子どもの自制心は社会に出てからも重要なスキルになります。大人になると直面する問題はより複雑で難しいものになり、全て思い通りに解決できるわけではありません。
時には我慢が必要な時もあり、そのような苦難を乗り越えて人は成長していくものですが、この成長を実現するためにも自制心が重要です。自制心が不十分のまま育つと、節操がない大人になってしまう可能性もあります。
今回の記事では子どもの自制心の重要性や自制心を育てるための方法について紹介します。
なぜ子どもの自制心を育てることが重要なのか?
アメリカの心理学者であり、ポピュラーサイエンスの作家でもある、アンジェラ・ダックワース氏らが発表している論文によると、自制心を持つことで以下のようなメリットがあるとされています。
- 学校の成績への影響
- 同級生との良好な関係の構築
- 大人になった時の収入、貯蓄、健康などへのよい影響
このように自制心のある子どもは、学校のテストなどでよい成績をとったり、同級生と良好な関係を構築し、快適な学校生活を送ることができたり、また大人になってもタバコやアルコールを控え、健康的な生活を送るなど、長い人生において大きなメリットをもたらします。
自制心がない子どもの特徴
以下では、先ほどの論文の情報をもとに、自制心がない子どもがやりがちな行動について一部紹介します。
- 部屋を散らかす、その辺にゴミを捨てるなどの不適切な行動をとる
- 家庭内のルールを破る
- 何かを始める際に先に自分で試さず、誰かの助けを求める
- 授業に関係のないことをする
- 友達や兄弟と喧嘩をよくする
- 宿題を終わらせずに遊ぶ
- 授業に必要なものを忘れる
- 先生が言ったことを覚えておかない
- 聞くべきところで心が散漫になる
- 家庭や学校で腹を立てる
- 他の生徒の話を遮る
- 感情的になって先生や親に反抗する
これらは些細な行動に見えるかもしれません。しかし、「いつか治るでしょう」と目を逸らさず、子どもの行動に目を向ける必要があります。些細なことでも社会に出ると「大人になってもそんなことしているの?」と信用を失いかねません。
信用は社会に出て非常に重要ですので、子どもの頃から上記のような行動に注意しましょう。
子どもの自制心に影響を与える親の行動とは?
ユトレヒト大学のカトリン・フィンケナウアー氏らの研究によれば、親がどのように子どもと関わるかが子どもの行動や感情に大きな影響を及ぼすことがわかっています。具体的には、以下のようなポイントが挙げられます。
子どもをやりたい放題させている
ルールや規律がない状態で好き放題やってしまうことに慣れてしまうと、子どもが大人になった時にも分別がつかずにいわゆる「わがまま」な行動をとってしまうかもしれません。
子どもは何が良くて、何が悪いのかを親の言動から学びます。そのため、一般的に悪いことをしたときに子どもが叱られたり、注意を受けないと、その行動自体が許されるものだと判断してしまいます。
子どもに厳しくすることは体力がいるかもしれませんが、多くのことを学び吸収する間に教えることが重要です。
子どもが何をしているかを注意深く見ていない
子どもを注意深く見ていない場合、子どもが何をしているのか把握できず、何が正しいのかについて教える機会を見逃してしまいます。
例えば、デパートなどで子どもが走り回り、他の方に迷惑をかけているにも関わらず、親は子どもの行動に注意しないといった光景をよく見るかもしれません。
このような状況では子どもは善悪の判断がつかずに将来大人になった時に苦労する可能性があります。子どもが悪いことをした時に注意できるように子どもの行動などにも注意を払いましょう。
子どもの自制心を育むために家庭でできるトレーニング
有名なアメリカ人心理学者のW.ミシェル氏らが実施したマシュマロテストはご存じでしょうか。マシュマロテストとは、子どもの自制心や忍耐力を測定するために使用された実験です。
マシュマロテストの実験は以下のような流れで実施されました。
- 実験者は子どもに一つのマシュマロ(または他の魅力的な報酬)を見せます。
- 実験者は子どもに、すぐにそのマシュマロを食べても良いと説明します。しかし、実験者が部屋を出てしばらく後に戻った時に、もしまだマシュマロを食べていなければ、もう一つマシュマロを得ることができると説明します。
- 実験者は部屋を出て、子どもがどれだけ待つことができるかを観察します。
この実験の最も注目すべき結果は、子どもがマシュマロを長い間待つことができるほど、後の人生でさまざまな成功指標(学業成績、健康、社会での成功など)と相関すると示されたことです。
しかし、この実験の注意点としては、再度実験をした時には違う結果になったという報告もあるため、あくまで一つの研究結果として捉えるべきです。また大前提として、子どもの脳は自制心を司る領域がまだ未発達です。ここを理解した上でのトレーニングであることを忘れないでください。
これらのテストをもとに、家庭で実践できる自制心を伸ばすための訓練は以下のようなものが挙げられます。
「報酬の遅延」の練習
子どもにとってのご褒美(例えば、お菓子やゲームの時間)を得る代わりに、少し待つことでより大きな報酬(例えば、より好きなお菓子やより長いゲームの時間)を得られるという状況を作り出すことができます。
これにより、子どもは即時の誘惑を抑えてより大きな報酬を得るために待つという自制心を鍛えることができます。
関心ごとを他の対象に向ける訓練
先ほどお菓子を食べたばかりなのに、子どもがどうしても目の前のお菓子が欲しい場合、子どもの関心を別のところに逸らす方法もまた有効です。例えば、集中力を必要とする活動(例えば、パズルや読書)をすすめることで、子どもの注意を他に向けることができます。
状況に応じて感情や行動をコントロールする方法を教える
子どもが友達との喧嘩で怒っていたとき、「怒りに任せて叫ぶのではなく、落ち着いて自分の気持ちを言葉で伝えなさい」と提案してみましょう。これにより、子どもは落ち着いて話すなど、状況に応じて正しい行動を判断できるようになり、衝動的な行動を抑制する能力を鍛えることができます。
まとめ
自制心は大人に成長する上で非常に重要な土台になります。社会に出ると、周りからはより厳しい基準で評価されます。仕事を任せるにしても節操のない大人には新しい機会は与えられません。
子どもが今後、豊かな人生を歩むために自制心を意識して育てましょう。