子どもの目標達成スキル

子どもの目標を設定する5つのポイント|子どもが自発的に取り組むためのポイントとは?

子どもが目標を持てなかったり、目標を設定しても意欲的に取り組んでくれなかったりと、子どもの目標について悩んでいる親も少なくありません。

子どもが主体的に目標を設定し、それに向かって努力するために、どのようなサポートをするべきかわからない方も多いのではないでしょうか。

本記事では、子どもの目標設定の際にぜひ意識してほしいポイントをわかりやすい例とともに解説します。

子どもの頃から目標に向かって努力する重要性

経産省は人生100年時代を迎える現代社会で活躍するための人材育成の方針として「社会人基礎力」の養成であるとの見解が示されています。

社会人基礎力は3つのスキルと12の要素で構成されていますが、その要素の1つに「実行力」があります。変化が激しい時代には、常に新しい挑戦が求められ、自分で決めたことを主体的にやり切る力が求められます。

また「人生100年時代」とは、長寿化による働き方や生き方の変化を解説した著書『LIFE SHIFT』の作者であるリンダ・グラットン氏が提唱した言葉です。人生100年時代においては、移りゆく時代の変化に順応し、より良く生きていく方法を見つけることが求められます。

長い人生の間、一つのスキルや経験で仕事をしていくことが難しくなる時代です。常に学び続ける必要がある中で、自ら目標を設定し努力するスキルはより一層重要になります。

長い人生学び続けるためには、主体的に取り組める目標が必要です。目標がない状態では、何をどのように努力すればよいのかわからなくなってしまいます。

目標が明確になっていれば、その目標に向かって頑張る意欲が生まれます。さらに、その目標を達成するためにはどのように工夫すればいいのかを自発的に考え、前向きに頑張れるでしょう。

子どもの頃から目標を設定し、努力する習慣を身につけることで、変化の激しい時代でも活躍できる人になれるでしょう。

参考:「人生100年時代の社会人基礎力」と「リカレント教育」について|産業人材政策室

子どもに目標を設定させるための5つのポイント

以下では子どもの目標を設定する際のポイントについて解説します。

アメリカの心理学者 Edwin A. Locke らによる目標設定理論に関する研究によれば、子どもと目標を設定する際は、以下5つのポイントが重要とされています。

  1. 目標の明確さ
  2. 目標の難易度
  3. 目標への意味づけ
  4. 目標達成に対するフィードバック
  5. 目標達成までの道筋を分解する

それぞれの項目についての詳細を解説します。

参考:Building a practically useful theory of goal setting and task motivation

目標の明確さ

1つ目のポイントは「目標の明確さ」です。目標がはっきりしていないと、どの方向に向かって努力するべきかなど達成までに必要な道筋を考えられません。

子どもと一緒に目標を設定する際は、達成したい目標を具体的な数値や明確な期間にして分かりやすく伝えてください。目標を明確に把握できるとどのように頑張れば良いかが分かり、達成に向けた具体的な方策を建てられます。

たとえば、次のような目標を設定してもよいかもしれません。

  • ◯時までに宿題を終わらせる
  • 5月の算数のテストは80点以上をとる

上記のような目標を設定した場合、子どもは目標を達成するために何時に宿題を始めれば良いのか、該当の時間を課題に充てるためにはどのようなスケジュールを組むべきかを考えられます。

具体的な起源や数値がイメージできれば、目標を達成できる確率もぐんと上がるはずです。

目標の難易度

2つ目のポイントは「目標の難易度」です。難しすぎたり簡単すぎたりする目標設定は子どもの目標達成に対する意欲を削ぎかねません。

たしかに、高い目標を設定することで、子どもが今までの限界を突破し成長する可能性もあります。しかし、高すぎる設定は達成できない場合が多く、子どもにとって逆効果になることもあり得るのです。

目標を設定する際は、子どもの能力に適した難易度を見極めてアドバイスしてあげましょう。本人の頑張り次第で達成できる目標を定めることで、子どもは少しずつレベルアップしていけます。

また子どもの競争相手として最適なのは、あくまで自分自身です。昨日よりひとつでもできるようになればOKというような目標を設定してあげられると、諦めずにチャレンジし続ける姿勢を身につけられるでしょう。

