子どもの自己肯定感

「うちの子どもはなぜ打たれ弱い?」失敗してもおれない心を育てるためには

「子どもが一度失敗するとすぐに挫折してしまう」と子どもの打たれ弱さに悩んでいる親も多くいらっしゃるかと思います。

小さい頃から打たれ強さを持っている子どもは多くないものの、苦難も多い人生において少しでも子どもの打たれ強さを伸ばしたいものです。

今回は、子どもが打たれ弱い時の心理について解説し、その状況を改善する方法についても紹介します。

これからの時代は失敗しても折れない心が重要

現代は日々の変化が激しく、新たな物事に挑戦することが求められます。失敗するたびに、自分を責めてしまうのではなく、失敗を学びの一部として受け入れることが重要となります。

これからの時代は、これまで「最良」とされていたものが、テクノロジーの進歩などにより、「時代遅れ」となる状況が頻繁に発生します。

例えば、最近ではChatGPTの登場により、多くの仕事がAIに代替され始めています。AI登場により人間がやっていた作業が急に不要になったり、複雑な計算なども全てAIがものすごいスピードで処理してくれるので、「仕事の定義」も変わりつつあります。

過去のやり方や考え方に固執することがリスクになる時代になり、挑戦や失敗から得られる学びを重視する姿勢は、子どもの人生にとっても重要です。

失敗を恐れずに挑戦すること、そして失敗から学びを得る能力を養うことで、子どもたちは自分の可能性を広げることができます。この土台を作るためにも、子どもたちの打たれ強さを伸ばす必要があり、変化の激しいこれからの世界で成長していくための鍵となります。

打たれ弱い子どもの心理状況

まず、子どもが「打たれ弱い」と感じる状況について考えていきましょう。

例えば、新しい事をはじめたものの、失敗するとすぐに挫折したり、障害にぶち当たった時に逃げる、叱られたり指摘された時に立ち直れないということもあります。

このような「打たれ弱さ」には、「レジリエンス」という概念が深く関わっています。「レジリエンス」とは、「心の強さ」や「逆境に対する適応力」を指し、逆境や困難、強いストレスに直面したときに適応する精神力などを意味します。

ミネソタ大学児童発達研究所のAnn S Masten教授の研究によれば、レジリエンスが低下する理由は以下が挙げられます。

子どもが過度なストレスを感じている

ストレスを感じる状況は、子どもに対して悪影響を及ぼし、レジリエンスの低下につながります。例えば、過度に親からの愛情が不足したり、友人関係の悪化や家庭内のトラブルなどがこれにあたります。

子どもが日々の生活のなかで起こるストレスが大きい場合、子どもはうまく対処できず、精神的なダメージを引き起こす可能性があり、結果としてレジリエンスの低下につながると考えられています。

だからといって、子どもに一切ストレスを与えてはいけないということではありません。ストレスに対処するスキルや経験は人生を通じて必要になるものなので、過剰にストレスを取り除こうとすることは、かえって子どもの人生に悪影響を与えることも認識しておく必要があります。

自尊心や自己効力感が低い

自尊心が低い子どもは自分自身を適切に評価できず、困難を乗り越える自信が欠けている可能性があります。また自己効力感が不足している子どもは自分の能力を疑う傾向があり、困難に向き合うために必要な自信を持つことが難しいとされています。

そのような状態ではレジリエンスを維持することが難しいといえます。

認知的柔軟性が欠けている

認知的柔軟性が欠けていると、新たな解決策を思いつくことが難しくなり、失敗などに対応する能力が向上せず、結果としてレジリエンスが低くなります。

認知的柔軟性とは、新しい状況や変化に対応して思考や行動を適応させる能力のことを指します。

例えば、子どもが新しい環境で友達を作ることに困難を感じているとしましょう。以前のクラスでは、同じ好きなアニメについて話すことで友達を作っていたかもしれませんが、新しい学校ではそれがうまくいかないかもしれません。ここで認知的柔軟性が欠けていると、子どもは同じ方法を繰り返し試すだけで、他の新たな解決策を考えることが難しくなるでしょう。

