子どもの思考力

子どもの思考力を鍛える遊び4選|明日から実行できる子どもへのサポートもご紹介

近い将来、ルーティン作業などの多くは、AIが担っていくことが増えるといわれています。

そのような時代を生きる子どもが将来社会で活躍する際に、何かを新しく発想したり自分で考えて動いたりするなどの思考力が求められます。

しかし、思考力を向上させるにはどうしたらよいのかわからない方も多くいらっしゃると思います。この記事では「思考力」をわかりやすく分解して考え、思考力の成長を助ける遊びについても紹介します。

思考力を育てるためには「実行機能」を鍛える

思考力とは、言い換えれば、自ら考え抜く力とも捉えられます。経産省が提唱する社会人基礎力の一つに、考え抜く力が含まれており、その構成要素は以下とされています。

  • 課題発見力
  • 創造力
  • 計画力

また思考力と関連する素質に「実行機能」というものがあります。

実行機能は、目標や道筋、計画を実行することに関わる脳の機能で、そのために必要な感情コントロールや時間の使い方についても関わってきます。

実行機能の高い人ほど、自分自身の立てた目標に向かって努力することができ、夢を叶える可能性が高い傾向にあります。

カナダの認知発達心理学者Adele DiamondのExecutive Functionsの研究では、実行機能は以下の3つで構成されていると言われています。

  • 抑制力(Inhibition)
  • ワーキングメモリ(Working Memory)
  • 認知的柔軟性(Cognitive Flexibility)

この3つの要素についてそれぞれ紹介していきます。

参考:
経済産業|「人生100年時代の社会人基礎力について」

Diamond, A. (2013). Executive Functions. Annual Review of Psychology, 64, 135-168. DOI: 10.1146/annurev-psych-113011-143750.

抑制力とは

抑制力とは簡単に述べると「自分をコントロールする力」のことです。

抑制力を保持することで、衝動的な行動やその場に不適切な行動を抑えることができます。

例えば、子どもが学校や習い事などで何かを質問された時に、最後まで聞かずに思いついた言葉を反射的に答えてしまうというのはよく見られる風景かと思います。

抑制力が身につくと、質問を聞いているのは自分1人ではなく、ここは学校であるということに意識を向けることができ、さらに最後まで質問を聞いた上で思考することができます。

抑制力を身につけることで衝動的な行動を抑え、しっかりと頭で考えて行動することができます。

ワーキングメモリとは

ワーキングメモリとは、作業に必要な情報を短期的に保持する力のことです。ワーキングメモリは並行処理をする上で必要な力で、計算や読書などでも自然と活用されています。

例えば、「5+3+8」のような計算では、まず頭の中で「5+3=8」を計算した後で、そこで出た答えの「8」を覚えておいた上で「8+8=16」の答えを出します。

このように、答えを覚えておいたり必要なくなった計算を忘れたりする処理がワーキングメモリの働きなのです。

このような視覚的な情報の保持だけでなく、読書や映画鑑賞等でひつような言語的・音声的な情報の保持も行われ、さらにその情報から意味を理解するための処理が行われます。

ワーキングメモリが弱いと、読み書きや計算が苦手だったり複数の指示が覚えられなかったりするなど、学校での困りごとも起こりやすいと言われています。

認知的柔軟性とは

認知的柔軟性とは、状況や課題に応じて思考や行動を柔軟に変えて適応させていく能力のことです。認知的柔軟性が高い場合、例えば困難に直面した際に、あらゆる視点や見解、アイディアを用いながら、解決策をより多く見出すことができます。

これらの要素を伸ばすことで実行機能が高まり、結果として思考力にプラスの影響を与えます。

子どもの思考力を伸ばすための遊び

先ほどの論文によれば、実行機能を伸ばすためには、遊びや学習活動を通じて伸ばす方法が提案されています。以下のような活動やゲームは思考力を育成するのに役立つでしょう。

