事だけで伸ばせるものではなく、子どもの日々の習慣や家族からのサポートがあり伸ばせるものです。今回の記事では子どもが主体性を持つことできない原因や、明日からできる主体性を伸ばすためのサポートについて解説します。

主体性とはなにか

主体性とはルールや範囲を限定せず、状況に応じて必要なことを主体的に行動することです。自主性は決められたことに対して、率先して行動することを指すので、行動する前に決められているか、そうでないかの大きな違いがあります。

よりわかりやすく説明すると、目的意識を持って何を選ぶかを決める力が「主体性」です。例えば、宿題を先にやるか、それとも遊びに行くか、これを子どもが決めることなどです。

ただ自分のやりたいことをするだけではなく、選択した結果、何が起こるかを考えて、自分の行動に責任を持つことも「主体性」の大切な部分です。

例えば、子どもが公園で友だちと遊ぶのが大好きだとしましょう。同時に毎日やらなければいけない宿題があります。

友だちと遊びに行くことを選んだ場合、楽しい時間はすぐに手に入ります。しかし、遊んでばかりいると宿題に取り組む時間がなくなるかもしれません。

一方で、宿題を終わらせることを選んだら、遊ぶ時間は少し遅くなりますが、その日に宿題の時間の確保に困ることはありません。それに、宿題が終わったら、心置きなく遊ぶことができますよね。

このような選択を子どもに委ね、子どもが選択と結果に対して責任を持つ習慣を持つことで、子どもの「主体性」は伸ばすことができます。

今後の時代、主体性がより重要になる

「第四次産業革命」の時代において日本政府は社会人基礎力を重要視しています。

  • 第四次産業革命とは:AI(人工知能)、ロボット技術、IoT(モノのインターネット)、ビッグデータ、ブロックチェーンなどの新しい技術が急速に進化し、経済や社会のあらゆる面を大きく変える時代のこと

社会人基礎力は3つのスキルと12の要素から構成されており、その中に 「前に踏み出す力」が含まれています。その「踏み出す力の構成要素の一つに「主体性」が挙げられており、「変化に前向きに対処する力、範囲を限定せずに主体的に動く力」と定義されています。

また、総務省が発表している「必要とされるスキルの変化と求められる教育・人材育成のあり方」という調査によれば、「人工知能(AI)の活用が一般化する時代に求められる能力」として、「チャレンジ精神や主体性、行動力、洞察力などの人間的資質」と答える方が最も多いことがわかりました。

今後、変化が激しく、先読みが難しい時代において、前例がなくてもチャレンジできる人材が求められます。

参考:

経産省「人生100年時代の社会人基礎力について」

総務省「第4節 必要とされるスキルの変化と求められる教育・人材育成のあり方」

子どもに主体性が生まれない原因

 そのような時代に備えて、子どもの頃から主体性を育てることが重要であるが、主体性をどのように育てるかわからない方も多いのではないでしょうか。

主体性を妨げる要因を理解するために、「自己決定性」について理解しましょう。自己決定性とは自分自身の行動、選択、目標などを自分自身で決定し、それを実行する能力を指します。これは、「主体性」に深く関連する概念といえます。

この、自己決定性を主体性が生まれない原因についても考えることで、なぜ主体性が生まれないのかを考えることができます。

オーストラリアのカーティン大学の研究の内容を参考にした際に、以下の3つが主体性を妨げる原因と考えられています。

制限や規制が多い環境

この研究によれば、自分自身の行動をコントロールできる環境に置かれることで主体性を発揮することができるということがわかっています。

一方、決まり事や規制が多い場合、主体性を損なうリスクがあるため、子どもに必要以上にルールを守らせたり、子どもの行為に対してなんでもダメと止めてることは、主体性を育てる上で望ましくありません。

