子どもの自己肯定感

繊細な子ども「HSC」の特徴とは?繊細さは決して短所ではない。

「うちの子ども、周りの環境にすごく敏感だな。」と子どもの繊細さが気になる方もいらっしゃるかと思います。繊細さは決して短所ではなく、繊細であるがゆえの強みもあります。一方で、繊細な子どもにはその性格にあった接し方も重要です。

今回は繊細な子どもの特徴とそういった子どもとの向き合い方について解説します。

繊細さは決して短所ではない

「うちの子ども、繊細かも」と思うこともあるかもしれません。他人よりも繊細な感覚を持っている人や子どもをHSP(Highly Sensitive Person)、HSC(Highly Sensitive Children)と呼ぶことがあります。子どもにはHSCが使われることが多いため、以下ではHSCについての話を進めていきます。

HSCは、感覚処理感度が高い子どもを指す用語で、これは子どもが感じる感覚に大きな影響を与えます。

後ほど解説しますが、HSCの傾向がある子どもの中には、周りの環境に敏感であり、ストレスを感じやすい傾向があるタイプや、感受性や共感する能力が高いタイプの子どももいます。

これから社会に出る上で、相手の気持ちを思いやるコミュニケーションはより重要になりますが、この繊細さを短所と捉えずに、むしろ子どもの個性として伸ばすことができると考えられます。

HSCの傾向を持つ繊細な子どもの特徴とは

以下ではニューヨーク州立大学の論文の内容をもとにHSCの傾向がある子どもの特徴について解説します。HSCの傾向を持つ子どもは、以下で紹介する特徴を一つだけ持っている子どももいれば、複数持っている子どももいます。そのため、「該当する特徴が〇〇個以上だからうちの子はHSCだ」とは断言できない点に関して留意していただきたいと思います。

それではHSCに関する特徴について解説します。

外部環境に敏感

HSCの傾向がある子どもの特徴の一つに音、光、感情、痛みなど、さまざまな刺激に対して通常よりも敏感であることが特徴です。これは、日常生活の中でのあらゆる環境を他人よりも強く感じやすく、通常、人があまり影響を感じない場合でも敏感に反応する子どももいます。

例えば、周りに鼻がよくきく人などがいますよね。そのような方は、遠くに離れていても、店や家からの匂いだけでどんな料理を作っているかなどを判別できますが、一方で少しでもきつい匂いを感じた場合に気分が悪くなってしまうこともあるでしょう。

人よりもそうした五感などが敏感であっても、当事者でない限りなかなか理解されにくく、「気にしすぎじゃない?」とつい思われてしまいます。敏感な子どもにはそうした背景があることをまずは理解しましょう。

人の感情に敏感

他の特徴として、他人の感情に対して深く共感する傾向があります。例えば、友達が落ち込んでいるとき、友達の気持ちを深く理解し、自分もその悲しみを同じように感じることができる子どももいます。また、誰かが喜びを感じているとき、HSCの傾向がある子どもはその喜びにも深く共感します。

このように他人の感情を理解し、共感する能力が高いため、人間関係の中で深いつながりを築くことができます。

一方、他人の感情に深く共感するがゆえに、自分の感情が他人の感情によって容易に影響を受けることもあるため、諸刃の剣であることに注意が必要です。

HSCが発生する原因とは

HSCについては、遺伝と外部環境による要因が影響を及ぼすとの説が提唱されています。遺伝による要因とは、家族の遺伝子からも影響を受ける可能性が指摘されており、親が同じような傾向を持っている場合に、子どももそのようになると言われています。

一方で、外部環境による要因とは、家庭内の環境や、家族との関係、各家庭での習慣によるものが、子どもの感受性を育てる役割を果たす可能性があると考えられています。

それらの要因が指摘されてはいるものの、はっきりとした原因が特定されているわけではないのが現状です。

参考:Aron, E. N., & Aron, A. (1997). Sensory-processing sensitivity and its relation to introversion and emotionality. Journal of Personality and Social Psychology, 73(2), 345-368.

