子どもの目標達成スキル

子どもに落ち着きがない?ADHDと疑う前に親としてできるサポート

「子どもに落ち着きがなく、注意するのも疲れた。」と、子どもと意思疎通できず疲れてしまう親も多くいらっしゃいます。

特に大人へと成長するにつれて、状況に応じてどのように振る舞うべきかについて分別がつきますが、落ち着きがない子どもを見ると「このまま落ち着きがない子どもになったらどうしよう」と不安に感じてしまいます。

今回は子どもに落ち着きがない原因や、子どもが成長していく中で、衝動的な行動を抑える対策についても紹介します。

子どもに落ち着きがないと悩む親は多い

子どもがなかなか落ち着かなかったり、他の人に迷惑をかけている様子を見ると、子どもの将来が心配になります。また子どもに落ち着きがないことについて、googleなどで検索してみるとADHDに関する多くの記事を見かけることでしょう。

ADHDとは「注意欠如・多動症」とも呼ばれ、発達障害の一種とされています。しかし、発達障害と聞くと「深刻な病気なの?」と心配になるかもしれませんが、文部科学省の調査によれば、発達障害の疑いがある子どもは8.8%もいると考えられており、決して稀なことではなく、社会に出ると意外と多くの方がそのような傾向を持っていると言えます。

ADHDと聞くと、不注意で落ち着きがないなどデメリットが注目されがちですが、ADHDの傾向がある方は一つの物事に対する集中力があったり、発想が豊かな方も多くいらっしゃいます。実はアメリカの起業家の3割はADHDの傾向があることがわかっています。

もちろん、子どもに落ち着きがないからといって必ずしもADHDというわけではなく、あらゆる情報や専門家の診断をもとに適切に判断する必要があります。

参考:

文部科学省初等中等教育局特別支援教育課「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について 」

Freeman, M. A., Staudenmaier, P. J., Zisser, M. R., & Andresen, L. A. (2019). The prevalence and co-occurrence of psychiatric conditions among entrepreneurs and their families. Open Access, 53, 323–342.

落ち着きがない子どもの脳内はどのようになっているのか?

子どもの脳は成長とともに発達していきます。マサチューセッツ工科大学の経済学教授であり、広範な研究をしているドリュー・フューデンバーグ氏らの論文によると、思いつきで動くなどの「衝動的な行動」は、扁桃体などの脳の下位部位と関連していることが示唆されています。

一方、「これを片付けてから、次のことをやろう」といった計画的な行動は、前頭前野や後頭頂皮質などの脳の上位部位と関連していることが示唆されています。

子どもの脳は上記で挙げたような前頭前野などの領域の発達がまだ未熟であるため、衝動的な行動が見られるとされています。またこれらの脳の部分の発達は年齢を重ねると共に発達し、衝動性は減少する傾向があるとされています。

毎回怒ることも疲れると思いますし、子どもが同じ過ちを繰り返していると大人になってもそうなるのではと不安に感じると思います。しかし、上記で説明したようにほとんどの場合、子どもの脳の成長とともに、徐々に落ち着いていきますので、まずは長い目で子どもの成長を見届けることが重要です。

参考:

Fudenberg, D., & Levine, D.K. (2006). A dual-self model of impulse control. American Economic Review, 96(5), 1449-1476.

Casey, B.J., Getz, S., & Galvan, A. (2008). The adolescent brain. Developmental Review, 28, 62-77. Retrieved from ScienceDirect.

家庭でできる落ち着きがない子どもに対するサポート

成長するとともに改善されるということをお伝えしましたが、落ち着きのない状態はトレーニングによっても改善することができます。以下では落ち着きがない子どもに対する効果的なサポートについて紹介します。

遅延報酬スキルを伸ばす

子どもが報酬(楽しい、おいしい、癒しなど)を目の前にすると脳が活発になります。例えば、おもちゃやゲームが目の前にあると、宿題をそっちのけで飛びついてしまいます。これは先ほど説明したように、前頭前野や後頭頂皮質などの領域が未熟であるために起きることです。

しかし、これを放置すると、我慢しない癖もついてしまう可能性があるため、子どもが冷静に判断したり、我慢強くなるためにも「遅延報酬」という方法が効果的です。

例えば、宿題をしないといけないにも関わらず、ゲームやYoutube動画など別のことに興味が向いて落ち着きがない場合、それらを一時的に禁止し、「宿題が終わったら好きにしていいよ」と伝えましょう。

