子どもの目標達成スキル

子どもが集中しない原因を自己決定理論に基づいて解説。子どもの集中力を向上させる解決策も紹介

  • 子どもが習い事や勉強に集中しない
  • いつも途中で投げ出してしまう
  • いろんな方法試してきたけど、どうサポートしていいかわからない

子どもの集中力は多くの親が持つ共通の悩みかと思います。「子どもだから仕方ないか」と思いながらもこのまま大人になったらどうしようと不安になるかと思います。

集中力を継続するためには内発的動機付けや生活習慣などが深く関連しており、子どもが集中できない原因はそれらの必要な要素が満たされていないからかもしれません。

この記事では「自己決定理論」と呼ばれる子どもが集中するために必要な条件を解説し、集中力を高めるために親としてどのようなサポートができるかを紹介します。

子どもの集中力はなぜ重要?

「人生100年時代」や「第四次産業革命」に求められるスキルとして、経産省は「社会人基礎力」を発表しています。この社会人基礎力には「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」という3つの能力と12の能力要素で構成されています。

時代の変化に伴い、次から次へと知識やスキルが新しいものに変わり、スキルの再学習が求められる時代になります。

そのような時代において、学生のみならず、大人になっても継続的な学習や新しいスキルの獲得が重要視されることが予測され、新しいことを始めたり、習得するには集中力が必要です。

そのため子どものうちから集中力を養うことは、変化の激しい時代でも社会で活躍できる人材に育つために必要ですが、「子どもに集中がない」と悩む親も多くいらっしゃいます。

以下では集中力が続かない原因やその解決策について解説します。

子どもの集中が続かない原因とは

集中力がない場合の原因はいくつか考えられます。以下では「子どもの内発的動機付け」と「生活習慣」の観点から考えられる原因を解説します。

子どもがやりたくないことをやらせている

子どもの集中が続かない場合、その物事自体が子どもがやりたいことではない可能性があります。例えば親が子供によかれと思ってさせていることでも、子どもが自分で選んだ選択肢ではない場合、集中が持続することが難しくなるでしょう。

オーストラリア・カトリック大学ポジティブ心理学・教育研究所教授のRichard M. Ryan教授らの研究によると、物事に対するやる気などは「自己決定理論」と深く関連していることがわかっています。

自己決定理論は「自分でどれだけ物事を決定したのか」が、その後の動機づけに影響するという理論です。

子どもが目の前のことを心からやりたいと思い、集中し続けるためには、

  • 自分でもできると思える
  • 他の人とつながっている
  • 自由に動ける感じている

の3つの気持ちを満たすことで生まれてくると考えられています。上記の3つについて詳しく解説します。

自分でもできると思える気持ち

子どもが何かに取り組むためには、自分には達成できるという能力を子ども自身が感じることや、自分は優れているという心理状況を作ることが重要といわれています。

例えば何をやるにしても「自分にはできない」と最初から思っていると集中力は続かないでしょう。大人になってからもそんな経験はあるかと思います。まずは子どもが自分の能力を信じることが重要です。

他の人とつながっている

家族や友達など周囲から子どもに関心が向けられていたり、自分が受け入れられているような感覚もまた自己決定理論に影響すると考えられています。

人間は社会的な生き物であり、他者からの共感やつながり、励ましなどを求める傾向にあります。そのため、一人で黙々とやるよりも、家族や友人から「よくできたね」と褒められる環境があったり、また子どもの行動自体が他者に貢献する実感があれば、よりやる気を発揮して集中できるでしょう。

自分自身で意思決定するなど、自由度や選択肢を持つこと

子どもが「自分で選んでやっている」という実感を持つことは集中力を持続する上でも重要です。

例えば、自分で学習したい分野や習い事を選び、自分のペースで進めることができた場合、それらの活動に対してより意欲的に取り組む傾向があるといわれています。一方、強制的に課題を与えられた場合や、ルールが厳しく、選択肢などが制限された環境下で行動しなければならない場合は、内発的動機付けに悪い影響をもたらす可能性があります。

私たちが子どもの頃、宿題のような「誰かにやらされている」と感じるものに対しては、どうしても集中できなかった経験があるのではないでしょうか。

このように誰かに強制されている場合、子どもの集中力も維持するのが難しくなる場合があります。

参考:Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being

生活習慣の乱れ

自己決定理論のような内発的動機付け以外にも、生活習慣も集中力に影響を与えることがわかっています。

例えば、リーズ大学の研究によれば、良質な朝食をとっている子どもは、集中力と深く関連する認知機能によい影響をもたらすことがわかっています。空腹な状態よりも朝食を摂取した場合の方が学習においてもよい結果が得られることが報告されています。ただし、朝食の内容によっても異なるため、栄養バランスの良い朝食を摂取することが重要とされています。

他にも睡眠不足もまた認知機能を低下させる原因になります。アメリカのミズーリ大学の研究によれば、睡眠の質や時間、眠気が学校の成績に悪い影響を与える可能性があることが報告されています。

睡眠不足と集中力の関係はイメージしやすいと思いますが、子どもが集中するためには健康面にも注意することが必要です。

以上のように、内発的動機づけや健康的な生活習慣が子どもの集中力に大きな影響をもたらしています。

それでは親としてどのようなサポートができるかについて解説します。

参考:
The Effects of Breakfast and Breakfast Composition on Cognition in Children and Adolescents: A Systematic Review

The Effects of Acute Sleep Restriction on Adolescents’ Pedestrian Safety in a Virtual Environment

