子どもの目標達成スキル

すぐにあきらめる子どもの対処法は?目標を達成するまでにやり遂げる力を身につけるためには

「自分にできるだろうか」、「難しそうだからやめておこう」と自ら挑戦するのをやめてしまう「あきらめ癖」は、もともとの気質や幼い頃からの経験が関係してくるため、大人になってから克服しようとしてもなかなか難しいものです。

そのため、幼いうちにあきらめ癖を改善することができれば、子どもの未来にも良い影響を与えることが期待できます。

これまで多くの子どもたちの非認知能力の向上に向き合ってきたリザルトデザイン株式会社 代表取締役、(一財)日本リーダー育成推進協会 特別顧問、井上顕滋さんに、すぐにあきらめる子どもの対処方法と目標を達成するまでにやり遂げる力を身につけるために必要な親のマインドについて解説します。

諦め癖はなぜつく?自己効力感と自己肯定感の関係とは

Q.まず、あきらめ癖はどういう心理状況なのか教えてください。

あきらめ癖には大きく2つの心理状況が考えられます。

1つ目は、自己肯定感と自己効力感に絡むビリーフ(beliefs)です。ビリーフとは日本語で「信念」、「確信」、「思い込み」などと訳され、「どうせできない」、「達成できない」、「自分にはそんな能力ない」という自分を否定する系のビリーフがあります。

2つ目は父性愛の不足です。父性愛とは社会的な規範や秩序などを教え、子どもの「自立」を促す強い愛情のことで、これが不足すると子どもは「頑張るのが面倒くさいからやめる」とあきらめてしまう傾向が出てきます。

Q.あきらめ癖と自己肯定感・自己効力感の関係があるのでしょうか。

もちろん、それぞれ関係があります。

まずは「あきらめ癖と自己肯定感」の関係についてお話ししましょう。自己肯定感とは他人と比較することなく、自分自身の存在を認め、尊重することによって生まれる感覚のことです。失敗しても自分を否定することなく、再び困難に直面しても恐れずに挑戦する傾向があるでしょう。

しかし、自己肯定感が高い子どもだからといって、あきらめ癖がないわけではありません。このタイプの子どもは、自分の存在を肯定的に考えており、自分のことが好きですが、過去に成功体験が少なく、自分の中に証拠がないため「自分には自信があるが、できるかどうかは自信がない」とあきらめてしまうのです。

次に「あきらめ癖と自己効力感」の関係についてお話しします。自己効力感とは「自分にはできる」と自分の能力の可能性を認識していることを指します。

ただし自己効力感がある子どもでも自己肯定感が欠如している場合は、「自分は何のためにこれをやっているのだろうか」と、場合によっては目の前の試練を「義務」として捉えがちです。過去の成功体験があるためできなくはないのですが、続けていくうちに苦しくなり、目の前の試練に対して無気力になってしまいます。

ですから、自己肯定感と自己効力感のどちらか一方があればいいというわけではなく、両方あってはじめてあきらめ癖が改善されていくのです。

Q.まずは達成することが楽しいと思うような経験を持つことが重要ということでしょうか。

そうですね。まずは目標を達成することによって自己効力感が上がりますし、それを周りが認めてくれたら自己肯定感にも繋がります。

理想としては何か達成したことを自分の中でもお祝いして、さらに周りからも「おめでとう」、「すごいね。よく頑張ったね。さすがだね」と認められる快楽の体験を積むことです。

この快楽の体験によって、あきらめ癖が達成癖に変わっていくことができるのです。

ただし、父性愛が不足している場合は、よほど情熱があるものを見つけない限り、達成癖を付けることは難しいでしょう。

なぜなら父性愛が不足していると子どもの自立を妨げ、「こんなことやりたくない」、「なんで自分が親に従わなければいけないのか」と思ってしまうからです。その結果、あきらめて楽になろうとしてしまうのです。

父性愛が不足してあきらめ癖がついている場合は、本人が夢中になれる強烈な情熱が必要となってきます。

子どもの諦め癖はどのように定着していくのか?

Q.子どものあきらめ癖はどのように定着していくのでしょうか。

具体的には下記のようなことが挙げられます。

  • 親が他の子どもと比較したり、過度なプレッシャーを与えている
  • 子供自身が他人と比較している
  • 子どもがやりたいと感じていないことをさせている。
  • 子どもがやりたいと言って始めたものの、親が過度に練習を押し付ける

たとえば子どもが「サッカーをやりたい!」と言ってサッカー教室に通い始めたものの、意外とうまくいかず練習をさぼるようになり、自ら進んで選んだものをすぐに挫折してしまう子もいるでしょう。

この場合はさまざまな原因が考えられますが、1つは親が周りの子どもと比べるようなコミュニケーションをとってしまうことで子どもにプレッシャーを与えてしまうのはよくある話です。

