子どもの読解力は、ただ学校の国語の点数を取るだけではなく、将来大人になっても求められる重要なスキルです。
しかし、子どもの読解力をどのように伸ばすべきかについて悩んでいる方も多いかと思います。読解力を高める効果的な方法の一つに「音読」があります。今回の記事では明日から実践できる効果的な音読の方法について紹介します。
子どもの読解力は社会人になっても重要なスキル

OECDが公表している文献によると、21世紀に求められる主要な資質・能力、すなわちキー・コンピテンシーには、以下のような要素が求められるとされています。
- 言葉や知識を使ったコミュニケーション
- 文化や価値観が異なる異質な集団との交流
- 自律的な活動など
また一つ目に挙げた「言葉や知識を使ったコミュニケーション」を伸ばしていくためには「読解力」が重要とされています。
この読解力には、
- 情報の選択
- 情報の解釈
- 熟考
- 評価
といった4つの要素から成り立っています。
読解力は学校の勉強のためだけではなく、大人になっても必要になるスキルです。
例えば、会社の仕事でも、何かしらトラブルが起きた際に膨大な量の情報から解決策を見つけなければいけません。そのため子どもの頃から読解力を身につけることで、将来大人になっても活躍できる可能性が広がります。
参考:OECD ”THE DEFINITION AND SELECTION OF KEY COMPETENCIES; Executive Summary”
読解力の向上に、なぜ音読が効果的なのか?

子どもの頃に学校で何度も音読をさせられた記憶があるかと思います。学校が音読を導入する理由は、音読が読解力を高める上で非常に重要な役割を果たしているためです。
以下では、音読が読解力に与える影響について解説します。
言葉の使い方や文法への理解が深まる
幼児期の識字能力開発における研究者でもあるスーザン・ノイマン氏の研究によれば、音読は読み書き能力を発展させる基盤になるとされています。
具体的には、子どもたちに文章を流暢に読む練習をさせることで、文章の始まりや終わりに使う言葉や、接続詞の使い方など、文法全体に対する理解などが深まるとされています。
Reading Rockets”Reading Aloud to Build Comprehension”
新しい表現や言葉に出会う機会が増える
音読をすることによって、子どもたちが普段の会話で使用しない単語や、日常会話よりも少しレベルの高い表現や言い回し、正しい文法を音で学習することができます。
例えば、普段の日常会話では、お互いに知っている言葉で話を組み立てて会話をしています。しかし、本では普段会話で使わない表現が含まれていることも多く、そのような表現を意図的に声に出して読むことで新しい語彙に触れる機会になります。
本などを黙って読む「黙読」では、馴染みのない単語や表現を無意識に読み飛ばしてしまうこともありますが、音読は一つ一つの文字を確実に声に出して読むため、より多くの表現や言葉を確実に知るようになります。
物語の繋がりを予測できるようになる
ナショナル大学の准教授、エニド・アコスタ-テロ氏の研究によると、音読によって、その言語能力や読解力の発達に大きなメリットがもたらされるとされています。
例えば、子どもが「この話の先はどうなるんだろう」と物語に対して興味を持ちながら音読することで、物語全体のつながりを感じ取り、読解力の向上に寄与すると考えられています。
そのため、子どもが興味を持ちそうな本を選んで、音読させることで、良い効果がより見込めるかもしれません。
自分の音読を耳で聞くことで理解が深まる
筑波大学が公開している論文によれば、音読が漢字単語の読解力に影響を与えるとされています。
子どもが文章や単語を読むとき、読んだ文字が音として頭の中に入ってきます。この音を思い浮かべる能力が語彙力を高め、文章を理解する力に影響を与えていると言われています。
例えば、母親が子どもと一緒に読む本の中で、漢字の読み方を教える場面があります。子どもと一緒にその漢字を音読することで、漢字の意味への理解が深まるとともに、その単語の意味や使い方を音で覚えることができるとされています。
効果的な音読の方法とは?

音読といってもただ本を読ませるだけではなく、これから紹介するポイントを意識して音読をさせてみましょう。
親と一緒に大きな声で、ゆっくり元気よく読む
北星学園大学文学部の松浦年男教授の論文「小学校国語科における音読教育の目的と効果」では、以下のような音読の方法が読解力を高める上で有効とされています。
- 親と一緒に音読する
- 大きな声で、ゆっくり、元気よく読む
- 文章のなかから、自分の好きな場面を見つけて音読する
- 登場人物や情景を想像しながら音読する
- 登場人物の気持ちを考えて、音読で表現してみる
- まずは登場人物のセリフに着目して音読する
例えば、母親が子どもと一緒に話の場面を演じたり、音読の途中で、登場人物の気持ちについて子どもに質問し、考えさせながら音読することで、子どもはその場面の登場人物の気持ちをより深く理解することができると考えられています。
親が読み聞かせることも効果的
ミシガン大学マルサル教育学部イン・シュー博士らの研究によれば、子ども自身が音読する以外にも、親が音読し、読み聞かせする場合にも効果があるとされています。
子どもがひとりで文字だけの本を読むのは難しい場合が多いため、絵本などわかりやすい本で、大人の音読の声を聞きながら絵の内容や話を理解することで、物語を絵と関連付けて理解することができます。
さらに、最近ではスマートスピーカーなどによる読み聞かせも、子どもの読解力を向上させる効果が確認されています。しかし、大人が直接読み聞かせる方法は、より多くの語彙の理解を進めるなど、より高い効果をもたらす可能性が考えられています。
親の読み聞かせには、感情やニュアンスを含めた読み方や、子どもに物語の感想を聞くなどのコミュニケーションも発生するため、これが子どもの読解力を深める要因となると考えられます。
そのため、子どもの読解力を高めるためには、音読もさせながらも、大人が直接絵本を読み聞かせることも同時に行うことがおすすめです。
まとめ

子どもの音読は習慣的にすることで、将来的に大人になった時にも仕事で役立つ読解力を身につけることができます。
最近では、インターネットの普及により、情報過多な時代になりましたが、そのような時代に正しく情報を選択するためにも、読解力を子どもの頃から伸ばしていきましょう。