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子どもの「聴く力」を伸ばす方法は?家庭でも実践できる聴く力を伸ばす方法を紹介

子どもの「聴く力」を伸ばす方法は?家庭でも実践できる聴く力を伸ばす方法を紹介

子どもと話している時、「何回も同じことを注意している」、「言ったことを覚えていない(聞いていない)」など、日常会話の中で子どもの「聴く力」について心配になることもあると思います。

聴く力は、社会で求められるあらゆるスキルに影響するため、子どもの頃からトレーニングで鍛える必要があります。今回は子どもの聴く力がなぜ重要か、またそれをどのように鍛えることができるのかについて解説します。

子どもの聴く力は社会人になるための重要な土台

「聴く力」とは単に人の話を正確に聞き取るだけではなく、相手の感情や状況、その上で聞いた内容をもとに、相手の意図を理解する力のことを意味しており、コミュニケーションにおいても重要な要素の一つです。

コミュニケーションと聞くと、一般的に人とうまく話せることや自分の意見を的確に伝えることなどが連想されますが、「聴く力」もコミュニケーション能力の根幹といえます。

「話す」と「聞く」、どちらかが欠けてしまうとコミュニケーションは成立しないため、子どもが話し上手だからといって必ずしもコミュニケーション能力が高いとはいえません。

私たちの周りにも言いたいことだけ発言する上司や同僚がいますが、そのような方は周りから慕われていないことが多いのではないでしょうか。一方で聴く力を持っている人は周りから慕われ、リーダーや管理職を任されていることもあります。

ハーバード・ビジネス・レビューで多くの注目を集めた論文「飛びぬけたリーダー」の執筆者であるジャックゼンガー氏にによると、組織内で地位や役職が高い人ほど、人の話を聞くことを好む傾向があるということがわかっています。

つまり聴く力を持つことで、将来的にも重要な仕事を任されたり、役職を与えられる可能性があるともいえます。

参考:
Forbes Listening And Speaking: The Leader’s Paradox
https://www.forbes.com/sites/jackzenger/2017/08/17/listening-and-speaking-the-leaders-paradox/?sh=2f290fa12fff

子どもの聴く力を向上させることのメリットとは

以下では子どもの聴く力を向上させることで将来的にどのようなメリットがあるかについて解説します。

相手の意見や感情を理解できるようになる

ルイジアナ州立大学の論文によれば、聴く力は相手の意見や感情を理解するために重要なスキルであるとされています。

聴く力が不十分であると、相手の意見を誤解したり、意図を理解せず、傷つけてしまう可能性があります。例えば友達から勉強や習い事が上達しないことについての悩み相談を受けた時、友達はただ励ましてほしかっただけかもしれませんが、「それはA君の努力が足りないからだよ」と言ってしまう可能性があります。

そのような意見自体は正しいかもしれませんが、相談に至った背景や、相手の性格、感情も含めて聞くことができると、A君をより前向きにさせることができます。このように聴く力は周りの友達と信頼関係を築くために重要なスキルであり、このスキルは社会に出てからもより一層求められるようになります。

読解力が向上する

サウスカロライナ州大学の論文によれば、聞くという行為は文章を読む時と同じようなプロセスで理解することから、聴く力(聴解力)と読解力は相互に影響しあっているとされています。

これらのスキルは学校の成績を伸ばすためだけではなく、語彙力を伸ばすためにも重要であり、語彙力が向上することで、コミュニケーションの幅が広がります。

社会に出ると、電話やオンライン会議でコミュニケーションを取ることが多くなりますが、その際にこれらのスキルがなければ、仕事の話をチーム内にうまく連携できなかったり、語彙力がないが故に自分が伝えたい内容を十分に伝えられないといったリスクが発生します。

そのため、「聴く力」というのは社会で活躍するために非常に重要な土台となるため、子どもの頃から訓練しておきましょう。

参考:

Bodie, G. D. (2011). The understudied nature of listening in interpersonal communication: Introduction to a special issue. International Journal of Listening, 25(1), 1-9. https://doi.org/10.1080/10904018.2011.536462

Hogan, T. P., Adlof, S. M., & Alonzo, C. N. (Year of Publication). On the importance of listening comprehension. International Journal of Speech-Language Pathology, Volume(Issue), PageRange.