HSCの傾向がある繊細な子どもとの向き合い方とは

繊細な子どもゆえに、どのように向き合えばよいか悩む方も多くいらっしゃいます。子どもの気持ちを100%理解した上で、対応することは難しいでしょう。他人が感じている五感などの感覚は当事者ではない限り、決して理解できるものではないからです。

その上で、以下では、繊細な子どもに対する向き合い方について解説します。

具体的に何にストレスを感じているかを観察する

HSCの傾向がある子どもと向き合うためには、その子ども自身が何にストレスを感じているかを観察することが重要です。

音や光に敏感である場合は、なるべく静かな環境を整備する、また部屋の照明を調節するなどが考えられます。例えば、照明が暗い部屋の場合、大人が気にしていなくても、HSCの傾向がある子どもは気分が落ち込んだりすることもあります。

一方で匂いに敏感な方は、部屋にあるゴミの臭い対策や芳香剤などにも注意する必要があります。

このように、ストレスに感じている部分は何かを子どもに聞きながら原因を特定し、子どもが過ごす環境を改善しましょう。

攻撃力のある強い言葉使いなどは避ける

HSCの傾向がある子どもは、人の言葉や感情にも敏感であり、同時にストレスを感じやすい傾向があることについて先述しました。このような背景があるため、少しでも強い表現や過激な言動は子どもにストレスを与えるきっかけにもなるため、避けるようにしましょう。

子育てをしていて忙しい時に、つい独り言で攻撃的な発言をしてしまうこともあるでしょう。しかし、穏やかな環境を意識して作ることが、HSCの傾向を持つ子どもにとっては重要です。

また、穏やかな環境においては、共感や創造性などによい影響があることも示唆されています。HSCの傾向がある子どもがより良い環境で生きるためには、周囲の大人が子どもの特性を理解することが必要です。

しかし、子ども同士で遊んでいる場合、友達から攻撃的な言葉遣いをされることもあるかと思います。学校での様子をずっと監視することは難しいかもしれませんが、子どものSOSに気づくためにも、学校で起きた出来事などをいつでも相談できるような状況を作ることが重要です。

休憩時間をたくさん設ける

HSCの傾向がある子どもは、大きな集団のなかで、音や他人の感情から過度に刺激を受け、疲れてしまうことがよくあります。そのため、意識的に静かな場所でリラックスできる時間を作ることが重要になります。

例えば宿題をしている子どもが疲れているなと感じたら、宿題を一旦ストップさせて、静かな部屋で休憩させたり、テレビやスマホなどから騒音が生じている場合には、電源をオフにするなどして環境を整えてあげましょう。

規則正しい生活を送る

規則正しい生活を送ることによって、毎日何が起きるのかについて予測できるようになり、子どもが安心感を覚えるようになります。

また規則正しい生活を心がけていても、急に予定を変更しなければいけない時もあると思います。そのような時は可能な限り、事前に伝えてあげるように心がけましょう。

事前に伝えることで、子どもたちは急な予定変更に対しても、心の準備をすることができます。親としては大変かもしれませんが、なるべく急な変化を子どもからなるべく避けるように意識しましょう。

参考:Jagiellowicz, J., Zarinafsar, S., & Acevedo, B. (n.d.). Health and social outcomes in highly sensitive persons. In B. Acevedo (Ed.), The highly sensitive brain. Stony Brook University & University of California, Santa Barbara. 

まとめ

繊細だからといって、内向的でもなければ、たくましさが欠如しているわけではありません。つい繊細と聞くとネガティブなイメージがありますが、良好な人間関係の構築や円滑なコミュニケーションには「繊細さ」が重要です。

そのため、子どもが繊細だと感じても、それを短所として捉え、抑えるのではなく、一つの個性として正しい方向性に伸ばすことを意識することで、子どももまた快適に過ごせるのではないでしょうか。

ABOUT ME
この記事の監修者 - 井上 顕滋
31年の経営者経験を持ち、主に教育系メディア事業、人材育成企業、子どもの非認知能力強化プログラム「Five Keys」を運営する財団法人、飲食事業などを経営。 人材育成のキャリアは社員教育からスタートし、成果を上げる中で多くの経営者から問い合わせが増加し、2004年に人材育成企業「リザルトデザイン」を設立。 クライアントの業績に大きく貢献する中で、社員の成果には個人差があることを痛感し、その原因を解明するため、世界的権威である研究者および実践者から最新の心理学と脳科学および「人の心に変化を生み出す最先端技術」を徹底的に学び、実践を重ねた結果、成果とモチベーションの向上を可能にするリザルトプログラムを開発。 また上記「成果の個人差」の真因と、満足度の高い充実した人生を送れるかどうかの鍵が、幼少期(12歳まで)の「親の関わり方」と「与える教育」にあることを発見し、親への教育講座を開催。
子育てのとびら編集部
明日から実践できる子育てに役立つ情報を発信していまいります。