そうすることで、子どもは宿題をすぐに終わらせることで、その後は自分の好きなように時間を使うことができるという考えになり、結果としてやらなければいけないことにも取り組むようになります。

バークレー大学の研究によれば、遅延報酬スキルは、学業成績や人間関係の質、健康などの面でも良い結果と関連していることが研究で示されており、子どもの発達において重要な要素となります。

参考:

Ayduk, O., Mendoza-Denton, R., Mischel, W., Downey, G., Peake, P. K., & Rodriguez, M. (2000). Regulating the interpersonal self: Strategic self-regulation for coping with rejection sensitivity. Journal of Personality and Social Psychology, 79(5), 776-792. https://doi.org/10.1037//0022-3514.79.5.776

作業を小さく分ける

オハイオ大学が発表している研究によれば、やらないといけないことをせず、落ち着きがない子どもに対しては、作業を小分けにしたり、小さいステップを作ってあげることもまた効果的であるとわかっています。

大きな課題、例えば「掛け算を理解する」という課題に直面している場合にも、いきなり「掛け算を勉強しようね」とだけ伝えても、子どもは何からすればいいのかわからないと感じ、集中力が分散してしまいます。

しかし、掛け算を理解するということを「今日は1の段を覚えようね」といくつかのステップに分けることで、子どもも「それだったらできそうだ」という感覚を持ち、集中して取り組むことができます。

また「部屋を掃除しなさい!」といって最初はやり始めたものの、しばらく経つと別のことで遊んでいるような場合、「勉強机を整理しよう」など掃除する箇所を分けて、一つずつやらせてみるのもいいかもしれません。

このように作業を小さなステップに分けることで、子どもは1つの簡単な課題を完了させるために集中することができ、結果として大きな作業を完了できるようになります。

日課を作ること

落ち着きがない子どもは、計画を立てたり、物事を順序良く進めたりすることが難しいことが多いです。これは、必要な作業に集中し、実行する能力である「実行能力」に課題を抱えている可能性があります。

先ほどのオハイオ大学の研究によれば、日課を作ることも、落ち着きがない子どもにとって効果的な施策だと指摘しています。

先ほど説明したように、子どもの脳は発達段階であり、計画的に物事を進めることがまだまだ苦手です。

そのような場合でも、掃除など小さなことでもいいので、日課を設けることで、「今日も掃除をやらないとな」と計画もする必要もなくコツコツと努力を繰り返すようになります。

研究によれば、このような日課を作ることは子どもの衝動的な行動を減らすこともわかっているため、まずは、簡単なことから日課を作ってみるようにしてみましょう。

参考:

Evans, S. W., Owens, J. S., Wymbs, B. T., & Ray, A. R. (2017). Evidence-Based Psychosocial Treatments for Children and Adolescents With Attention Deficit/Hyperactivity Disorder. Journal of Clinical Child & Adolescent Psychology, 00(00), 1-42. https://doi.org/10.1080/15374416.2017

まとめ

落ち着きがない子どもに対して不安を感じる気持ちは大いに理解できるものですが、まずは子どもがまだ発達段階であることを理解しましょう。

その上で、放置せず、将来冷静に行動できる人に成長させるためにも、今回紹介した方法をぜひ試してみてください。

ABOUT ME
この記事の監修者 - 井上 顕滋
31年の経営者経験を持ち、主に教育系メディア事業、人材育成企業、子どもの非認知能力強化プログラム「Five Keys」を運営する財団法人、飲食事業などを経営。 人材育成のキャリアは社員教育からスタートし、成果を上げる中で多くの経営者から問い合わせが増加し、2004年に人材育成企業「リザルトデザイン」を設立。 クライアントの業績に大きく貢献する中で、社員の成果には個人差があることを痛感し、その原因を解明するため、世界的権威である研究者および実践者から最新の心理学と脳科学および「人の心に変化を生み出す最先端技術」を徹底的に学び、実践を重ねた結果、成果とモチベーションの向上を可能にするリザルトプログラムを開発。 また上記「成果の個人差」の真因と、満足度の高い充実した人生を送れるかどうかの鍵が、幼少期(12歳まで)の「親の関わり方」と「与える教育」にあることを発見し、親への教育講座を開催。
子育てのとびら編集部
明日から実践できる子育てに役立つ情報を発信していまいります。