子どもの思考力

子どもの読解力を伸ばすためには?海外の研究にもとづいた効果的なサポートも紹介

  • 子どもの国語の点数が伸びないな
  • 本もあまり読まないし、読解力が伸びないかも

このように、子どもの読解力の向上に悩む方も多いかと思います。読解力と聞けば「文章を読む力」と思うかもしれませんが、実際には文章を読むだけではなく、他人とのコミュニケーションにも必要であり、社会で生きるために必須なスキルといえます。

今回の記事では、子どもの読解力が向上しない原因やその解決策について解説します。

読解力とは「文章を読み、内容を理解し、自分で解釈する力」

読解力とは「文章を読み、内容を理解し、自分で解釈する力」のことです。読解力は一般的に本や文章を読む力と思われるかもしれませんが、他者とのコミュニケーションにおいても読解力は必要になります。

他者とのコミュニケーションには、相手の発言内容や置かれている状況、その人の過去の経験や性格なども踏まえて意図を理解し会話します。

読解力がないと十分なコミュニケーションが成立しない可能性があります。社会では、日常的な会話だけではなく、時に誰かに動いてもらったり、協力してもらう必要があります。そのためには相手の発言の意図を正確に把握する力が必要になるでしょう。

このように読解力はただ国語のテストでよい点をとるためだけのスキルではなく、今後の人生において非常に重要なスキルになります。

子どもの読解力はAI時代に求められる力

AIが急速に進化し、さまざまな領域で活用されるようになった現代においても、読解力は重要なスキルとして求められます。

文部科学省が公表しているSociety5.0に向けた人材育成に係る大臣懇談会の議事要旨でも、「AI時代において読解力が重要である」ということをその会議の出席者が言及しています。

出席者の発言によれば、AIは人間が使う言葉を検索することは得意ですが、その意味まで理解することはできないといわれています。

AIが苦手とする分野は、相手の言葉の背景や複雑な文脈、感情的なニュアンスを理解したり、推測する力ですが、人はこれを自然とこなしています。このような高度なコミュニケーションなどは人間に残された仕事になるかもしれません。そのためAIが進化するほど読解力を身につけ、コミュニケーション能力を磨くことは非常に重要になるといえます。

また最近ではChatGPTという生成AIツールが流行しています。人間が作成したような文章をAIが作ることができますが、よく読むと不自然な文章になっていることもよくあります。

このようなAIを「使う側」になるためには、AIが正しい情報を出力しているかを見極める必要があり、正確に文章を読み取る読解力が必要になります。

参考:Society5.0に向けた人材育成に係る大臣懇談会 第6回議事要旨

子どもの読解力が向上しない原因とは

近年、子どもの読解力が低下しているといわれています。アメリカの子どもたちの生活の質向上に貢献する非営利団体チルドレン・アット・リスクの調査によると、SNSの使用が読解力に影響を与える可能性があることが示唆されています。

具体的には、SNS上での短い投稿やメッセージのやり取りが、長文を読んだり、理解する能力に悪影響を与える可能性があるとされています。

私たちが子どもの頃はまだSNSは浸透しておらず、短い文章に触れる機会は少なかったかもしれませんが、今の子どもは短い文章でのやりとりが当たり前の時代になっています。

特にSNSなどの投稿には以下のような特徴があります。

表面的な情報のやりとり

SNS上での短い文章は情報を簡潔に伝えるために編集されており、その結果、表面的な情報ばかりに触れている可能性があります。

文脈が読めない

文脈を理解することは、文章の全体的な意味を理解したり、相手の考えを理解するために重要ですが、短い文章に慣れると、その文章が提供する情報の文脈が十分に伝わらないことがあります。

簡単に消費することができる

短い文章を読むとき、読者は一つの情報から次の情報へと速やかに移ることが求められます。そのため、深い読解を必要とする長い文章を読むときに必要な注意力や集中力が養われにくい可能性があります。