子どもの聴く力を鍛えるために必要なこと

社会に出ても重要になる聴く力ですが、以下では国際的に著名な教育者メアリー・レンク・ヤロンゴ氏の著書から、子どもの聴く力を向上させる条件について解説します。

ストーリーで伝えることを意識する

断片的な情報を子どもに与えるよりも、物語やストーリーで情報を伝えることで、子どもは情報をより処理しやすくなり、相手の意図を理解できるようになります。

例えば、「自分のおもちゃを片づけなさい」と伝えるよりも、「おもちゃを片づけないと、誰かがそれを踏んで怪我するよ。私も一度おもちゃを踏んで怪我しそうになったから、気をつけてね。」とストーリーで伝えることで、子どもは相手の意図を理解しやすくなります。

断片的な情報を伝えると、どうしても子どもが理解できなかったり、退屈に感じて、聞くことに集中できない可能性があります。子どもの聴く力を育てるためには、親の「話の組み立て方」も重要といえます。

話を聞きやすい環境を作ること

著書によると、子どもがいうことを聞いてくれない場合は、集中して話を聞ける環境を作ることが大事だとされています。例えば、子どもと大事な話をしたい時に、スマートフォンから動画が流れていたり、テレビがつけっぱなしになっていると、子どもの集中がそちらに向いてしまうかもしれません。

子どもに話をしっかりと理解してもらいたい場合は、集中をそらす可能性があるものを排除してから子どもと話すようにしましょう。

聞いた内容を復唱させてみる

聞いた内容を復唱させてみることも、聴く力を伸ばす上で効果的です。聞いた内容を復唱するためには、相手が話す内容を注意深く聞いておく必要があります。

子どもに復唱させる習慣を定着させることで、「いつもお母さんに『今言ったことを繰り返してみて』と言われるからちゃんと聞いておこう」と、親の言うことに耳を傾けるようになります。

そのため、頼み事をする際や大事なことを注意する際には、しっかりと子どもに復唱させるようにしましょう。

聞いた内容を実践させてみる

子どもの聴く力を向上させるためには、聞いた内容をすぐに実践させるということも効果的とされています。例えば、学校で図工の授業があった場合に、先生が言った手順を実際にやってみるということを繰り返すだけでも、聴く力を向上させる効果があるとされています。

これらを家庭でも実践する場合、例えば子どもと一緒に料理を作る時などは、親が料理の手順を説明して、それを子どもが聞きながら実践するなどの方法も考えられます。

もし、子どもが料理を進める上でわからないことがあればその時に質問して、聞いた内容をまた実践するというプロセスによって、聴く力を向上できると考えられています。

全てを一度に教えず、子どもから質問させることも重要

親が「子どものいうことを聞かない」と不満を述べるのは、親から子どもへの一方的なコミュニケーションが原因であることも考えられます。

例えば、何かを教える際に、全てを一度に教えるのではなく、一度に一つだけの指示を与えるなどして子どもから質問を促すようにしてみましょう。

例えば、先ほどの料理の例ですと、肉じゃがを作るとなった際に「まずはじゃがいもを切って」とだけ依頼すると子どもは「どうやって切るの?」「どんな形に切ればいいの?」「次は何をすればいい?」と、料理を完成させるために、質問する必要があります。

そうすることで双方のコミュニケーションが取れるようになり、子どもの聴く力を向上させることが期待できます。

参考:
Strategies for Developing Children’s Listening Skills. Fastback 314. Jalongo, Mary Renck

まとめ

子どもの聴く力は、これから社会に出ていく上でも非常に重要なスキルです。「大人になったらできるようになるかも」と放置せず、子どもの未来のためにもトレーニングを始めてみましょう。聴く力を身につけることで、多くのメリットを将来得ることができ、子どもの明るい未来を実現することが期待できます。

ABOUT ME
この記事の監修者 - 井上 顕滋
31年の経営者経験を持ち、主に教育系メディア事業、人材育成企業、子どもの非認知能力強化プログラム「Five Keys」を運営する財団法人、飲食事業などを経営。 人材育成のキャリアは社員教育からスタートし、成果を上げる中で多くの経営者から問い合わせが増加し、2004年に人材育成企業「リザルトデザイン」を設立。 クライアントの業績に大きく貢献する中で、社員の成果には個人差があることを痛感し、その原因を解明するため、世界的権威である研究者および実践者から最新の心理学と脳科学および「人の心に変化を生み出す最先端技術」を徹底的に学び、実践を重ねた結果、成果とモチベーションの向上を可能にするリザルトプログラムを開発。 また上記「成果の個人差」の真因と、満足度の高い充実した人生を送れるかどうかの鍵が、幼少期(12歳まで)の「親の関わり方」と「与える教育」にあることを発見し、親への教育講座を開催。
子育てのとびら編集部
明日から実践できる子育てに役立つ情報を発信していまいります。