1つずつ紹介していきます。

規則や手順に従うゲーム

すごろくや人生ゲームのようなボードゲームや、カードゲームなどルールに従ってプレイするゲームは、子どもの注意力や自己制御力を鍛えるのに役立ちます。

例えば、グランディング株式会社の「街コロ」というボードゲームは世界的にも大人気のボードゲームです。

サイコロを使ってお金を増やしながら施設を構築していく街づくりゲームで、子どもから大人まで夢中になって遊ぶことができるのでおすすめです。

また、アルゴは算数オリンピック委員会と数学者ピーター・フランクル氏が共同で発明・開発したゲームです。

ルールに沿ってカードを並べ、対戦相手の伏せているカードの数字を推理して当てていくというもので、論理的に物事を考える力を育むことも期待できます。

実際に小学校でも授業で使われることのある人気のカードゲームです。

運動やアート活動

運動は注意力や自己制御力を向上させるだけでなく、ストレスを軽減し、心身の健康を維持します。短時間の運動で良いので習慣化していくことが大切です。

例えば、家族でジョギングしたり鬼ごっこで遊んだりするのも良いでしょう。また、アート活動は創造性や認知的柔軟性を促し、自己表現の力を養います。

指先を細かく使っていくため脳への刺激となり、思考力にも良い影響が期待できるでしょう。

ワーキングメモリを使う遊び

かるたや百人一首など、聞いた情報をもとにカードを取ることで、注意力やワーキングメモリを鍛えることが可能です。

かるたや百人一首は枚数を10枚程度に限定して行うことで、ワーキングメモリが苦手な子どもにも成功体験が積みやすいのでおすすめです。

パズルゲーム

ルービックキューブやスライドパズルなどのパズルゲームは、認知的柔軟性を鍛えることができます。

ボーネルンド社のマグ・フォーマーは、幼児から小学生まで今大人気のおもちゃで、三角形や四角形などの様々な形のピースがあり、磁石でくっつくようになっています。

平面でつなぎ合わせたり立体で動物やボールなどを作ることも可能です。

小さなピースを組み合わせることでいろいろな形を作ることができる体験は、認知的柔軟性への期待も高いと言えるでしょう。

子どもの思考力を伸ばすために親ができること

興味のもてる遊びやゲームを準備する

先ほど紹介したような遊びやゲームを用意し、いつでも手に取れるような環境づくりをすることが大切です。

ここでは子どもの気持ちを尊重するようにして、興味をもったものには全力で応援したり一緒に楽しんだりするようにしましょう。

積極的に一緒に遊ぶ

遊びを通して思考力を伸ばすことを狙う場合には、親を中心とした周りの大人が積極的に一緒に遊ぶことが大切です。

その際、一方的な命令や指示などはせず、あくまで子どもの主体性を尊重しましょう。

例えば、以下のような声かけは非常に有効です。

  • 「どうしたらいいと思う?」「どうしてこう思ったの?」など考えることを促す声かけ
  • 「ゆっくり考えてみよう。」など時間をとってゆっくり考えることを促す声かけ。
  • 「こういう手もあるのではないかな?」さりげなくヒントになる声かけ。

大人の声かけで子どもの思考を揺さぶり、さらに深く追及させていくことが大切なのです。

子ども自身の考えをしっかりと出させる

思考力を伸ばすためには、子ども自身が自分の考えをしっかりともつことが大切です。

自分で考えたことをしっかりと口に出させたり、行動させたりしてみましょう。

失敗してほしくないという親心から、「〇〇しなさい。」と子どもに対して強制力を働かせすぎてしまうことは、実行機能の低下を起こし、子どもの自主性を失わせてしまいます。

例えばボードゲーム中に揉めてしまったり怒って途中でやめてしまったりすることがあっても、自分がしたことで周りはどう思うだろうかと子ども自身に問いかけて、その後の行動は子どもに決めさせることが大切です。

そのような経験の1つ1つが、思考力を伸ばしていくのです。

まとめ

思考力の向上と実行機能の密接な関係や思考力を深める遊び、親ができることなどについて紹介しました。

本来、思考力というのは生活していく上で自然と向上していくものです。

しかし、思考力にも個人差があり、その原因は生まれもったものだけでなく、周りの環境が大いに関係しているといえるでしょう。

思考力に関するゲームや集中できる環境を用意することも大切ですが、それ以上に「よく考えたね!」「あなたはどう思うの?」など、何事においても子どもの主体性を尊重したポジティブな声かけが大切です。

ぜひ、今回の記事を参考にしてみてください。

ABOUT ME
この記事の監修者 - 井上 顕滋
31年の経営者経験を持ち、主に教育系メディア事業、人材育成企業、子どもの非認知能力強化プログラム「Five Keys」を運営する財団法人、飲食事業などを経営。 人材育成のキャリアは社員教育からスタートし、成果を上げる中で多くの経営者から問い合わせが増加し、2004年に人材育成企業「リザルトデザイン」を設立。 クライアントの業績に大きく貢献する中で、社員の成果には個人差があることを痛感し、その原因を解明するため、世界的権威である研究者および実践者から最新の心理学と脳科学および「人の心に変化を生み出す最先端技術」を徹底的に学び、実践を重ねた結果、成果とモチベーションの向上を可能にするリザルトプログラムを開発。 また上記「成果の個人差」の真因と、満足度の高い充実した人生を送れるかどうかの鍵が、幼少期(12歳まで)の「親の関わり方」と「与える教育」にあることを発見し、親への教育講座を開催。
子育てのとびら編集部
明日から実践できる子育てに役立つ情報を発信していまいります。