SNSで投稿されるような短い文章に慣れてしまうと、長い文章を最後まで読む力や文章の意味全体を把握する力が身につかない可能性があるため、注意が必要です。

参考:The Imapact of Social Media on Children

子どもの読解力を向上させるためのポイント

子どもが読書が嫌いである場合、読書に対する動機付けが重要

読解力を高めるために有効な手段は読書ですが、読書嫌いな子どもも少なくありません。子どもが読書を習慣つけるために以下のポイントを意識してみましょう。

子どもが興味を持つ本を提供する

先ほど説明したように、子どもが自分で選んだ本や興味を持つトピックの本を提供することで、読書に対する興味関心を高めることができます。

毎日読書する時間を設ける

家族全員が静かに読書する時間を設けることで、子どもたちに読書習慣を身につけさせることができます。

親も読書に参加する

親自身も子どもたちと一緒に本を読んだり、話し合ったりすることで、子どもたちの読書モチベーションを高めることができます。

読書したことを褒める

子どもたちが本を読んだり、読解力が向上した場合は褒めて励ましましょう。これは子どもたちの自信やモチベーション向上につながります。

読書は読解力を高めるために有効な手段のため、まずは読書を習慣づけることから始めてみましょう。

子どもの読書に関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。

参考:子どもの思考力を伸ばすために読書が重要な理由|本が嫌いな子どもの対応のポイントも紹介

語彙力を伸ばす遊びやゲームを実践する

香港大学の研究によれば、語彙力が高い学生ほど読解力も高い傾向があることがわかっています。つまり、語彙力を伸ばすことは読解力を身につける上でも重要になります。

アルジェリアのビスクラ大学の研究では、教師が学生の語彙力向上のためにクロスワードパズルを導入したところ、100%の教師が語彙力を向上させるために有効であると考えていることがわかりました。

クロスワードパズルは、単語や熟語を探す過程で語彙力を伸ばすのに効果的であると考えられます。

また、クロスワードパズルはゲーム性があり、子どもたちは楽しみながら学ぶことができるため、長期的に学習を継続することができます。

参考:
Contribution of Vocabulary Knowledge to Reading Comprehension Among Chinese Students: A Meta-Analysis

The use of crossword puzzles as an educational tool

漫画も語彙力や読解力の向上に役立つ

「漫画ばかり読んでいないで、本でも読みなさい」と子どもに言ってしまったことはありませんか。実は子どもから離そうとしている漫画もまた語彙力や読解力の向上に寄与していることが、カリフォルニア州立大学教育学部のJoanne Ujiie教授の研究によってわかっています。

語彙力などが高まる理由として、漫画ではイラストと文字を組み合わせて物語を読むことで、子どもにとって新しい単語や表現を理解するのがより簡単になると考えられています。

例えば、歴史について教科書で読むよりも、漫画の方が楽しく読むことができ、結果として多くの知識を得たという経験は子どもの頃にあったかと思います。

漫画はわかりやすく、かつ楽しく読むことができ、これが子どもたちが長時間読む動機付けになります。結果として、多くの新しい語彙に触れる機会が増え、語彙力の向上につながると考えられています。

参考:Comic Book Reading, Reading Enjoyment, and Pleasure Reading Among

Middle Class and Chapter 1 Middle School Students 

まとめ

今回の記事で説明したように、子どもの読解力は普段からどのようなメディアに触れているかが重要になります。もし子どもが普段からSNSなどに触れている場合はSNSから距離を取り、読書を習慣づけたりすることで、読解力の向上が見込めるかもしれません。

ABOUT ME
この記事の監修者 - 井上 顕滋
31年の経営者経験を持ち、主に教育系メディア事業、人材育成企業、子どもの非認知能力強化プログラム「Five Keys」を運営する財団法人、飲食事業などを経営。 人材育成のキャリアは社員教育からスタートし、成果を上げる中で多くの経営者から問い合わせが増加し、2004年に人材育成企業「リザルトデザイン」を設立。 クライアントの業績に大きく貢献する中で、社員の成果には個人差があることを痛感し、その原因を解明するため、世界的権威である研究者および実践者から最新の心理学と脳科学および「人の心に変化を生み出す最先端技術」を徹底的に学び、実践を重ねた結果、成果とモチベーションの向上を可能にするリザルトプログラムを開発。 また上記「成果の個人差」の真因と、満足度の高い充実した人生を送れるかどうかの鍵が、幼少期(12歳まで)の「親の関わり方」と「与える教育」にあることを発見し、親への教育講座を開催。
子育てのとびら編集部
明日から実践できる子育てに役立つ情報を発信していまいります。