子どもの思考力

子どもの仮説思考力はVUCA時代に重要になる。その伸ばし方とは?

「どんな時代でも通用する子どもに育ってほしいな」と思う方も多いかと思います。今回はこれからの時代に、より重要になる仮説思考能力に関して紹介します。

子どもの仮説思考力は社会に出ても重要なスキルの一つであり、これらを鍛えることで、不安定なVUCAの時代にも生き抜くスキルを身につけることができます。

今回は、子どもの仮説思考力について紹介し、仮説思考はどのようなプロセスで動いているのか、またその鍛え方について紹介します。

子どもの仮説思考力はVUCAの時代により重要に

テクノロジーの進化などにより、常に新しい課題に直面する時代になりました。ChatGPTの登場により、多くの仕事のやり方が変わったり、なくなる仕事もこれから増えてくるでしょう。

このような変化が激しい時代において、何かが起きてから動いているようでは時代に取り残されてしまう可能性もあります。またそのような時代において、近い将来、先細りする仕事に気付かぬうちに就職している可能性もあります。

このように激しい変動の時代をVUCAと呼びますが、この時代を生き抜くためにも、「近い将来、こうなりそうだ」と過去や現在から学び、これから起きることを推測する力が求められます。その推測する力の一つが仮説思考と呼ばれるものです。

以下では仮説思考力についてより詳しく解説します。

仮説思考力についてわかりやすく解説

仮説思考とは、具体的に説明すると、新しい問題や状況に対処するために、起こりうる結果や問題を推測する思考のプロセスのことを指します。

仮説思考は主に以下のプロセスによっておこなわれます。

状況把握

仮説を立てる前に、状況の把握や情報の整理をおこないます。仮説を立てる上で、現状を客観的に把握することで仮説が立てやすくなります。

仮説を立てる

仮説を立てる際に、先ほど整理した現状に対して「なぜこれが起きている?」「この状況から何が起きるの?」「もしかしてこうなるんじゃないか」と自問自答しながら、深掘りしていくことで、仮説を立てることができます。

仮説の検証

実際に自分が立てた仮説があっているかを確かめるために、情報収集を行います。インターネットで調査したり、人から話を聞いたり、実際に自分で試すなどして仮説があっているかを確かめます。

仮説の修正

実際に仮説を立てた通りのことが起きたかを確認し、事実と違っていた場合は仮説を修正します。もちろん立てた仮説がそのまま当たるということはないので、「〇〇の部分はあってたけど、ここは違ったな。」と仮説と事実のギャップを確認することで、その反省点が次の仮説を立てるときに役立ちます。

上記のフローに従って、冒頭にて先述したAIツールのChatGPTをもとに一つ例を挙げます。

状況把握

実際にChat GPTを使ってみる。例えば難しいとされるエクセルの関数や計算式もAIに聞けば、全部書いてくれるので、初級者でも高度な処理ができるようになった。

仮説を立てる

これはエンジニアでも同じことが起きているのではないか。あらゆるプログラムをAIが書いてくれるとなると、ほとんどのエンジニアは不要になる?

仮説の検証

調べてみると、初級のエンジニアが不要になると言っている人もいる。海外ではライター、デザイナーなども大量解雇されている事例もある。

仮説の修正

エンジニアの仕事の大半はAIで置き換わるという仮説はあっていると思うが、最終的に判断するのは人間の仕事なので、一部の人は仕事が残りそうだ。単純作業をしていたエンジニアはどうなるのだろう。エンジニアに限らず、指示通り、単純作業をしていた人は仕事がなくなってしまうのかな。

このように「状況把握」をして、「仮説」をたて、「検証」し、実際に確かめて、仮説と事実のギャップを確認し、「修正」することで、仮説思考力をより高めることができます。またこれらを習得することで人生において最適な選択肢を取ることもできるようになります。

仮説思考は社会で求められるスキルの一つ

また仮説思考を伸ばすことは、問題解決能力や目標達成能力にも影響すると考えられており、目標達成のために必要な計画や、その計画を達成する過程で起こりえるトラブルを予測できるようになります。