感情をコントロールする能力が低い

感情をコントロールすることが苦手な子どもはリスクや困難に対応することが難しいとされています。

例えば、勉強中にどうしても理解できない問題に直面した場合、感情をコントロールできない子どもは苛立ちを感じやすく、それによって怒ったり、落ち込んでしまい、感情によって適切な判断ができなくなる可能性もあります。

その結果、問題に向き合って解決しようとするエネルギーを失うかもしれません。

このような子どもは、困難な状況に遭遇したときに前向きに取り組むことが難しくなり、その結果としてレジリエンスが低下します。

家族や友人からのサポートが不足している場合

親や兄弟、姉妹からの理解が得られない子どもは、困難な状況を乗り越えるために必要なサポートを受けられず、自分の問題を自分で解決しなければならないという重圧を感じることがあります。

また学校など子どもが所属するコミュニティからの適切なサポートがない場合、子どもは孤立し、結果として困難から立ち直ることが難しいということがわかっています。

参考:Developmental Cascades: Linking Academic Achievement and Externalizing and Internalizing Symptoms Over 20 Years

子どものレジリエンスを高めるためにチェックすべきポイント


それでは子どもが打たれ強くなるためにはどのようなサポートができるかについて、ミネソタ大学のレジリエンスに関する研究に基づいて一部紹介します。

レジリエンスは以下の要素が絡み合っていると言われています。子どもの状況は以下を満たしているかを確認してみましょう。

  1. 親子の深い絆
    親と子どもが良好な関係にあり、強いつながりがある状態や周囲から十分なサポートが受け入れられている状態
  2. 帰属意識
    子どもが所属するグループとつながりを感じていたり、良好な関係を構築している状態
  3. 自己管理能力
    子どもが自分自身を管理し、自制心を持つ能力や、家族の規則を守れている状態
  4. 自分で物事を進める主体性
    子どもが自身の行動や選択に責任を持ち、積極的に問題に取り組めている状態
  5. 問題を解決するための計画性
    個人が困難な状況に対して具体的な目標を設定し、適切な戦略を立てられている状態
  6. 未来に対する楽観的な考え
    子どもが未来に対してポジティブな見方や期待を持てている状態
  7. 達成したいという意欲
    個人が自己成長やスキルの向上に対して強い動機付けを持ている状態
  8. 物事に対して目的と意味を見出す
    自身の人生や行動に対して意味や目的を見出せている状態

子どもが置かれている状況によって、どの部分を改善するべきかは変わってきますので、子どもの様子を見ながら課題に感じている部分から改善していきましょう。

参考:Resilience in Development and Psychopathology: Multisystem Perspectives 

まとめ

子どもの打たれ強さは「レジリエンス」が深く関わっていますが、レジリエンスの成長はあらゆる要素が絡み合っています。

そのため、とにかくメンタルだけを強くすればよいという訳ではなく、親子関係や子ども自身の自己管理能力、主体性や達成意欲などもまた注意する必要があります。

子どもが打たれ弱いと感じる時は無理に我慢を強制するのではなく、子どもの状況にあわせてサポートしてあげましょう。

ABOUT ME
この記事の監修者 - 井上 顕滋
31年の経営者経験を持ち、主に教育系メディア事業、人材育成企業、子どもの非認知能力強化プログラム「Five Keys」を運営する財団法人、飲食事業などを経営。 人材育成のキャリアは社員教育からスタートし、成果を上げる中で多くの経営者から問い合わせが増加し、2004年に人材育成企業「リザルトデザイン」を設立。 クライアントの業績に大きく貢献する中で、社員の成果には個人差があることを痛感し、その原因を解明するため、世界的権威である研究者および実践者から最新の心理学と脳科学および「人の心に変化を生み出す最先端技術」を徹底的に学び、実践を重ねた結果、成果とモチベーションの向上を可能にするリザルトプログラムを開発。 また上記「成果の個人差」の真因と、満足度の高い充実した人生を送れるかどうかの鍵が、幼少期(12歳まで)の「親の関わり方」と「与える教育」にあることを発見し、親への教育講座を開催。
子育てのとびら編集部
明日から実践できる子育てに役立つ情報を発信していまいります。