子どもの目標達成スキル

「EQ」が高く、思いやりがある子どもを育てるためには?心理学の観点からアドバイスも紹介

「うちの子、思いやりがないかも?」そんな不安に悩む親は意外と多いものです。子どもたちが友達と遊んでいる姿を見て、自分の子には優しい心がないのではないかと不安に思ってしまうことがあります。

子どもが自分のことばかりに集中していて、周りの友達の気持ちに気づかない様子を目の当たりにすると、ますますその不安は大きくなります。

「育て方が悪いのかな」と自分を責めてしまうこともあるでしょう。しかし、そんな悩みを抱える親にとって、大切なのは子どもの成長を信じ、思いやりを育むための習慣を日常に取り入れることです。子どもはまだまだ成長の途中ですし、思いやりの心を持ってもらうためには、親も一緒になって取り組むことが必要です。

しかし、思いやりや自立心などの教育については、どうすれば良いのか迷ってしまうこともあると思います。そんな悩みを抱える親のために、今回の記事では、子どもに思いやりの心を持ってもらうための方法やポイントをご紹介します。

人生100年時代に求められる「チームで働く力」

人生100年時代という言葉をニュースなどで聞いたことがあると思います。人生100年時代とはイギリスの組織論学者であるリンダ・グラットンらが提唱する言葉で、世界的に高齢化が進んでおり、日本を含む先進国では、半分の人が100才を超えても生きる時代の到来を予測しています。

そのような高齢化の時代を見越して、経産省は「人生100年時代の社会人基礎力」を公表しています。これまで以上に、企業で働くなど社会で活動する期間が長くなる上で、どのようなスキルが求められるかを定義しています。

そのうちの一つにチームで働く力(チームワーク)があります。

チームで働く力をより細分化すると以下のようになります。

  • 協業力ネットワーキング行動多様な人たちとの繋がり
  • パートナー力
  • 相手との壁を越えて多様性を活かす対話力
  • 人間関係資本
  • 関係構築能力
    異文化集団に飛び込み(混沌、未知、異文化を受け入れ)
    信頼を勝ち得る(周囲を巻き込む)力
  • 感情を学ぶ、EQ(Emotional IntelligenceQuotient)
  • 情緒的資本
  • シチズンシップ、高い倫理観を持ち正しい選択をする力
  • Work As Life

これらはチームで働く力として重要な要素ですが、今回のトピックでもある、「思いやり」に付随するものも含まれています。例えばEQ(Emotional IntelligenceQuotient)は「感情知能」を示す指標のことで、自分や他人の感情を正確に把握し、自分や他人の感情に柔軟に対応したり、感情的な動機付け(前向きな励ましなど)をうまく活用しながら、目標達成に貢献する一連のスキルのことを示しています。

また、EQは社会で良好な人間関係を構築する上で重要な指標として近年注目を浴びています。

今の子どもたちは将来100年以上生きることは先述しましたが、そのような長い人生を充実させるためには良好な人間関係が欠かせません。良好な人間関係を構築するためにも、子どもの頃から思いやりの心を育み「共感力が高い心」を持つことが必要になります。

感情知能を構成する4つの要素

EQは他人の感情を感じ取る能力、言い換えれば感情知能を測る指標でした。

イェール大学教授の社会心理学者Peter Saloveyの研究によれば、子どもの感情知能を高めるためには、自己認識、自己管理、社会認識、関係管理の4つのスキルを磨くことが重要とされています。一つずつ見ていきましょう。

自己認識

自分の感情や考え方を理解し、それがどのように自分の行動に影響を与えるかを把握する能力のことを言います。たとえば、自分が怒りを感じる状況を冷静に理解したり、苦手な物事に対して、なぜ苦手かを具体的な理由とともに説明できるなどが含まれます。それゆえに自己認識スキルが高い人は得意なことや弱点も認識しています。

自己管理

自己管理とは、自分の感情や行動を適切にコントロールする能力のことを言います。これは、上記で紹介した自分自身の感情を認識し、それが自分の思考や行動にどのように影響を与えるかを理解することから始まります。

たとえば、自分が怒っていると感じたとき、自己管理能力が高い人はその怒りをコントロールし、冷静に自分の気持ちを表現することができます。これは、怒りに任せて衝動的な行動をとることなく、落ち着いて状況を評価し、最良の行動を決定することを意味します。

また、自己管理スキルには目標に向かって行動するスキルや、ストレス耐性も含まれており、これらのスキルは、困難な状況に遭遇した時でも、自分の感情を適切に管理し、ポジティブな行動をとることを可能にします。

社会的認知

社会的認知とは、他人の気持ちを理解したり、周囲の人々がどう思っているかを読み取る能力のことを指します。これはまるで他人の心を読むようなもので、他人がどう感じているか、何を考えているかを察知することができます。