この仮説思考は仕事でも求められます。例えば会社が「このプロジェクトを海外でも展開したい。ただこれまで社内で海外に展開したプロジェクトはないけど、よろしく。」といった依頼が飛んでくることもこの時代においては珍しくないでしょう。

これまで社内で既に事例のある仕事においては、過去の経験を頼りに始めてみたり、誰かに聞いてやってみることもできます。

しかし、これまでやったことがない仕事に関しては、仮説を立てる力が必要になります。例えば、「海外の中でもアジアの地域ではこんな傾向があるのではないか」とデータ収集をしながら仮説を立て、仕事を進めることが求められます。

社会人になると仕事のために仮説を立てることが頻繁にあり、またビジネスにおける明確な答えがわからなくなっている今、仮説思考力はより重要になっているといえます。

参考:

Thinking Success, Behaving Successfully: The Relation between Hypothetical Thinking Strategies, Effort towards Goal Attainment and Grit

明日からできる子どもの仮説思考の伸ばし方

子どもの仮説思考を伸ばすためには、「仮説」が必要とされる活動をさせることが重要です。以下ではすぐに取り組める仮説思考の伸ばし方について解説します。

家族旅行などを一緒に計画する

著書「HYPOTHETICAL THINKING」によれば、仮定的思考は、長期休暇の目的地を選んだり、その旅行の全部を計画したり、普段の生活における意思決定でもよく使われるとされています。

例えば、上記で紹介したように、夏休みなどの長期休暇の旅行を子どもに計画させることもまた効果的な手段といえます。

この計画の過程ではあらゆる「仮説」が必要になります。例えば、海水浴に出かけたいとなった場合に、

  • 雨が降った場合の別のプランはどうする?
  • 渋滞に巻き込まれた時のことを考えて、何時くらいに出発する?
  • 海水浴ではどのような遊びやイベントが発生しそうか?それに向けてどんな準備が必要か。

などと、まだ起こっていない未来について仮説をたて、今取るべき行動が求められます。家族旅行の計画ですと、家族も一緒に考えながらできるので子どもにとっても取り組みやすいですね。

参考:

Evans, J. St. B. T. (2007). Hypothetical thinking: Dual processes in reasoning and judgement. https://doi.org/10.4324/9780203947487

パズルなどのゲームを活用する

ジョージア・サザン大学准教授のMete Akcaoglu氏の研究によれば、パズルなどゲームを活用することで、仮説思考をはじめ、問題解決能力が高まると言われています。

パズルなどは何度も試行錯誤を繰り返し、過去にピースがあわなかった経験も踏まえて次にどうするかを考える思考プロセスが求められます。

パズルなどは比較的入手しやすく、子どもも楽しんで取り組むことができるため、明日からでも始められるトレーニングといえるでしょう。

それ以外にも仮説思考が求められるパズルやゲームはたくさんあるので、家族が楽しめるものを取り入れていきましょう。

参考:

Akcaoglu, M., Jensen, L. J., & Gonzalez, D. (2021). Understanding children’s problem-solving strategies in solving game-based logic problems. International Journal of Technology in Education and Science, 5(2), 245-257. https://doi.org/10.46328/ijtes.98

ABOUT ME
この記事の監修者 - 井上 顕滋
31年の経営者経験を持ち、主に教育系メディア事業、人材育成企業、子どもの非認知能力強化プログラム「Five Keys」を運営する財団法人、飲食事業などを経営。 人材育成のキャリアは社員教育からスタートし、成果を上げる中で多くの経営者から問い合わせが増加し、2004年に人材育成企業「リザルトデザイン」を設立。 クライアントの業績に大きく貢献する中で、社員の成果には個人差があることを痛感し、その原因を解明するため、世界的権威である研究者および実践者から最新の心理学と脳科学および「人の心に変化を生み出す最先端技術」を徹底的に学び、実践を重ねた結果、成果とモチベーションの向上を可能にするリザルトプログラムを開発。 また上記「成果の個人差」の真因と、満足度の高い充実した人生を送れるかどうかの鍵が、幼少期(12歳まで)の「親の関わり方」と「与える教育」にあることを発見し、親への教育講座を開催。
子育てのとびら編集部
明日から実践できる子育てに役立つ情報を発信していまいります。