子どもの自己肯定感

子どもが素直に謝らない心理とは? 素直に謝る姿勢を伸ばすために必要なサポート

「なんですぐに謝らないんだろう」と子どもに間違いがあった時に素直に謝れないと悩む方は多くいらっしゃいます。その都度「謝りなさい!」と注意してもなかなか改善しないのではないでしょうか。

子どもが素直に謝れるようになるためには、まずは子どもの心理状況を理解して、その上で親が積極的にサポートすることが重要です。

今回は子どもが素直に謝れない原因とその解決策について解説します。

素直に謝る能力はチームワークの形成においても重要

政府は次世代の人材育成の方針として「社会人基礎力」を公表し、その中でもチームワークの必要性を強調しています。

チームワークにおいて、誰かが助けてくれた時に感謝の気持ちを表現したり、自身のミスに対して率直に謝罪し、改善策を提案したり行動に移したりすることは、チーム内の信頼と協力関係を構築する上で重要です。

しかし、自分のミスを認めず、他人に責任を押し付けたりする癖があると、今後大人になり社会で生きていく上で、良好な人間関係の構築が困難になる可能性があります。

そのため、素直に謝罪できる能力は、人生を通じて重要なスキルといえるでしょう。

以下では、子どもが謝罪できない原因と、それに対してどう対応すべきかについて深く掘り下げていきます。

参考:人生100年時代の社会人基礎力について

子どもが謝罪できない原因

子どもが素直に謝れるようになるためにも、なぜ謝罪ができないのかについて先に理解する必要があります。以下では子どもが謝罪できない原因について解説します。

他者の視点を理解する能力が発達段階である

私たち大人から見ると「うちの子どもはなぜ自分の間違いを認めないんだろう」、「なぜ謝れないんだろう」と理解に苦しむ瞬間があるかもしれません。

カリフォルニア大学の研究によれば、5歳ごろから他人の感情を理解した上でコミュニケーションをとるようになるといわれています。その歳になって完璧にできるという訳ではなく、その歳から徐々に発達していくため、小学低学年の子どもでも他人の視点を理解する能力がまだ発達段階である可能性があります。そのため、場合によっては謝罪することが困難であると考えられます。

さらに、幼い子どもの場合はまだ「謝罪」という概念を完全に理解し、その必要性と意義を把握していないのかもしれません。これに対する解決策は後ほど解説しますが、親がお手本として示すことや、謝罪の機会を見つけて子どもに提供することで、子どもが他人に対する理解と共感を深めるのに役立ちます。

親が率先して謝罪しない

子どもが「ごめんなさい」と自然に言えるようになるには、親の言動が重要です。カリフォルニア州大学の研究によれば、親が謝罪をしない場合、子どもたちは謝罪の必要性や方法を学ぶ機会を逃してしまうリスクがあるといわれています。

例えば、「今日、忙しくてつい怒ってしまったね。ごめんね」と反省と謝罪を示すことで、子どもに「間違えを認めて謝る」ことの大切さを伝えることができます。

子どもが素直に謝らない時について「素直に謝りなさい」と言いたくなることはありますが、その前に一度、自分自身の行動を振り返る時間を持つことも必要かもしれません。

参考:The Socialization of Apology  

子どもが素直に謝れるようになるためには

それでは、子どもが素直に謝れるようになるためには、どのようにサポートするべきでしょうか。以下では、心理学の研究などをもとに解説します。

親自身が率先して謝罪する

先ほども解説しましたが、カリフォルニア州大学の研究によれば、親が謝罪すると、子どももその姿勢を真似することが確認されています。これは親の行動が子どもの行動模範となることを示しています。

逆に考えると、親が何か間違えたときでもそれについて謝罪しなければ、子どもはその行動から「この状況では謝る必要はないんだ」という誤った理解をしてしまいます。

極端な例ですが、もし誰かとぶつかった時に、謝らなかったり悪態をついたりする親と、すぐに謝罪する親がいたとします。この二人の中で、子どもにとってお手本になるのは、明らかに後者の親です。

