子どものために尽力し、日々の献身的なサポートを惜しまない親たちですが、時々、子どもから感謝されていないのではないかと感じることがあります。
家族、友達、教師など、子どもがお世話になる人たちに対して感謝の気持ちを持っているかどうか、親として不安になることもあるでしょう。
育児において、感謝の気持ちを持つことは子どもたちが社会に出る上での基本的な人間関係を築く力になります。子どもが将来、立派な大人になるためにも、日常生活の中で感謝の気持ちを育むことが重要です。
この記事では、感謝の気持ちを持つ子どもに育てるための方法や、注意すべきポイントについて詳しく解説していきます。
感謝の気持ちはチームーワークにおいても重要になる
経産省は「人生100年時代の社会人基礎力」を公表しています。子どもたちは、私たちよりも寿命が長くなり、企業で働いたり社会で活動する期間が長くなると予測されています。そのような未来に必要とされるスキルの一つがチームで働く力(チームワーク)です。
私たち大人はほとんどの場合、会社や組織などの何かしらの組織に所属しながら生活しており、社会や他者との関わりの中で生きています。
組織に所属し、共通の目標を達成するためにも他者との協力なしでは実現できません。長期的に充実した人生を送るには、他者との良好な人間関係構築は必須であり、そのためにも感謝の気持ちを常に持ち続ける必要があります。
感謝の気持ちは自分や他者、チーム全体にもよい影響を生み出す
自分自身のポジティブな感情を生み出す
感謝することで、幸せや喜びといった感情が湧き上がり、その結果、ストレスや悩みが和らぎます。これにより、自分の心の中でポジティブなエネルギーが生まれ、人生に対する意欲ややる気が向上します。
実際に、カリフォルニア大学デイビス校の心理学者Robert Emmonsによれば、感謝の習慣を持つ人は、幸福感が高まり、ストレスを軽減できることが明らかになっています。
この研究によれば、感謝の心には2つの大切な要素があります。
まず1つ目は、些細なことでも世の中にある良いことや喜びに気づくことです。人生は決して完璧ではありませんし、人生には悩みや問題もついてきますが、感謝の心を持つことで、私たちの人生にも喜びや良いことがあることに気づくことができます。
結果としてポジティブな気持ちに繋がります。
2つ目の要素は、その「良いこと」や「喜び」がどこから来たのかを考えることです。自分だけの力ではなく、周りの人など、「自分以外の力」によって良いことがもたらされていることに気づくことが大切です。
感謝の心を持つことで、私たちは他人とつながり、お互いに助け合いながら幸せを分かち合うことができるのです。
こうしたマインドを持つことで、冒頭で述べたように幸福感が高まり、ストレス軽減に繋がります。
社会で求められる感謝の姿勢
就職などはちょっと先の話かもしれませんが、今から感謝する習慣をつけることで、リーダーシップを発揮する局面でも活躍できる人に成長するかもしれません。
例えば、ハーバードビジネスレビューが公開している記事「Research: More Powerful People Express Less Gratitude」では、職場での感謝の重要性とその効果について言及されています。
感謝の気持ちが従業員のチームや会社に対する愛着や、成績向上に関連していると述べられています。
もし、我が子がリーダーシップを発揮して欲しいと思う場合には、他者に感謝する姿勢は必要不可欠といえるのではないでしょうか。
参考:Research: More Powerful People Express Less Gratitude
子どもの感謝の気持ちを育むポイント
感謝の気持ちを持つ子どもに育てるためには、どのような取り組みをすればよいのでしょうか。まずは感謝する習慣づけに成功した実験を紹介します。
ホフストラ大学心理学教授のJeffrey FrohらはFacebookを活用して、生徒が感謝の気持ちをシェアする実験を実施しました。
この研究によると、生徒によって感謝の気持ちがシェアされることで、学業の成績、モチベーション、関与の向上と関連している可能性がわかったと同時に、感謝を習慣づける効果的な方法を挙げています。その一部を以下で紹介します。
- その日嬉しかった出来事などを気軽に共有できる仕組みづくり
- お互いにその出来事に対してコメントを送りあう
- 組織や教育者によるサポートなど
これらを家庭内で取り入れるとどのような取り組みができるかについて解説します。
家族内での感謝する時間をつくる
家族が集まる時に、例えば食事時に、一人ずつその日感謝したことを話す時間を作るのも良いでしょう。これは家族間の絆を強め、感謝の習慣を養うのに役立つでしょう。
親が率先して子どもにも感謝の気持ちを述べる
親が率先して子どもにも感謝の気持ちを述べることは、子どもが感謝の心を育むために非常に重要な要素です。親が子どもに対して感謝の気持ちを表現することで、子どもは感謝の言葉や態度がどのようなものであるかを学び、自然とそれを真似をするようになります。
共同でボランティア活動に参加する
家族でボランティア活動に参加することは、他者への感謝の気持ちを実践する良い方法です。地域の清掃活動や食料品の寄付、高齢者や障がい者への支援など、家族で選んだボランティア活動に参加することで、他者への感謝と奉仕の意識を育むことができます。
感謝を教える際に注意するポイント
感謝の強要をしないこと
感謝の強要を避けるためには、まず子どもが自然に感謝の気持ちを持つ環境を整えることが大切です。
強制的に感謝を求めると、子どもは感謝の本当の意味を理解できず、ただ言われたから言っているだけの状態になってしまいます。その結果、本当に感謝すべき瞬間が訪れたときに、真摯な感謝の言葉を伝えることが難しくなります。
代わりに、親自身が率先して感謝の気持ちを表現し、子どもに感謝の大切さを示すことが効果的です。感謝がどのような状況で適切であるかを具体的な例を通じて教えましょう。
また、子どもが感謝の気持ちを自ら表現したときには、その行為を称賛し、励ましましょう。これにより、子どもは感謝の意義を理解し、自発的に感謝の言葉を使うようになります。
ありがとうということを目的としないこと
感謝の言葉を伝えることは大切ですが、子どもに「ありがとう」と言わせることを目的としないことが重要です。
感謝を伝える背後にある理由を理解し、本心から感謝していることが最も大切であるため、子どもに感謝の理由を説明し、言葉だけでなく心から感謝する態度を育むことが、感謝の心を持つ子どもの育成に繋がります。
子どもの視点に立って伝えること
子どもの視点に立って感謝の心を伝えることは、子どもが感謝の意味を理解しやすくするために重要です。
子どもが興味を持っていることや、その年齢に応じた状況を考慮して、感謝の言葉や態度を示しましょう。子どもが自分と同じ視点で感謝の大切さを理解できるように、具体的な例や状況に触れながら伝えることで、子どもは感謝の心を自然に身につけることができます。
親が子どもの立場に立った教え方をすることで、子どもは他人への感謝の心をより深く理解し、自分も実践できるようになります。
さいごに
子どもに感謝の心を持ってもらうためには、親が率先して感謝の言葉を使い、些細なことでも伝えることが大切です。与えすぎないことや、心から感謝できる状況を作り出すことも重要です。
子どもの視点に立ち、感謝の意味を理解させることで、子どもは自然と感謝の心を持つ習慣を身につけます。親が日々の子育ての中で、感謝を教える努力を続けることが、子どもが感謝の心を持つ大人に成長するための鍵となります。