子どもの思考力

子どもの空間認識能力を鍛える方法とは?IT時代に伸ばすべき理由について解説

空間認識能力という言葉は子どもの教育に関する本などでもよく目にするのではないでしょうか。空間認識能力は、科学や数学などのSTEMと呼ばれる分野の学習においても重要な要素であり、その能力を鍛えることで大きなメリットがあります。

今回はその空間認識能力についての基本的な知識やその鍛え方について解説します。

空間認識能力とは

「空間認識能力」とは、小学館のデジタル大辞泉によれば「三次元空間における物体の状態や関係(位置・方向・形状・姿勢・間隔・速度など)を、すばやく正確に把握する能力」とあります。

参考:コトバンク 

空間認識は日常生活、例えば以下のような場面でも役立ちます。

  • 地図を読む
  • 家具を部屋に配置する
  • 駐車する

他にも以下のようなSTEMと呼ばれる分野でも空間認識能力が求められます。

  • 科学
  • 技術
  • 工学
  • 数学

以下では、空間認識がなぜこの時代に求められているのかについても紹介します。

ITが当たり前の時代に求められる「空間認識能力」

プログラミングが授業に導入され始めたことが最近話題になりましたが、政府は徐々にプログラミング教育に力を入れ始めています。

私生活においてITが身近になり、仕事などでも広く活用されるようになった背景もあり、プログラミングやChatGPTのようなAIを扱う際に必要な技術や思考力がより重要視されるようになりました。

空間認識能力はプログラミングやChatGPTの活用にも役立つ

空間認識能力が備わっているとプログラミングにも役立つことが、ノッティンガム大学の研究でわかっています。

プログラミングは抽象的な概念を目に見える形で変換する能力が必要であり、このプロセスは空間能力に関連しています。

例えば、プログラミングで扱うデータ構造などを理解するためには、空間を想像する能力が必要であり、空間能力が高い人は、プログラミング学習も習得しやすい傾向にあります。

STEM分野にも強くなる

上記で挙げたように、空間認識能力があると、STEM分野(科学・技術・工学・数学)の分野に強くなることがわかっています。

メリーランド大学が公表している研究によれば、空間認識能力を鍛えるトレーニングを受けた学生は数学全般のパフォーマンス向上につながることがわかっています。

またヴァンダービルト大学の研究によれば、STEM分野での教育に関する資格を取得などを達成するために、空間能力がどれだけ重要かを調査した結果、 空間能力が高い場合、STEM分野での資格や学位取得の可能性が増加することが明らかになっています。

時代が変化する中でSTEM分野に関連する仕事の需要は一層高くなり、またITに関連する仕事が増加していく中で、空間認識能力は必須のスキルといえます。

参考:
小学校プログラミング教育に関する概要資料
Spatial Ability And Learning To Program
Effects of Spatial Training on Mathematics in First and Sixth Grade Children
Spatial Ability for STEM Domains: Aligning Over 50 Years of Cumulative
Psychological Knowledge Solidifies Its Importance

子どもの空間認識は遊びやスポーツで鍛えられる

ここまで聞くと空間認識を鍛えることは難しいのではないかと思いますが、身近にあるものでも空間認識能力を鍛えることができます。

ダブリン工科大学の研究では、空間認識能力を鍛えるためには「空間を扱う物事に触れることが重要」と言われています。

空間を扱う物事とは、物体を回転させたり、移動させたりすることで特定の形状を作る問題や、複数の物体がどのように配置されているかを把握することを指します。

以下では上記の条件のもと、子どもの空間認識を鍛える具体的な方法について紹介します。

球技で鍛える

ケンブリッジ大学の研究によれば、スポーツは空間認識能力の向上にも役立つとされています。特にバスケットボールやサッカーなどの競技では、常に周囲の状況を把握し、自分自身や他の選手たちとの位置関係を認識する必要があります。

また、どうやってゴールを取りに行くかの戦略を考える際も、空間認識能力を必要とするため、球技のようなスポーツに取り組むことで子どもの空間認識能力を向上させることができます。

ブロック遊びで鍛える

レゴのようなブロック遊びなどもまた空間認識能力を鍛える上で有効といわれています。

ブロック遊びが空間認識能力の向上につながる理由は、ブロックを使って構造物を作ることで、子どもたちが頭の中で空間をイメージし、それを実際に形にする一連の流れを体験できるためです。

例えば、私たちが子どもの頃もレゴで家などを作った経験があるかもしれませんが、その遊び自体が空間認識能力の向上に役立っていたと言えます。

パズルで鍛える

パズルやジグソーパズルを解くことは、空間認識能力を発展させるための良い方法の1つであるとされています。

これらの活動は、子どもたちが物体を回転させたり、位置を変えたりする必要があるため、空間的な問題解決能力を養うことができます。また、パズルを解くことは、子どもたちが集中力や忍耐力を養う機会にもなります。

芸術で鍛える

絵画や彫刻などの芸術作品を制作する際には、物体の形状や位置、色彩などの情報を正確に認識する必要があります。

また、音楽演奏やダンスなどの芸術活動でも、自分自身や周囲の空間を正確に認識することが重要です。これらの活動を通じて、子供たちは空間認識能力を発展させることができます。逆に言えば、空間認識能力が高い子どもたちは芸術活動においても優れた表現力を発揮することができる可能性があります。

シューティングゲームで鍛える

シューティングゲームはネガティブに感じる親も多いと思いますが、空間認識能力を鍛える手段として有効ということがトロント大学が公表している研究でわかっています。

研究によると、シューティングゲームは、プレイヤーが迅速かつ正確に移動し、ターゲットを見つけ、追跡する必要があるため、空間認知能力を促進することが示唆されています。

そのため、一概にテレビゲームなどを悪だと決めつけず、空間認識能力を鍛えられるということも加味した上で、そうした遊びの機会も提供してもよいかもしれません。

参考:
The effects of spatial skills and spatial skills training on academic performance in STEM education.

Playing an Action Video Game Reduces Gender Differences in Spatial Cognition

The role of play in children’s development: a review of the evidence

まとめ

空間認識能力と聞くと少し難しいイメージを持つかもしれませんが、意外と身近にあるもので鍛えることができます。

また今回解説したように空間認識能力は将来に役立つスキルの一つのため、これから鍛えておくことで、将来子どもにとっても役立つかもしれません。

ABOUT ME
この記事の監修者 - 井上 顕滋
31年の経営者経験を持ち、主に教育系メディア事業、人材育成企業、子どもの非認知能力強化プログラム「Five Keys」を運営する財団法人、飲食事業などを経営。 人材育成のキャリアは社員教育からスタートし、成果を上げる中で多くの経営者から問い合わせが増加し、2004年に人材育成企業「リザルトデザイン」を設立。 クライアントの業績に大きく貢献する中で、社員の成果には個人差があることを痛感し、その原因を解明するため、世界的権威である研究者および実践者から最新の心理学と脳科学および「人の心に変化を生み出す最先端技術」を徹底的に学び、実践を重ねた結果、成果とモチベーションの向上を可能にするリザルトプログラムを開発。 また上記「成果の個人差」の真因と、満足度の高い充実した人生を送れるかどうかの鍵が、幼少期(12歳まで)の「親の関わり方」と「与える教育」にあることを発見し、親への教育講座を開催。
子育てのとびら編集部
明日から実践できる子育てに役立つ情報を発信していまいります。