子どもの自己肯定感

子どもが引っ込み思案で心配?引っ込み思案を改善する方法を心理学の観点から紹介

「うちの子、引っ込み思案かも…」と、子どもが控え目な性格であることを心配する方もいらっしゃるかと思います。親としては子どもが独り立ちしていく上でも、少しでも積極的に動いてほしいと、つい思ってしまいます。

今回は、引っ込み思案の子どもの心理状況を把握し、引っ込み思案の原因とその解決策について解説します。

今後は主体性が求められる時代に

経産省が公表している「採用と大学改革への期待に関するアンケート結果」では、「採用の観点から、大卒者に特に期待する資質・能力・知識」という質問に対して、約8割の企業が「主体性」と回答しています。

これらの背景には目覚ましいAIの進化があり、今後あらゆる仕事がAIに取って代わられる可能性があります。特に、定型的なタスクや特別なスキルを必要としない仕事がこの影響を大きく受けると言われています。

一方で、ゼロから新しいものを創り出すことができる職業などが今後も残ると言われており、答えや前例がない中でも困難を乗り越えて目標に向かって進む力が求められ、そのような状況下では「主体性」がより重要になります。

この主体性を育むことが、これからの社会で成功するための鍵となります。

参考:採用と大学改革への期待に関するアンケート結果

子どが引っ込み思案になる原因とは

子どもの主体性を育てたいものの、子どもが引っ込み思案で消極的なことに悩む方も少なくありません。

以下では一般的に考えられる引っ込み思案の原因について解説します。

社交不安障害の可能性

社交不安障害は、人と接する場面において強い恐怖感や不安を感じ、それが日常生活に影響を及ぼす精神疾患です。人前で話す、食事をする、注目を浴びるなどの場面で特に不安が強まることが一般的です。

ではなぜ社交不安障害が起こるのでしょうか。カリフォルニア大学のCarla A. Hitchcock教授らの研究によれば、この症状の原因は三つの要素、遺伝的要素、環境的要素、神経生物学的要素が関係しているとされています。

  • 遺伝的要素:親や兄弟に社交不安障害を持つ人がいると、その人も社交不安障害を発症するリスクが高まるという点
  • 環境的要素:育った環境や過去の体験が影響する部分です。例えば、親から過保護に育てられたり、過去にトラウマになるようなことを経験したり、いじめにあった経験がある人
  • 神経生物学的要素:社交不安障害は脳内の物質バランスが関与しており、特に、神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンのバランスが乱れると、症状が出やすくなる可能性がある

社交不安障害の原因はまだはっきりとはしていません。しかし、最近の研究では、セロトニン神経系とドーパミン神経系の機能障害により発症するのではないかと考えられており、今現在もその発症原因については、世界中の研究者が解明に取り組んでいます。

親が子どもに対して過保護になっている

メリーランド大学のRubin教授らの研究によれば、子育ての方法や親子間の関係は、子どもの「社交的引きこもり」に大きな影響を及ぼすことが示されています。

ここでいう「社交的引きこもり」とは、社会で人との接触を避け、自宅など安全な場所に留まり続ける傾向のことを指し、引っ込み思案に近い意味合いがあります。

親が子どもに対して過度に保護的であると、子どもは自分で決断を下す機会を奪われ、自信を失う可能性があります。また、親が子どもの自己表現を抑制し、自分の考えを表すことを制限すると、子どもは他人とのコミュニケーションを避けるようになるかもしれません。

たとえば親が常に子どもの宿題を過度に手伝ってしまい、子どもが自分で解決する機会を与えない場合、子どもは自分で問題を解決する能力に自信を持つことができなくなるかもしれません。

このような状況が続くと、子どもは他人と競争する状況や、新しいチャレンジをする機会を避けるようになり、結果として社交的な引きこもりにつながる可能性があります。

また、親が子どもの意見を尊重せず、自分の思い通りに行動させようとすると、子どもは自分の意見を表現することに恐怖を感じるようになります。このような状況も、人前で自己表現をすることが苦手な子どもを作り出し、社交的な引きこもりにつながる可能性があります。

自己肯定感が低く、失敗することを過度に恐れている

先ほどのメリーランド大学の研究結果によると、引っ込み思案の子どもたちは、「ネガティブ思考」に陥りやすい傾向があり、社交的な状況でのネガティブな結果を想像する傾向があることが分かっています。具体的には、これらの子どもたちは、自分が他人から拒絶されるかもしれないという恐怖感を感じたり、自分が失敗すれば大きなダメージが生じるのではないかと考える傾向があります。

例えば、学校の出し物などで自分の意見を提案する時、「自分が提案をすると、友達から拒絶されるかもしれない」とか、「失敗したらみんなの前で恥をかくことになる」というような過度にネガティブな思考に捉われる傾向があります。

