子どもの自己肯定感

子どもの自立心を育むためにできること

他者から影響されず、自分の力で判断し物事を成し遂げようとするために必要な自立心ですが、これからの時代、社会に出る上でこの自立心はより一層重要になります。

今回の記事では、なぜ自立心を育てる必要があるのか、また子どもの自立心を育てるために親ができることについて説明します。

自立しないことがリスクになる時代に

自立心はこれからの時代、より重要になります。最近では、「大企業も安泰ではない」という考えが徐々に浸透し、一社に定年退職まで勤め上げるという昔の常識は変わりつつあります。

会社が従業員の人生を最後まで守ってくれない時代になったため、「自分の人生をどうしたいのか」を考え、決断し、自分で道を切り開くことがより重要になっています。

自立心がない場合、「家族や友達がこの会社を勧めたから入社した」「周りも同じような人がいるから大丈夫」と他者の意見などが、自分の人生に大きな影響をもたらすようになります。いわば他者の意見、評価に依存しているような状態です。

そのような状態から脱却できない場合、自立してキャリアを作ることが求められる時代において、充実した社会人人生を送れない可能性があります。

自立心は子どもの自己効力感につながる

カリフォルニア大学サンフランシスコ校のテイラー博士は「自立とは “自分の能力に自信があり、自分のことは自分でできる “ことを意味する」と述べています

自分の能力を信じて、あらゆる問題を乗り越える体験を積み重ねるにつれて、他人のサポートに依存することが徐々に少なくなります。

またその過程で「自分は〇〇ができるんだ」といった自己効力感を育むことができ、結果として新しいことに挑戦する姿勢を持つようになります。

これからの時代、「自分は新しいことに挑戦できる」という気持ちを持つことは極めて重要になります。

特に2023年に突入してからテクノロジーの進歩が著しく、AIなどが人間の知能を超える「シンギュラリティ」と転換点が2045年にくると予測されていましたが、それが前倒しになるのではという声も聞きます。

つまり、私たちが予測できないスピードで環境が変化しており、未曾有の状況でも突き進んでいく必要があります。そのような状況下で、自立心は子どもの今後のキャリアにおいても頼もしい武器になるといえます。

参考:“Parenting: Raise Independent Children” Jim Taylor Ph.D.  

子どもの自立心を育むために親ができること

次にチャイルド・マインド研究所のフィリップス博士が執筆した記事をもとに、子どもの自立心を育てるためにできることについて解説します

ルーティンを設定する

子どもの自立心を育むためには、まず毎日決まって行うルーティンを確立することが大切だと言われています。例えば、毎朝決まった時間に掃除をするなどもルーティンの一つです。

子どもは日々ルーティンを経験していると、自分で何をするべきかを把握することができ、周囲からの助けを借りずに実行できるようになるため、自立心を育てるきっかけになると考えられています。

子ども自身に選ばせる

子どもの自立心を育てるために、子どもに選択肢を与え、選ばせることも効果的だと言われています。

例えば今日は何を着るのか、何をして遊ぶのか、日々の活動を決める際に、子ども自身に決めるチャンスを与えてみることです。

ただ、あらゆる物事を適切に判断することができないかもしれません。そのような場合は、子どもの能力に合わせて、選択肢を絞ってあげるなどのサポートも必要です。

年齢に応じた選択をできるようにすることで、子どもは自分の人生をコントロールしているという感覚を得ることができます。そしてその判断を繰り返すことが、自立した考え方につながると考えられています。

子どもに問題を解決させる

子どもが難しいことに挑戦したり、友達とのトラブルが生じた時も自分で解決できるようにサポートしましょう。

この際大切なことポイントは、本人にとって少し難しいけれど、サポートがあれば解決できるレベルの課題であることです。

課題を前に、子どもはフラストレーションを感じますが、それでも困難な状況を乗り越えることができると自信につながり、より大きな課題に立ち向かうことができます。

また子ども同士で喧嘩が起きた時も、なるべく自分たちで解決できるようにサポートしましょう。この友達との間で生じる衝突を通じて、社会のルールや人との関わり方を自ら学ぶこと機会にもつながります。

自由な遊びの時間を確保する

子どもの興味に任せ、自由な遊びを楽しむことは、創造性や問題解決力、自主性、自立心を育むためにとても大切です。

まず子どもを観察し、何に興味を持っているのか探ってみましょう。ある子は積み木や絵を書くことに興味を示すかもしれません。観察しながら子どもが自由に遊ぶことができるようにサポートしてあげましょう。

また日本の小学生を対象に行われた富山大学教育学部姜先生の研究によると、子どもが自由に遊ぶ能力や友達と関係性を築きながら遊ぶ能力は、自立性を促す可能性があるとされています。

このように、自由な遊びの時間を確保し、子どもが自分の意思で動けているという感覚は自立心を育てる上でも重要になるため、なるべくそのような時間を与えてあげましょう。

参考:

Levine, A., & Philips, L. (Year of Publication). How to build independence in preschoolers: Helping youngsters develop skills — and a sense of self. Child Mind Institute. https://childmind.org/article/how-to-build-independence-in-preschoolers/
 

The effect of playing ability for independence in elementary school students. University of Toyama.

まとめ

子どもの自立心について、なぜ自立心を育てる必要があるのか、また子どもの自立心を育てるために親ができること、避けるべきことについてご説明いたしました。

ちなみに米国における子育ては、子どもを人格ある一人の人間として認め、子どもの自立を意識した関わり方が特徴だと言われています。

ここにご紹介したような子どもへの関わりは、米国の多くの親は普通に行っていることでもあります。グローバル社会の未来において、子どもが一緒に仕事をする米国人は、このように育てられているかもしれません。

子どもが、どのような環境であっても社会に貢献できるような自立した人材となるように、私たちも意識して子どもに関わっていきたいものです。

ABOUT ME
この記事の監修者 - 井上 顕滋
31年の経営者経験を持ち、主に教育系メディア事業、人材育成企業、子どもの非認知能力強化プログラム「Five Keys」を運営する財団法人、飲食事業などを経営。 人材育成のキャリアは社員教育からスタートし、成果を上げる中で多くの経営者から問い合わせが増加し、2004年に人材育成企業「リザルトデザイン」を設立。 クライアントの業績に大きく貢献する中で、社員の成果には個人差があることを痛感し、その原因を解明するため、世界的権威である研究者および実践者から最新の心理学と脳科学および「人の心に変化を生み出す最先端技術」を徹底的に学び、実践を重ねた結果、成果とモチベーションの向上を可能にするリザルトプログラムを開発。 また上記「成果の個人差」の真因と、満足度の高い充実した人生を送れるかどうかの鍵が、幼少期(12歳まで)の「親の関わり方」と「与える教育」にあることを発見し、親への教育講座を開催。
子育てのとびら編集部
明日から実践できる子育てに役立つ情報を発信していまいります。