子どもの集中力を向上させるためのサポート

先ほど原因としてあげた2つのポイントをもとに子どもの集中力の向上が期待できる解決策について解説します。

自己決定理論に基づくアプローチ

先ほど紹介した自己決定理論に基づいて、子どもの集中力を向上させるためには以下のアプローチが有効とされています。

子どもが興味を持つことを見つける

子どもが興味を持てる対象を見つけることが重要です。しかし、子どもだけでは興味の対象を見つけることが難しいため、親や子どもが何に興味を持っているのかを知り、それに合わせてサポートすることが必要です。

例えば、子どもが動物に興味を持っている場合は、動物園に連れて行ったり、動物図鑑を買ってあげるのもよいかもしれません。

子どもの興味関心を理解し、その興味関心に合わせた環境づくりを行うことで、子どもの内在的な動機付けを促進することができます。

選択肢を提供する

子どもに選択肢を提供し、自分で決める機会を与えることで、内在的な動機付けが促進されます。子どもは自分で決めたことに責任を持ち、最後までやり遂げたり、最終的に得た結果に対して自信を持つことができます。

また、選択肢を与えることで、子どもは自分の好みや興味関心を表現する機会を得ることができます。これにより、子どもの内在的な動機付けが高まり、学習や成長につながります。

例えば、宿題や勉強時間を子どもに決めさせてあげたり、テスト勉強などでもまずは得意な分野を子どもが自分で選ばさせてあげるといったサポートが有効でしょう。

子どもの選択肢を受け入れながらサポートする

子どもが自分で決定したことを親が受けいれることで、子どもは自分の意見や考え方が尊重されていると感じ、内在的な動機付けが促進されます。

しかしこれは親が完全に子どもを放置するという意味ではありません。子どもが困難に直面した場合や失敗した場合には、「次回はこうしてみましょう」というアドバイスを通じて、子どもをサポートする必要があります。

自己決定理論を実践する際の注意点

興味の有無に関わらず、やらないといけないことに対して集中力が必要な場合もあります。例えば宿題などはその一例ではないでしょうか。「子どもが興味を持たないから」といって別のことをさせるわけにはいきません。

そういった場合には、その行為自体の「目的」を説明することで、内発的動機付けを促進することができます。例えば宿題の場合、「この宿題をやっておくと、これからの授業が理解できるようになって勉強が楽しくなるよ」、「この算数の問題がわかると、大人になってからも仕事で役立つよ」といったように将来的なメリットなども説明しながら、目の前のことをやるべき理由について説明しましょう。

また、目的や重要性を伝えるだけではなく、子どもがその活動や課題に対して興味を持ち、自分自身で探究心を持つように促すことも必要です。

例えば、子どもが理科に苦手意識を持っている場合、「教科書で書かれていたことが実際に起こるのか見てみよう」と一緒に実験などに取り組むことで、子どもが勉強に対して興味を持つようになり、より集中して取り組むことが期待できます。

健康的な生活習慣の担保

先ほどは睡眠不足が子どもの認知機能に悪い影響をもたらすことは説明しましたが、睡眠不足の解消だけではなく、運動やマインドフルネスもまた子どもの集中力に良い影響をもたらすことがわかっています。

運動によるアプローチ

オランダのミュラー研究所が公表している研究によれば、定期的な運動が集中力を高める可能性があることが示唆されています。

運動は健康だけでなく、脳や認知能力にも良い影響を与えることがわかっています。運動によって脳内物質であるドーパミンやセロトニンが分泌され、ストレスや不安を軽減し、気分をリフレッシュさせる効果があります。

また、運動は血流量を増加させ、脳へ酸素や栄養素を供給することで脳機能を改善することができ、これらの効果によって、運動は集中力を高めることができると考えられています。そのため子どもが習い事や勉強などに集中する際には、定期的な運動も取り入れてみるのもよいかもしれません。

参考:Physical Activity and Performance at School

マインドフルネスによるアプローチ

マインドフルネスによるアプローチも有効とされています。アリゾナ州大学の研究によれば、マインドフルネストレーニングが小学生の集中力を向上させることができることを示唆しています。

マインドフルネスは、自己観察や感情の調整などを通じて、心の状態をより良くコントロールすることができるようになるため、集中力や注意力を向上させる可能性があるとされています。つまり、マインドフルネストレーニングは、心の状態を改善することで集中力を向上させることができるということです。

マインドフルネスは少し子どもには難しいかもしれないと思った方は、例えばスマートフォンやパソコンからを遠ざけ、近くに自然があれば散歩したり、本を読んだりすることで、マインドフルネスと同じ効果を得られることが期待できます。

参考:Mindfulness Training for Elementary School Students: The Attention Academy

まとめ

親として子どもの集中力を高めたいと思うばかりについ勉強などを矯正してしまうこともあるかもしれません。しかし、今回解説したような自己決定理論で必要とされる条件を参考にしながら子どものサポートをしてみると改善が期待できるかと思います。

ABOUT ME
この記事の監修者 - 井上 顕滋
31年の経営者経験を持ち、主に教育系メディア事業、人材育成企業、子どもの非認知能力強化プログラム「Five Keys」を運営する財団法人、飲食事業などを経営。 人材育成のキャリアは社員教育からスタートし、成果を上げる中で多くの経営者から問い合わせが増加し、2004年に人材育成企業「リザルトデザイン」を設立。 クライアントの業績に大きく貢献する中で、社員の成果には個人差があることを痛感し、その原因を解明するため、世界的権威である研究者および実践者から最新の心理学と脳科学および「人の心に変化を生み出す最先端技術」を徹底的に学び、実践を重ねた結果、成果とモチベーションの向上を可能にするリザルトプログラムを開発。 また上記「成果の個人差」の真因と、満足度の高い充実した人生を送れるかどうかの鍵が、幼少期(12歳まで)の「親の関わり方」と「与える教育」にあることを発見し、親への教育講座を開催。
子育てのとびら編集部
明日から実践できる子育てに役立つ情報を発信していまいります。