子どもの目標達成スキル

子どもの継続力の向上には「自己効力感」が重要|自己効力感を上げる4つのポイントを紹介

「人生100年時代」という言葉をご存じでしょうか。

イギリスの組織論学者であるアンドリュー・スコットとリンダ・グラットンが著書『LIFE SHIFT』の中で提唱した言葉です。

著者は、今後世界的に高齢化が進んでいく上で、先進国では高齢者のおよそ半分が100歳を超えて生きる時代が到来するため、これまでとは異なる新しい人生設計をすることが必要だと唱えています。

そんな『人生100年時代』を生きていく子ども達にとって、継続力は強く求められる力の1つなのです。継続力は後天的に身につけられる能力で、親の小さな心がけで飛躍的に伸ばすことができます。

今回は、継続力とは具体的にはどのような力なのか、また継続力を伸ばすためにはどうしたらいいのかを紹介します。

継続力は今後社会で求められる

人生100年時代においては、「時代の変化に応じて、常に学び続け、必要なスキルを習得し続ける」ことが求められています。

急激なIT化や技術の進化により、専門的な知識やスキルが使えるスパンが徐々に短くなっているため、身につけた能力を常にアップデートしていくことが必要不可欠なのです。

 

経済産業省が掲げる「 人生100年時代の社会人基礎能力」では、人生100年時代に必要な3つの能力が定義されています。

3つの能力として、以下の3つが挙げられており、12の能力要素から成り立っています。

  • 前に踏み出す力(アクション)
  • 考え抜く力(シンキング)
  • チームで働く力(チームワーク)

この中でも,前に踏み出す力(アクション)は

  • 主体性
  • 働きかけ力
  • 実行力

の3つの能力で構成されており、実行力は「詰める⼒、やり切る⼒、組織に隷属せず⾼い志を持ちピンで⽴てる⼒、チャレンジする⼒」と定義されており、継続力に関連する要素が多く含まれています。

このように継続力を子どもの頃から身につけることは、「人生100年時代の社会基礎能力」の中でも強く求められており、継続力をつけることで将来的に社会で活躍できる人材になるといえるでしょう。

継続力とは「目標に対する情熱と持続力」

最近、注目されているGrit(グリット)という言葉をご存じでしょうか。

アメリカの心理学者であるアンジェラ・リー・ダックワース教授が提唱した言葉で、著書「やり抜く力 GRIT(グリット)―人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける」は大ベストセラーとなりました。

Gritとは簡潔に言えば「やり抜く力(継続力)」のことで、具体的には「個人が困難に直面しても諦めず、自分の目標に対して情熱を持ち続ける能力」のことを指しており、成功者に共通して言える力として注目されています。

Gritの能力の有無が人生全般において成功しやすいかどうかを左右すると言っても過言ではないでしょう。

Gritは以下の4つから構成されています。

(1)Guts(ガッツ)

ガッツとは、困難な状況に立ち向かう力のことです。難しいことや未経験のことにも逃げずに挑戦し、諦めない人はGutsが強いと言えるでしょう。

(2)Resilience(レジリエンス)

レジリエンスとは失敗が続いても、最後まで諦めずに物事をやり遂げられる力のことです。

何度失敗しても「もう一度やってみよう!」「成功するまでやってみよう!」と行動できる人は、Resilienceの能力が高いと言えるでしょう。

(3)Initiative(イニシアチブ)

イニシアチブとは、自発的に目標に向かって取り組む力のことです。

自分で目標を立てて、自発的に行動ができる人はinitiativeの能力が高いと言えるでしょう。

(4)Tenacity(テナシティ)