また親ではなく本人自身が他人と比べて自分の位置を無意識的に確認していることもあるでしょう。なかには3歳ぐらいからサッカーをやってる子と比べて「あの子みたいにうまくやれないから無理だ」とあきらめてしまうのです。

これは親や子どもに「能力に対する認識の問題」があるからだと考えられます。能力には始めたタイミング・質や量の問題、また本人の情熱の問題が関わってくることを理解すべきです。

この知識がないと、表面上の情報だけで他人と比べて「自分は能力低くて相手は能力高い」と認識し、自分に対する自信がなくなってしまいます。

ただし、比較が全て悪いわけではありません。重要なポイントは、正しい比較対象を「過去の自分」にするべきだということです。勉強もスポーツも同じことが言えるでしょう。過去の自分と比べて「向上してきているかどうか」にフォーカスを当てられれば必ず伸びてくるはずです。

もちろん勉強もスポーツもどれだけ努力をしてもプラトー(学習や作業の進歩が一時的に停滞する状態)の場面が出てくるため、成長が止まっているように感じることもあるでしょう。

階段でたとえるなら踊り場にいる状態です。なかなか伸びない時期を超えるとまた成長する時期がくると知らず、このプラトーのときに「自分はもう上手くならないからここまでだ」とあきらめてしまうのではなく、親も子どももここを正しく認識して継続することが重要です。

諦め癖は切り替えが早い?諦め癖をどう捉えるべきか?

Q.ネガティブに捉えられがちなあきらめ癖ですが、ポジティブに考えるとあきらめ癖は「切り替えが早い」とも捉えられるのではないでしょうか。世の中には損切りが重要な場面も多々あると思います。

確かにビジネス場面ではあきらめて損切りするのが正しい場合もありますね。ただし、それは諦める理由にもよるのではないでしょうか。

なぜなら逃げ癖と切り替えが早いは違うからです。これを認識せずに逃げ癖や負け癖がつくと将来大変なことになる可能性が出てくるため注意が必要です。

最後までやり切る。簡単に諦めない大人に成長させるために親としてできることは?

Q.現代社会では何が正解で不正解かわからない中で行動の量や種類が求められ、何か一つのことを続けるのもリスクになるのではないでしょうか。これからの時代の子どもたちはどのように「あきらめるもの・あきらめないもの」を区別していけばいいのか教えてください。

これは難しい問題ですが、まずは簡単にあきらめない大人に成長させるために親として下記のことが重要です。

  • 勝ち癖をつけさせること
  • 自己の成長にフォーカスを当てること
  • 今回紹介した原因で思い当たる節があれば、改めて行動を見返すこと

まず勝ちぐせとは「目標設定して達成する癖がある人」のことであり、負けぐせは「目標設定してあきらめる癖がある人」のことをいいます。それが与えられた目標なのか、自分でやりたいと立てた目標なのかによっても全然意味が異なりますが、他人から与えられた目標は半分ノルマのようなものであり、子どもは嫌になってしまう可能性があります。

人から与えられた高すぎる目標は「達成できる」と思えず、これが続くと負け癖がつき「あきらめてきた。目標を達成できなかった」「だから次も達成できないだろう」というアイデンティティのビリーフにまで影響を及ぼします。

その結果、「自分は目標達成できないタイプだ。なぜなら自分が能力の低い駄目な人間だから」となってしまうのです。もうこうなってしまっては大問題で、子どもの行動にとんでもない悪影響を及ぼしてしまうでしょう。

Q.家庭で達成癖をつける具体的な方法を教えてください。

最初は低いレベルから目標設定をしていくことが重要でしょう。たとえばサッカーであれば、1ヶ月に1点以上決めると目標を設定し、達成できたらどんどん増やしていく、などです。

小学生であれば「1週間連続でお手伝いする」でもいいでしょう。就学前の幼稚園児であれば「3日連続玄関の靴揃える」「自分から挨拶する」でもいいですよね。

ここで重要なことは、自分でスモールステップで立てた目標を達成したら親は「達成できた!すごい!」と褒めることです。そうすることで子どもの中では「自分は達成できた」という証拠が1個積まれ、この積み上げが大切といえるでしょう。成功は成功の上に作られるというのはそういう意味なんです。

まとめ

あきらめ癖は大人になってからも仕事や私生活に影響が出てくるものです。あきらめ癖が親の無意識のコミュニケーションで形成されている場合は子どもへの関わり方を見直し、あきらめ癖を改善することが重要です。

今回紹介した方法などを参考にしながら、子どもの成功体験を一緒に積み上げてみましょう。子どもの挑戦する気持ちを伸ばすことで、将来、子どもが大きな壁にぶち当たったとき「自分にはできる」「これまでの経験があるからやってみよう」と前向きな考えで自らの能力を開花させることができるかもしれません。

子育てのとびら編集部
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