- 「我が子が努力をしない…。」
- 「すぐに諦めてしまって物事が続かない…。」
- 「今日も勉強しなさい!と叱ってしまった…。」
子どもの年齢を問わず、努力をしない我が子を見るとついつい不安になってしまう方もいるのではないでしょうか。
しかし、子どもの努力を促すためには、努力ができない原因を理解することや言葉かけを工夫することが重要です。
今回は、子どもの努力に関連する「固定思考」や「成長思考」について解説し、 子どもが努力するために親としてできるサポートについても紹介します。
ぜひ、参考にしてみてください。
努力は人生において重要なスキル
ビジネス特化型SNSを提供するリンクトイン(東京千代田区)の調査結果によると、人生で成功するために何が重要か?」という質問に対し最も多かった回答は、日本、アジア太平洋(以下、全体)ともに「努力すること」でした。
またフロリダ州立大学心理学部教授アンダース・エリクソンらが発表した論文によると、一般的に能力がある人は、普通の人よりも練習に多くの時間を費やし継続的に繰り返すことで、その能力を高めていると考えられています。
仕事や勉強だけでなく、目標達成のために努力することは人生全体において、必要不可欠といえます。
参考:
・仕事に対する意識調査2021年版
・The Role of Deliberate Practice in the Acquisition of Expert Performance
子どもの努力を妨げる固定思考とは
それでは、子どもが努力しないのはどのような原因があるのか考えていきましょう。
スタンフォード大学の心理学者キャロル・ドゥエック博士が発表した研究によると、子どもが努力をするかどうかは以下の2つの思考と関係性があるといわれています。
1. 「成長思考」
成長思考を持つ子どもたちは、努力によって能力が向上すると信じており、困難な課題に取り組む意欲が高い傾向にあります。これらは挫折への対処や自己効力感などにポジティブな影響を与えることを示しています。
2. 「固定思考」
固定思考を持つ子どもたちは、能力が生まれつきのもので変えられないと信じているため、失敗を避けようとし、挑戦や努力を避ける傾向があるといわれています。
固定思考を持つことで生まれる行動
一般的に固定思考を持つ人は以下のような特徴があります。
挑戦する前から諦めてしまう
幼少期に努力をして報われた経験や成功体験が少ないと、自分の能力や知識は変わらないとと考えてしまうため、努力を必要とする場面に直面した時にも「努力してもどうせ無駄。」と行動することさえ諦める傾向があります。
新たな挑戦には苦労を伴うことも多く、自分の能力の限界に直面する可能性があるためです。
他人と比較して劣等感を抱いてしまう
固定思考を持つ人は、自分の能力や成功を他人と比較する傾向があります。
例えば、固定思考を持つ人がテストで高得点を取ったとします。この時「私はこの科目が得意だから高得点が取れた」と解釈し、他人が自分より低い得点だった場合、それは自分が他人より優れていると捉えます。
しかし、逆にテストで低得点を取った場合、彼らは「私はこの科目が苦手だから低得点しか取れなかった」と解釈し、他人が自分より高い得点だった場合、それは自分が他人より劣っていると捉えます。
この比較する癖は子どもの自尊心に悪影響をもたらし、ストレスを引き起こすリスクがあります。
他者からのフィードバックを避ける
固定思考を持つ人がフィードバックを避ける傾向にあるのは、自分が持っている能力やスキルは変わらないものであり、それが評価されることを恐れています。
例えば、固定思考を持つ子どもが新しい習い事に取り組んでいるとします。先生からのフィードバックが必要な場合でも、彼らはフィードバックを求めることを避けるかもしれません。なぜなら、フィードバックが自分の能力や成果に対する直接的な評価につながると感じるからです。
このような視点は、自己の成長や改善の機会を見逃す原因となります。
参考:Mindset: The New Psychology of Success by Carol S. Dweck
固定思考が強くなる原因とは?
このような固定思考はどのようなことをきっかけに強くなってしまうのでしょうか。以下では固定思考が強くなる3つの原因を紹介します。
1. 知性や才能を過度にほめる
知性や才能をほめることは、子どもたちの固定思考を強化するといわれています。
子どもたちは、プロセスではなく、知性や才能などに焦点をあてて褒められることで、能力が生まれつきのもので変わらないと考えるようになり、失敗を避けるために挑戦や努力をすることに抵抗をもつようになります。
2. 失敗に対して否定的なフィードバックをする
失敗をネガティブなものだと捉え、子どもたちにその失敗を避けることを強要すると、固定思考を促進させる可能性があるといわれています。失敗した時のフィードバック次第で、子どもたちは失敗が恥ずかしいことであると考え、努力や挑戦から逃げてしまうのです。
結果として先ほど紹介したように、なるべく失敗やミスを避ける完璧主義な行動をとってしまう傾向が生まれてしまいます。
3 他人と比較する
子どもを他人と比較することも、固定思考を促進させる可能性があります。このような比較は、子どもたちに「私が頑張ったところで〇〇ちゃんよりも劣っている..」と能力が変わらないものであるという考え方を定着させてしまいます。
参考:Self-theories: Their role in motivation, personality, and development.
子どもが努力するために親としてできるサポート
ここまで、固定思考を促進させる原因を紹介しました。一方で積極的に努力する人が持つ「成長思考」を促すためにどうすればよいかについても紹介します。
1:失敗から学ぶ姿勢を伝える
成長思考を持つ人は、困難や失敗を成長の機会として捉え、そのような局面に対してもネガティブな感情を持たずに果敢に挑戦します。
そのような思考を育てるためにも「失敗は学びの一部であり、避けるべきではない」という考え方を丁寧に伝えるのがよいでしょう。
失敗を通じて何が学べるか、どのように改善できるかを考えることを子どもと一緒に考えましょう。
2:努力の過程を褒める
努力をした結果、失敗をすることもありますし、思ったような結果が得られないこともあるかとおもいます。その際に「毎日コツコツ頑張ってきた努力はきっと次につながるよ」と励まし続けることで、子どもは失敗することに抵抗がなくなります。
「ここまで頑張ったから次はできるよ!」と励ますことで挑戦しようとする気持ちが芽生えるだけでなく、親に対する信頼感が高まることも期待できるでしょう。
3:努力の価値を伝える
スキルや知識は一夜にして完璧につくものではありません。どんなに秀才でもそれらのスキルを発揮し続けるためには、継続した努力が必要です。
例えばテストで100点が取れなくても、過去のテストから20点も点数が上がっている場合、それは努力による結果といえるでしょう。
成果や結果だけの「点」だけにフォーカスするのではなく、これまで努力してきたことが将来につながるという「線」を意識して、努力の価値を伝えましょう。
まとめ
子どもに努力を継続させるためには、子ども自身が主体的に努力できるようにすることが大切です。
そのためには、子どもの話をしっかりと聞いて一緒に目標を立てたり、努力の過程や結果を見える化したりするなどして、やる気の持続化を支援することを紹介しました。
幼少期に努力をした過程や成功体験は、思春期以降の人格形成に大きな影響があると言われています。
努力をして得た成功経験により自己肯定感が育まれ、生きていく上でぶつかるであろう困難にも立ち向かっていける挑戦心が生まれるのです。
努力しない子どもに焦りすぎることなく、時には信じて待つことも大切でしょう。
いろいろな方法を試しながら、我が子に合う方法を探してみてください。