テナシティは最後までやり遂げられる力のことです。

困難なことがあっても最後まで決めたことや任されたことを諦めずにやり遂げることができる人は、テナシティが高いと言えるでしょう。

成功しているスポーツ選手や社長などの共通点はGritだと言われており、Gritは後天的に伸ばすことができる能力だと言われています。

すなわち継続力は子ども達が夢や希望を実現していく上で必要な力であり、生まれもったものだけではなく、これから習得し伸ばしていくことができる力です。

それでは、どのようにして継続力を習得していけば良いのでしょうか。心理学の観点から継続力を伸ばすためのポイントについて解説します。

子どもの継続力を伸ばすためには自己効力感が重要

ケンタッキー大学の研究では、自己効力感の向上が継続力に良い影響をもたらすことが分かりました。

自己効力感とは、目標を達成するための能力を自らが持っていると認識することを指しており、目標に向かって物事を進めていく際に「自分ならできる」「きっとうまくいく」と自分のことを信じることできる状態のことです。

子どもが自己効力感をもつためには、日々の子どもとの関わりの中で以下の4つのポイントが重要といわれています。

1: 制御体験を獲得する

制御体験とは簡単にいえば行動や思考のコントロールによる成功体験のことです。

この制御体験を子どもに提供するためにも、小さな成功体験でも日々褒めるようにしていきましょう。

例えば子どもが自転車を練習する過程では、「昨日より長く乗ることができたね!」「こけても自分で立ち上がれてかっこいい!」などたくさんほめてあげることで、子どもは成功を感じ取ることができ、「もっとできる!」とさらなる自信に繋がります。

制御体験は4つのポイントの中でも、自己効力感の習得に一番必要不可欠な要素だと言われているため、制御体験を積み重ねていくことが重要です。

2 : 他者の成功を観察する

子どもに他の子どもや近くの大人が成功する瞬間を見せることで、「自分にも出来そうな気がする!」という気持ちが芽生えます。

例えば、友達が難しい課題に取り組んで成功した様子を観察させ、成功させるために何を真似できるかを子どもに考えさせることが重要です。

3 : 他者からの励ましや支持

子どもに対して、親が子どもを信じていることや期待していることを伝え、前向きな言葉で励ましましょう。例えば、「君は頑張り屋さんだから、きっとこの問題も解けるよ」と声をかけることで「自分にもできるかも!」と自信をもたせてあげることができます。

子どもを励ます際には、先ほど紹介した制御体験を提供したり、友達が成功した様子を見せながら実施することで、より効果が高まるでしょう。

4: ストレスや不安の管理

子どもにリラックスできる環境を用意しましょう。例えば、試験前の緊張を緩和するために、深呼吸や瞑想の方法を教えたり、リラックスできる音楽を聴かせてあげるなどが有効です。

自己効力感は、精神状態によって左右される場合が多いので、心を整える環境づくりが大切です。

参考:  Sources of self-efficacy in school

まとめ

継続力を習得し伸ばしていくためには、自己効力感の向上が大変有効です。

自己効力感が高い人は、何事にもポジティブに取り組むことができトラブルや困難にも対応することができます。一方で、自己効力感が低い人は、無気力・無関心になりやすく、目標達成をすることが難しくなる場合があります。

人生100年時代を生き抜く子ども達が、楽しく前向きに人生を歩んでいくためにも、継続力の習得に向けて自己効力感を伸ばす言葉かけをぜひ意識してみてください。

ABOUT ME
この記事の監修者 - 井上 顕滋
31年の経営者経験を持ち、主に教育系メディア事業、人材育成企業、子どもの非認知能力強化プログラム「Five Keys」を運営する財団法人、飲食事業などを経営。 人材育成のキャリアは社員教育からスタートし、成果を上げる中で多くの経営者から問い合わせが増加し、2004年に人材育成企業「リザルトデザイン」を設立。 クライアントの業績に大きく貢献する中で、社員の成果には個人差があることを痛感し、その原因を解明するため、世界的権威である研究者および実践者から最新の心理学と脳科学および「人の心に変化を生み出す最先端技術」を徹底的に学び、実践を重ねた結果、成果とモチベーションの向上を可能にするリザルトプログラムを開発。 また上記「成果の個人差」の真因と、満足度の高い充実した人生を送れるかどうかの鍵が、幼少期(12歳まで)の「親の関わり方」と「与える教育」にあることを発見し、親への教育講座を開催。
子育てのとびら編集部
明日から実践できる子育てに役立つ情報を発信していまいります。