もちろんすべての事に対して理由もなく謝罪する必要はありませんが、自分が何か間違いを犯したと感じた場合や、自分の行動が他人に迷惑をかけてしまった可能性があるときには、親が率先して非を認め、謝罪する姿を子どもに見せることが大切です。

また親も人間なので、間違いをするものです。例えば、子どもに対しての接し方が強くなってしまったり、厳しい言葉をつい言ってしまった時にも、親自身も素直に謝ることが重要です。

そのような行動を通じて、子どもは親から謝罪の大切さとその姿勢を学ぶことができます。

 子どもたちが自発的に謝罪する機会を増やす

先ほど引用したカリフォルニア州大学の研究によれば、子どもが他人に迷惑をかけた場合、親が子どもに対して謝罪するよう促すことが大切だと指摘しています。

もし子どもが友達と口論になり、その友達を傷つけてしまった場合、親は子どもに適切な謝罪の方法を教える必要があります。

例えば「昨日、公園で遊んでいたとき、あなたが友達に『サッカーはあまり上手じゃないね』と言っているのを見ていたけど、その言葉で、友達はとても傷ついたと思うよ。明日、学校でその友達に会ったら、『昨日は嫌なことを言ってしまって、ごめんね。』と謝ろうね。」と伝えてみましょう。

このように、具体的な状況と言葉を用いて謝罪の方法を示すことで、子どもはどのように謝罪すべきかを理解することができます。親がこのような実践的な指導を積極的に行うことで、子どもは謝罪の重要性とその方法を身につけることができます。

「謝りなさい!」だけで終わらず、なぜ謝るのかの理由を添える

ミシガン大学のCraig E. Smith教授らのチームによる研究によれば、親は子どもに謝罪の重要性を理解させるために、特定の理由を提示することが効果的と言われています。

例えば、子どもが友人のおもちゃを誤って壊してしまった状況を考えてみましょう。この場合、親がお友達のおもちゃを壊してしまったから、「謝るべきだね。もし、自分の大切なおもちゃを友達に壊されたらどんな気持ちになる?もしその壊した子が心から「ごめんね」って言わなかったら?と問いかけることで、子どもは謝罪の重要性を理解します。

このように、親が積極的に子どもに謝罪の方法やその理由を教えることで、子どもは自身の過ちを認識し、適切な対応を学びます。これは子どもが他人との関係を構築し、共感力を育てる上でも重要なスキルです。

参考:When and Why Parents Prompt Their Children to Apologize: The Roles of Transgression Type and Parenting Style

まとめ

本日は、子どもの謝罪について解説しました。子どもはまだ適切なタイミングで謝罪することが難しいかもしれませんが、経験とともに伸ばすことができるでしょう。

子どもが素直に謝らないと悩んでいる方は今日紹介した内容を参考にしてみてください。子どもも謝罪の本当の意味を理解すると思います。

ABOUT ME
この記事の監修者 - 井上 顕滋
31年の経営者経験を持ち、主に教育系メディア事業、人材育成企業、子どもの非認知能力強化プログラム「Five Keys」を運営する財団法人、飲食事業などを経営。 人材育成のキャリアは社員教育からスタートし、成果を上げる中で多くの経営者から問い合わせが増加し、2004年に人材育成企業「リザルトデザイン」を設立。 クライアントの業績に大きく貢献する中で、社員の成果には個人差があることを痛感し、その原因を解明するため、世界的権威である研究者および実践者から最新の心理学と脳科学および「人の心に変化を生み出す最先端技術」を徹底的に学び、実践を重ねた結果、成果とモチベーションの向上を可能にするリザルトプログラムを開発。 また上記「成果の個人差」の真因と、満足度の高い充実した人生を送れるかどうかの鍵が、幼少期(12歳まで)の「親の関わり方」と「与える教育」にあることを発見し、親への教育講座を開催。
子育てのとびら編集部
明日から実践できる子育てに役立つ情報を発信していまいります。