- 「こんなこともできないの?」
- 「〇〇ちゃんはできてるよ!」
子どもが何かをできなかったり、忘れ物をしたときに、こんな声かけをしていませんか。良かれと思ってアドバイスしようとしているうちに、つい感情的に叱ってしまうこともあるでしょう。
しかし、その声がけが子どもの自己肯定感を下げることになってしまう可能性もあります。親の声かけ次第で、子どもの自己肯定感を上げることも下げることにも繋がるのです。
この記事では、子どもの自己肯定感を上げるためのポイントと声かけ例や避けたい言動などについてもご紹介します。
日々の生活を通して、子どもの自己肯定感を上げ、これからの時代を自ら考え行動して生き抜く力を育むヒントとして参考にしていただけますと幸いです。
子どもの自己肯定感は親からの声かけが重要
カナダのウォータールー大学社会心理学准教授クリスティーン・ローゲル氏らの研究によると、子どもの自己肯定感が高い場合、失敗に対して寛容になり、失敗から学ぶ姿勢を身につけ、状況をより良くするための一歩を積極的に踏み出す傾向があることがわかっています。
自分が失敗に寛容である分、同じように他人も尊重できるので、良好な人間関係を築くこともできます。
そのような自己肯定感を育むためには、親とのコミュニケーションも重要な要素の一つになります。
例えば、子どもの頃、親からも「算数はあまり得意じゃないね」と言われると、「自分は算数が苦手なんだ」と思い込み、大人になっても「私は算数が苦手だから」と苦手意識を持ち続け、改善することに対して億劫に感じるようになります。
些細な一言が子どもの人格に影響を与える可能性があるため、まずは子どもと接する際の言動を見直すことが重要であるといえます。
自己肯定感を高めるための声かけのポイント
以下では子どもの自己肯定感を促進する声かけのポイントや具体例を紹介します。
子どもが自ら意思決定するようになる声がけ
カナダのブリティッシュコロンビア大学の発達認知科学者アデル・ダイアモンド氏の研究によれば、子どもに選択肢を提供し、その結果に対する責任を持たせることが効果的であることが示唆されています。
これにより、子どもに自分の意思決定に対する自信を持たせ、自己肯定感とも関連する自立心を育てることができます。
具体例
「次の休みはどこに行くか一緒に考えてくれる?」
子どもが意見や考えを共有した際には肯定したり、意見を採用してあげましょう。自分の意見を言うことに慣れてきたら「どうしてそう思うのかな?」と理由を聞くと、より考えるきっかけができますね。
失敗を恐れないようになるために声がけ
子どもが失敗した時、子ども自身も「失敗してしまった」と理解しています。そこにさらに追い打ちをかけるような声がけは避けましょう。
まずは、子どもの心に寄り添い、今回の経験から得たものは何か、次からどうしたらいいか、などに目を向けるような声がけを心がけたいものです。
具体例
「今回の発表はうまくできなかったんだね・・でも今回の発表会は初めてで緊張したと思うから仕方ないね。次はもっと落ち着いてできると思うよ。」
例えばピアノの発表会などでうまくいかなかった時はこのような声がけができるかと思います。失敗はしてはいけないものではなく、次に活かすための経験である、という姿勢を親が見せることも大切です。
努力を褒めるような声かけ
コロンビア大学のCarol S. Dweck氏らの研究によると、能力や才能のみをほめられた子どもは、その後果敢にチャレンジしなくなったり、虚偽の成績を申告したりする傾向があることがわかっています。
能力や才能のみにばかり焦点を当てたり、結果だけを見て対応を変えてしまうと、子どもの自己肯定感の低下につながりかねません。努力の過程やそのプロセスについても言及してあげましょう。
具体例
「今回の100点はすごいね、あれだけ努力して勉強したおかげだと思うよ」
「これまでの頑張りが報われてよかったね!」
「100点すごいね!」だけではなく、その過程もしっかりと称賛してあげることで、「自分の頑張りを見てくれている」と子どもの自己肯定感を高めることにもつながります。
子どもの自己肯定感を高める上で避けたい言葉
子どもの自己肯定感を高めるための言葉だけではなく、避けたい言葉にも注意する必要があります。
結果に対して過剰に賞賛する言葉
結果に対して過剰な賞賛をおこなうと、その子どもが挑戦を避けるようになることが、アムステルダム大学准教授Eddie Brummelmanらの研究で示されています。過剰な賞賛は、子どもが失敗することへの恐怖を煽り、自己肯定感の低下を招く可能性があります。
また過剰な賞賛は子どものプライドを必要以上に高くしてしまうなどの影響もあるため注意が必要です。
存在を否定する言葉
イスラエル生まれのアメリカの心理学者ハイム・ギノット氏の有名な著書「Between Parent and Child: New Solutions to Old Problems」では、親子間のコミュニケーションの重要性や、親が子どもに対してどのように接するべきかについて説明しています。
著書の中でも否定的な言葉や批判が子どもの自己肯定感や自尊心に悪影響を与えると説明されています。親が子どもの行動や感情を否定することで、子どもは自分が受け入れられていないと感じる可能性があります。
なかでも避けるべき言葉は「子どもの存在そのものを否定するような言葉」です。
たとえ冗談でも子どもは言葉をそのまま受け取ってしまいます。「生まれてこなければよかったんだ」と思いかねません。
親がどんなに感情的になったとしても、口にしてはいけない言葉です。
子どもの頃に存在を否定されるような言葉をかけられると、大人になっても「どうせ自分なんか・・・」「自分にはできるわけがない・・・」など、自己肯定感が育まれないままになってしまいます。
人と比べる言葉
アメリカの心理学者ヘンダーロング氏らによる研究では、子ども同士の比較に基づく賞賛が、子どもの内発的動機付けを低下させ、自己肯定感に悪影響を与える可能性が示されています。
誰かをお手本にして欲しいという思いで親が言ってしまう言葉は子どもにとっては全く違ったように受け止められます。
「自分を見てくれていない」「自分は大切じゃないんだ」と思う原因になります。比べる場合は子ども自身の過去と比べましょう。過去と比較して子どもが成長した部分があるはずなので、努力が良い方向に進んでいるというメッセージを伝えましょう。
Ginott, H. G. (1965). Between parent and child: New solutions to old problems. Macmillan.
まとめ
親の何気ない言葉でも、子どもに多大な影響を与えます。自己肯定感を育むきっかけになったり、大人になっても心に残る傷になったりもするのです。
「声がけが難しい」と感じるかもしれませんが、目の前の子どもにきちんと向き合い、子どもを1人の人間として尊重し、今回ご紹介した声がけを参考に考えてみましょう。
自己肯定感を高める声がけをすることで、チャレンジ精神や他の人を尊重すること、失敗に折れない心、人の話を聞ける素直な心も育めるでしょう。