目標への意味づけ

目標達成のために全力で頑張るためには、子ども自身にとって意義ある目標であることが重要です。親からの言いつけなど、主体性のない目標ではやる気が起きません。

目標には子どもの意見や気持ちを取り入れ、何のために努力しているかを子ども本人が理解していることが大切です。また子どもが自分でおおよその目標を設定し、到達までのステップを考えさせるなど、楽しめる方法や探究心をくすぐる手段で目標にチャレンジさせてあげましょう。

目標達成に対するフィードバック

努力した末に獲得した結果に何の反応もない状況では、次も頑張ろうという気持ちはなかなか芽生えません。否定的なフィードバックではなく、努力した過程を褒める肯定的なフィードバックを返すよう心がけてください。

肯定的なフィードバックを続けると「チャレンジする→頑張りを褒められる→もっと上手くなるために努力する」という好循環を生むでしょう。

目標達成までの道筋を分解する

達成までのステップが複雑である場合、成功までの道筋を小さなステップに分けることでどのように達成するべきかが明確になるでしょう。

ひとつの大きな目標を設定した場合、達成には努力や時間を要します。1ステップでは達成が難しいケースもあるでしょう。

目標達成までの過程を何回かのタスクに分けてあげることで、子どもはその課題にひとつずつチャレンジでき、小さな成功体験を積み重ねていけます。この積み重ねの達成感を通して子どもには自信がつき、最終的に大きな目標を達成できるようになるはずです。

子どもの目標設定は「動機付け」が重要

イリノイ大学のAmes教授らの研究によると、他者との比較が学習への興味を低下させることがわかっています。一方で、自分の興味や関心から自ら進んで目標設定した子どもは、高い結果を生み出すことができると考えられています。

上記の研究などからもわかるように、子どもの目標設定に重要なのは「動機づけ」です。

また動機づけには次の2通りがあります。

  • 外発的動機づけ
  • 内発的動機づけ

外発的動機づけは「褒められたい」「ごほうびをもらえる」など外部からの働きかけが行動のきっかけとなっている状態です。一方、内発的動機づけでは「楽しい」「もっと知りたい」など自分の中で生まれた感情や欲求が要因となって行動を起こします。

一方、自分の成長に繋がるなど内発的動機づけにより目標を定めた子どもは、先述したように学習に対する意欲が向上したうえ、成果にも良い影響を与えています。

目標設計する際には、子どもの興味や関心ごとにも注意を払いながら設定するのが望ましいでしょう。

参考:Classrooms: Goals, structures, and student motivation

まとめ

これからの人生をたくましく生き抜くためには、子どもの頃から自分の心から生まれる興味・関心から目標を立て、努力し続ける姿勢を身に付けることが重要です。

すぐに諦めてしまったり、目標を持たせる方法は、具体的で適切なレベルの目標を主体的に立て、段階的に取り組むことです。そして、子どもが努力したことは、結果の良し悪しにかかわらず過程を褒めてあげましょう。

親として、過保護に失敗から守ってあげるのではなく「もっとやってみたい」「もっと上手になりたい」という気持ちを子どもから引き出してあげたいですね。

ABOUT ME
この記事の監修者 - 井上 顕滋
31年の経営者経験を持ち、主に教育系メディア事業、人材育成企業、子どもの非認知能力強化プログラム「Five Keys」を運営する財団法人、飲食事業などを経営。 人材育成のキャリアは社員教育からスタートし、成果を上げる中で多くの経営者から問い合わせが増加し、2004年に人材育成企業「リザルトデザイン」を設立。 クライアントの業績に大きく貢献する中で、社員の成果には個人差があることを痛感し、その原因を解明するため、世界的権威である研究者および実践者から最新の心理学と脳科学および「人の心に変化を生み出す最先端技術」を徹底的に学び、実践を重ねた結果、成果とモチベーションの向上を可能にするリザルトプログラムを開発。 また上記「成果の個人差」の真因と、満足度の高い充実した人生を送れるかどうかの鍵が、幼少期(12歳まで)の「親の関わり方」と「与える教育」にあることを発見し、親への教育講座を開催。
子育てのとびら編集部
明日から実践できる子育てに役立つ情報を発信していまいります。