また、これらの子どもたちは一般的に自己肯定感が低く、自分自身を否定的に見る傾向があるため、社交的な状況において不安や恐怖を感じることがあります。そのため、自己肯定感を育て、自分自身の価値を肯定する能力を高めることは、社交的引きこもりの予防に重要です。

たとえば、親や教師は、子どもの存在そのものを喜んでいることを表現しつつ、子どもが小さな成功を達成したときにそれを認め、称賛することで、子どもの自己肯定感を育てることができます。また、失敗したときでも、その経験から何かを学べたこと、挑戦したこと自体を評価することで、失敗からの学習や回復力を強化することが可能です。このようなサポートを通じて、子どもが恐怖心を克服し、自信を持って経験を積むことができるようになることが期待されます。

参考:
Recent Findings in Social Phobia among Children and Adolescents

Social withdrawal in childhood and adolescence: Peer relationships and social competence

子どもの引っ込み思案を解決する方法

以下ではどのように子どもの引っ込み思案を改善することができるかについて、心理学の研究などをもとに解説します。

なんでも話せる友達を作る

先述したメリーランド大学の研究によれば、引っ込み思案を改善するためには、子どもがいろんな話をできる友達を作ることが重要だといわれています。例えば、友人とのやり取りを通じて自分の思考や感情をうまく言葉にする練習になります。また、友人からの言葉の意味を理解し、適切に反応しようとすることで傾聴力も向上します。

このように本音に近いコミュニケーションをとるには、友情の質を高める必要があります。大人でもまだ関係が浅い友達には自分の意見をなかなか伝えづらいですよね。

なんでも話せる友達と多くの会話を経験し、自分の意見が受け止められる経験をすることで、自分の発言に自信を持つことができます。

そのため、子どもに友達と遊ぶ機会を提供し、友達とのコミュニケーションの中で自分の意見を表現したり、相手の意見を尊重する経験をすることで、より主体的に意見を言えるようになることが期待できます。

親が子どもの感情や意見を尊重すること

先ほどのRubin教授の研究には、子どもが社交的な場においても苦手意識を持たないためには、親が子どもとコミュニケーションを積極的にとることが効果的であるということがわかっています。

例えば、親は子どもに対して、その日の出来事や感じたことについて話す機会を作ることが重要です。それは普段の食事時や送迎時などの日常の中で取り組むことができます。また、子どもが自分の感情や考えを表現した時、その意見を尊重し、理解を示すことも重要です。

他にも地域のクラブ活動やスポーツチームは、社交的なスキルを習得する上で効果的です。これらの活動を通じて、子どもたちは自分の意見を表現し、他人の意見を尊重することを学び、社交的なスキルを身につけていくことが期待できます。

自己肯定感を高めること

先ほど、自己肯定感が低いと子どもがネガティブ思考になり、積極的に行動できなかったり、発言できないということを述べましたが、子どもの自己肯定感を上げることで、引っ込み思案を解決できる可能性があります。

自己肯定感を高めるために親ができることとして以下のようなサポートが挙げられます。

  • 子どもに共感する
  • ほめ方を工夫する
  • 子どもにどうしたいか選ばせる
  • あえて失敗を経験させる
  • 何もしない時間を作ってあげる

詳しくは以下の記事で解説しているので、参考にしてみてください。

参考文献:Recent Findings in Social Phobia among Children and Adolescents

まとめ

今回説明したように 引っ込み思案の子どもには、そうなる理由があります。子どもは、親とのコミュニケーションなどからも大きな影響を受けているため、日々の子どもとのコミュニケーションから改善するのが良いかもしれません。子どもが主体的に意見を持ったり、発言するようになるためには、日々のコミュニケーションなどから改善するのがよいかもしれません。

ABOUT ME
この記事の監修者 - 井上 顕滋
31年の経営者経験を持ち、主に教育系メディア事業、人材育成企業、子どもの非認知能力強化プログラム「Five Keys」を運営する財団法人、飲食事業などを経営。 人材育成のキャリアは社員教育からスタートし、成果を上げる中で多くの経営者から問い合わせが増加し、2004年に人材育成企業「リザルトデザイン」を設立。 クライアントの業績に大きく貢献する中で、社員の成果には個人差があることを痛感し、その原因を解明するため、世界的権威である研究者および実践者から最新の心理学と脳科学および「人の心に変化を生み出す最先端技術」を徹底的に学び、実践を重ねた結果、成果とモチベーションの向上を可能にするリザルトプログラムを開発。 また上記「成果の個人差」の真因と、満足度の高い充実した人生を送れるかどうかの鍵が、幼少期(12歳まで)の「親の関わり方」と「与える教育」にあることを発見し、親への教育講座を開催。
子育てのとびら編集部
明日から実践できる子育てに役立つ情報を発信していまいります。