報酬や罰則によって子どものやる気を促す

子どもが主体的に動くために、例えば「テストで100点取ったら〇〇を買ってあげる」といった報酬などで行動を促す行為は主体性を妨げるリスクがあります。

上記の研究では、報酬関係なく、自分が関心を持ったことに対して、自分で決定し、物事を進めることによって主体性が養われると述べています。

子どもに頑張ってもらうために報酬を使うことは短期的には効果が出る可能性もあるかもしれませんが、長期的に主体性を育てるという意味では逆効果になる可能性があります。

親との関係性の欠如

親や友人、学校の先生など、子どもにとって重要な他者との相互作用が主体性に影響を与えることがあるといわれています。

例えば、家族との会話が少なかったりすると、子どもは孤独感や不安感を感じ、自分の意志や価値観を信じて行動を取りづらくなり、主体性に悪い影響をもたらすと考えられています。

参考:The Role of Autonomy Support and Autonomy Orientation in Prosocial Behavior Engagement

子どもの主体性を育むためのポイント

それでは主体性を育てるために親はどのようなサポートをするべきかについて解説します。先ほど紹介した、カーティン大学の研究をもとにした主体性を育てるポイントは以下です。

子どもに勉強や習い事などの活動の目的やそれらの目標について説明する

子どもがこれから取り組む活動や目標がなぜ重要であるか、どのような意味を持つのかを説明することが重要といわれています。

例えば、「勉強することで将来自分がやりたい仕事に就けるようになるから」といった具体的な理由を伝えることが挙げられます。これによって、子どもは自分自身の意志や価値観に基づいた行動を取りやすくなります。

子どもに選択肢を与え、自分で決定する機会を与える

子どもが自分で決めることができる範囲を広げることが重要です。例えば、宿題の順番や勉強時間など、子どもが自分で決められることがあれば、その活動に対する意欲や関心が高まるでしょう。

また、子どもが自分で決めたことに責任を持つことで、自己決定性が高まります。親は子どもに選択肢を提示し、その中から選ぶよう促すことで、子どもの主体性を育てることができます。

子どもの意見や気持ちを尊重する

子どもが自分で決めたことをことを褒めたり、尊重することで主体性を育てることができます。例えば子どもが自分で本を選んだ時や習い事やクラブ活動に参加することを決めた時に、「いい本を選んだね」「素晴らしい選択だったと思うよ。」「よく決断したと思うよ」といった声がけが効果的でしょう。

これによって、子どもは自分の行動に対して自信を持ち、主体的に行動を取りやすくなるでしょう。

子どもの努力の過程をサポートする

子どもが自分で決めた目標などに向かって努力する過程でサポートもすることも必要になります。

例えば、宿題のやり方やスケジュールの立て方についてアドバイスしたり、子どもが自分で選んだ習い事やクラブ活動に参加することをサポートし、その選択の成果を褒めることで子どもの主体性を高めることが期待できます。

これらの取り組みは、子どもの主体性を高めるだけでなく、親子関係の良好な発展にもつながります。

まとめ

今回は主体性を伸ばすためのポイントについて紹介しました。子どもが主体性を持つ心理状況を理解することで、どのようなサポートが必要かがより理解できるかと思います。

今後社会で活躍するためにも主体性がより重要になります。子どもの主体性を伸ばしたいと考えられている方に今回の記事がお役に立てれば幸いです。

ABOUT ME
この記事の監修者 - 井上 顕滋
31年の経営者経験を持ち、主に教育系メディア事業、人材育成企業、子どもの非認知能力強化プログラム「Five Keys」を運営する財団法人、飲食事業などを経営。 人材育成のキャリアは社員教育からスタートし、成果を上げる中で多くの経営者から問い合わせが増加し、2004年に人材育成企業「リザルトデザイン」を設立。 クライアントの業績に大きく貢献する中で、社員の成果には個人差があることを痛感し、その原因を解明するため、世界的権威である研究者および実践者から最新の心理学と脳科学および「人の心に変化を生み出す最先端技術」を徹底的に学び、実践を重ねた結果、成果とモチベーションの向上を可能にするリザルトプログラムを開発。 また上記「成果の個人差」の真因と、満足度の高い充実した人生を送れるかどうかの鍵が、幼少期(12歳まで)の「親の関わり方」と「与える教育」にあることを発見し、親への教育講座を開催。
子育てのとびら編集部
明日から実践できる子育てに役立つ情報を発信していまいります。