たとえば、友人が悲しそうに見えるとき、それが何によるものかを理解し、適切な対応をすることが社会的認知に当たります。

この能力は共感力や思いやりと密接に関連しています。つまり、他人の感情を自分のものとして理解し、それに適切に反応することができる能力です。これにより、他人との深い関係を築くことが可能になります。

人間関係構築

こちらは言葉から連想しやすいかと思いますが、他人と良好な関係を築くスキルのことを指します。これには他人へ共感を示したり、協力することも含まれます。たとえば、友人や同僚との対立をうまく解決したり、他人の意見を尊重しながら自分の意見を表現する能力などがこれに該当します。また、リーダーシップやチームワークでも重要な要素となります。

これらの要素が相互に作用することによって、感情知能スキルが高まります。

参考:Emotional Intelligence

子どものEQを伸ばすために取り組むべきことは

それでは「感情知能」を構成する要素を伸ばすために、子どもにどのようなサポートをするべきか、について解説します。

マインドフルネスのような「今この瞬間」に集中できる状況を作る

ノースカロライナ大学の精神医学部の准教授Bluth, K.らの研究によると、マインドフルネスは、感情認知において重要な「自己認識」を高める要素として働く可能性が示唆されています。具体的には、「今この瞬間への集中」が促されることで自己認識が深まると考えられています。

マインドフルネスと聞くとヨガなどのイメージが強いですが、自然に触れることでもマインドフルネスのような状態を作れることが東京大学の研究でもわかっています。

私たちもキャンプなどで自然に触れる時、自分の気持ちについて冷静に考えることが多いのではないでしょうか。自己認識スキルを高めるためにも、子どもたちのために自然に触れ合う時間を設けることを意識してみましょう。

参考:
Mindfulness and Self-Compassion:Exploring Pathways to AdolescentEmotional Well-Being

身近な自然によるマインドフルネスが高める自然への親近感について

目標や計画を持って取り組む行動を習慣づける

こちらは先ほどの自己管理に直結する行動です。ペンシルベニア大学の心理学者Angela Lらの研究によると、目標達成と自己管理スキルには高い相関性があることがわかっています。

目標達成に向けて努力する習慣は、自己管理を向上させる一助になります。例えば、子どもがテストで高い点数を取ったり、スポーツや習い事で高い目標を達成するためには、それなりの勉強や練習が必要です。時にそのようなプロセスが辛いと感じる時があり、私たち大人も過去に投げ出したい瞬間が何度もあったかと思います。

このような辛い瞬間も自分の感情をコントロールしながら前向きに取り組む習慣が身につくことによって、どのような状況においても冷静に感情をコントロールできるようになります。

参考:The Science and Practice of Self-Control

他者視点に立って考える体験を提供する

スタンフォード大学で仮想体験が自己や他者の認識にどのような変化をもたらすかについて研究しているJeremy Bailensonらの研究結果によると、バーチャルリアリティ(VR)を用いたゲームが、他者への共感を高める効果があることが示されています。

VRを通じて他者の視点や経験を直接体験することで、その人たちに対する理解や共感が深まっているということを示唆しています。

他者の視点を体験するという意味では、VRに限らず、小説や映画、演劇などもまた共感を育む体験といえるでしょう。

参考:Virtual reality perspective-taking increases cognitive empathy for specific others.

さいごに

子どもたちが思いやりの心を持つように育てることは、親としての重要な役割のひとつです。共感力を高めるためには、自分の気持ちを正直に伝えられる環境を作り、相手の感情を理解し、受け入れることが大切です。

子どもが大人になっても、真の思いやりを持ち続けられるよう、今からその基盤を築いていきましょう。悩みや不安がある時こそ、子どもと一緒に考え、成長をサポートしてあげてください。親子で手を取り合い、思いやりのある未来へと歩んでいくことができるはずです。

ABOUT ME
この記事の監修者 - 井上 顕滋
31年の経営者経験を持ち、主に教育系メディア事業、人材育成企業、子どもの非認知能力強化プログラム「Five Keys」を運営する財団法人、飲食事業などを経営。 人材育成のキャリアは社員教育からスタートし、成果を上げる中で多くの経営者から問い合わせが増加し、2004年に人材育成企業「リザルトデザイン」を設立。 クライアントの業績に大きく貢献する中で、社員の成果には個人差があることを痛感し、その原因を解明するため、世界的権威である研究者および実践者から最新の心理学と脳科学および「人の心に変化を生み出す最先端技術」を徹底的に学び、実践を重ねた結果、成果とモチベーションの向上を可能にするリザルトプログラムを開発。 また上記「成果の個人差」の真因と、満足度の高い充実した人生を送れるかどうかの鍵が、幼少期(12歳まで)の「親の関わり方」と「与える教育」にあることを発見し、親への教育講座を開催。
子育てのとびら編集部
明日から実践できる子育てに役立つ情報を発信していまいります。