子どもの自己肯定感

子どもを正しく褒めて伸ばすためのポイントと注意点について解説

近年、褒めて伸ばすことが注目されていますが、褒め方によっては子どもの自己肯定感によくない影響を与える可能性もあります。今回の記事では、子どもの能力を伸ばすために、どのようなポイントを褒めるべきか、褒める際の注意点について解説します。

人生100年時代に重要性が増す自己効力感

英国のリンダ・グラットン教授が著書「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)」で提唱したことをきっかけに、長生きする時代において学び直しなどが注目されています。これまでの人生では、「教育→仕事→引退」という3つのステージが一般的でしたが、今後は、寿命がさらに長くなることによって、2つ目のステージ「仕事」の期間が延びることが予想されます。

このような時代では、一つの仕事を長く続けるのではなく、新しいスキルを習得するなどの「選択肢を広げる意識」が重要です。そのためには「自分は新しいことを始められる」という自信を持つことが大切であり、子どもの頃から自信を育てるためにも、「正しく褒めること」が重要であるといえます。以下では「正しく褒めること」について解説します。

参考:
LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略 LIFE SHIFT

なぜ、子どもを「正しく褒めること」が重要?

スタンフォード大学の研究によれば、親が正しく子どもを褒めることで、子どもの自己効力感を高めることにつながるとされています。自己効力感とは、簡単に言えば、自分ならできるという「自信」です。自己効力感が高くなった子どもは、自分の実力に自信を持つようになるので、将来困難に直面したり失敗した時でも、すぐに折れることなく、挑戦を続けることができるようになります。

先ほど冒頭で説明したように、これからは寿命が長くなる時代になり、常に新しいことを学び続ける必要があります。新しいことを学ぶ際に、「自分には無理だ」「たぶんそれは得意じゃない」と最初から自分を制限してしまうと、学びの機会を逃してしまう可能性があります。それを回避するためにも、挑戦の前に「難しそうだけど、自分ならできるかもしれない」と考える自己効力感が不可欠です。

また現代社会では、失敗は貴重な学びの機会であるという考えが浸透しはじめています。失敗を成長のチャンスに変えるためにも、親は適切な褒め方を通じて子どもの自己効力感を高めておく必要があります。

参考:
Corpus, J. H., & Good, K. A. (2021). The effects of praise on children’s intrinsic motivation revisited. In E. Brummelman (Ed.), Psychological Perspectives on Praise 

効果的な子どもの褒め方とは

子どもの成長をサポートするためには、ただ褒めるだけでは不十分です。以下では、子どもを“正しく”褒めて伸ばすために、意識したいポイントをご紹介します。

子どもの努力の過程を褒める

子どもを褒める際には、結果だけでなく、「どのように努力したのか」などのプロセスに焦点を当てて褒めるようにすることが大切です。そうすることで、子どもは自分の努力や考え方も大切だと感じるようになり、成功や失敗に向き合うための方法を学ぶことができます。例えば、問題を解けなかった時には、自分で新しい解き方を考え、試してみることで、うまくいくやり方を主体的に見つけるようになります。

例えば、「⚪︎⚪︎ちゃん、毎日コツコツ頑張ってえらかったね!」や、「これまですごく考えていたからこそ、良い方法を見つけたね!」など、子どもたちがどれだけ頑張ったか、どれだけ考えたかに注目して褒めることが重要です。

参考:
Kamins, M. L., & Dweck, C. S. (1999). Person versus process praise and criticism: Implications for contingent self-worth and coping. Developmental Psychology, 35(3), 835-847. 

どんな行動がよかったのかを具体的に伝えて褒める

先ほどの話に付随しますが、子どもを褒める際には、何をしたか、どのように行動したか、そしてどのような結果が得られたかを、具体的かつ正確に伝えながら褒めることも大切です。

例えば、「今日の試合、⚪︎⚪︎くんがチームのためにいっぱい声出していたからから、チームの雰囲気が良くなって勝てたんだよ!」「今回のテスト、⚪︎⚪︎ちゃんが授業内容の復習を一生懸命に頑張ったから、前よりも良い点数が取れたんだね!」など、具体的に褒めることを意識してみましょう。

そうすることで、子どもは自分の行動について深く理解し、どのように改善するかの方法を自らの力で見つけることができます。またこれは、親に言われたからではなく、自らがやりたいと思って取り組む意欲を高めることにも繋がります。

参考:
Corpus, J. H., & Good, K. A. (2021). The effects of praise on children’s intrinsic motivation revisited. In E. Brummelman (Ed.), Psychological Perspectives on Praise 

子どもを褒める際の注意点

子どもを褒めることは極めて重要な子育ての要素のひとつですが、その褒め方を誤ると、かえって子どもの成長に悪影響となってしまう場合があります。ここでは、そうならないために注意したいポイントを解説していきます。

「褒めるだけ」ではなく、時に叱ることも重要

子どもを褒めるだけで、叱らずにいると、今度はナルシズムを促進させてしまう可能性を引き起こします。具体的には、自己中心的でありすぎたり、自分は悪くないと被害者意識が強くなったり、他人に頼りすぎたりすることがあります。そのため、親は子どもを褒めるだけでなく、悪いことをした場合には叱ることなども含めてバランスを取ることが非常に重要になります。

最後に

子どもを褒めて伸ばすことはとても大切なことですが、褒め方を間違えるとかえって逆効果となってしまいます。親にとって、子どものポジティブな側面を引き出す褒め方を心がけ、彼らの自己肯定感と成長をサポートしていくことが、「褒めて伸ばす」教育の一番の課題となるでしょう。今回、記事の中でご紹介した「子どもを褒めて伸ばすポイント」も、ぜひ意識して取り入れてみてください。

ABOUT ME
この記事の監修者 - 井上 顕滋
31年の経営者経験を持ち、主に教育系メディア事業、人材育成企業、子どもの非認知能力強化プログラム「Five Keys」を運営する財団法人、飲食事業などを経営。 人材育成のキャリアは社員教育からスタートし、成果を上げる中で多くの経営者から問い合わせが増加し、2004年に人材育成企業「リザルトデザイン」を設立。 クライアントの業績に大きく貢献する中で、社員の成果には個人差があることを痛感し、その原因を解明するため、世界的権威である研究者および実践者から最新の心理学と脳科学および「人の心に変化を生み出す最先端技術」を徹底的に学び、実践を重ねた結果、成果とモチベーションの向上を可能にするリザルトプログラムを開発。 また上記「成果の個人差」の真因と、満足度の高い充実した人生を送れるかどうかの鍵が、幼少期(12歳まで)の「親の関わり方」と「与える教育」にあることを発見し、親への教育講座を開催。
子育てのとびら編集部
明日から実践できる子育てに役立つ情報を発信していまいります。